大阪の音楽シーンが気づかせてくれた、音楽を作る一番の理由(tofubeats)
中学生のころから音楽制作をスタートさせ、29歳にして10年以上のキャリアを誇り、8月19日に『TBEP』と『I Can’t Do It Alone』の12インチアナログ盤の発売を控えている音楽プロデューサー・DJのtofubeats。
この記事では、関西のオルタナティブな音楽シーンの重要人物・山本精一氏が『日本経済新聞』で受けたインタビュー記事( 「『あほな音楽』大阪に土壌 山本精一さん」2020年7月1日)を引きつつ、tofubeatsが関西の音楽家やそのシーンから受け取ったものを明かします。
謎のイベントが行われていた大阪の箱「SAOMAI」&「Nuooh」
『山本精一 絶叫無観客ライブ』のチケットを少し前に買った。自分がこのコロナ禍の中で唯一課金した(無)配信ライブである。そんなわけで今回は大阪の話です。BGMには山本氏の新作『CAFÉ BRAIN』を。
18歳になったとき、誕生日を過ぎてすぐ、初めてオールナイトのイベントに出た。その箱の名前は「SAOMAI(サオマイ)」という。ここは山本さんインタビュー記事にもある「ベアーズ」から東に歩いてまっすぐのところにかつてあったクラブだ。実際にベアーズと近かったのでベアーズ終わりの人が来たりと往来もあった。南海電鉄の高架下にあり、当時まだ実家に住んでいた自分は神戸のニュータウンから1時間半かけて通っていた。
自分にとってクラブ的社交の最初の場所であり、楽しい思い出がたくさんある。ここと、のちに当時の店長だった木下さんがサオマイのあとに大阪本町で構えた店「Nuooh(ヌオー)」で、主に自分の中でのクラブ観が形成されていった。いまいち、それまで神戸周辺の店や人にしっくりくることがなかった(もしくは人がいなくなったり店がなくなったりした)のだが、この店には比較的たくさん出演していくこととなる。
木下さんは基本的にどんな人でも受け入れる姿勢があり、ある意味、それによって変なものを見てみたい、という願望も強い人だと思う。「木下さんから見切りをつけられたら大阪では終わり」と一部では言われていたほどキャパシティが大きい人として有名で、時折自分たちの理解を超えたブッキングを行うこともあった。
実際ヌオーやサオマイでは謎のイベントが行われることは珍しいことでなく、山本さんのインタビュー記事にある「ウシの生首を投げ込んだミュージシャンもいた」というほどではないかもしれないが、そのようなイベントも多々あった。
印象的なものでいうと自分の曲名をもじった『朝が来るまで終わる事の無いラ・フランスを』というイベントで、木下さんはこのダジャレを見てしまったがために梨を2箱購入し、人々に振る舞っていた……。バーカンの横で梨を焼きながら何をやってんだろう、と思ったのを思い出す。まあそんなことも含めて、ライブやDJの内容についてもトライを許容する人だった。何が起こるかわからない楽しさもあったかもしれない。土地にかかわらずこういった箱と出会えたことは幸運である。
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