俳優・古舘寛治 想像力を欠いたトランプ大統領がもたらす暗澹たる未来

2020.1.15

トランプ=個人の行動によって恐ろしい未来が訪れる、と私の想像力は予想する

クイックジャーナル_古舘寛治_200115_01

一体アメリカの、いやここで気をつけないといけないのはこういう時にニュースは「アメリカが攻撃」と書くことだ。それにより必然的に国と国との戦いになる。しかしよく考えると今回は特によくわかるが、その愚かな攻撃を命令したのはトランプという個人なのである。アメリカの選挙制度の問題もあるであろう、その中で国民が選んだ大統領ではある。しかしその個人が一度大統領になるとこんなとんでもないことができてしまうのだ。

未来のことは誰にもわからない。しかし人は想像することができる。経験を積んだ人はより優れた想像力を使って予想する未来にしたがって今のよりよい行動を決める。その優れた想像力を持たずに生きてきた人間は、まるで銃をおもちゃと勘違いして弄ぶ子供と似ている。

しかし報道は、ニュースはこれを「アメリカが」とするのだ。そして国の行動はどれだけ愚かであっても巨大なインパクトを持ち、正当化されるべく事実を歪めていく。国はその国民にとって大きな象徴であり、正義として存在することを求められるからだ。しかしもう一度言う。今回の行為は愚かな個人の所業なのだ。

そしてその個人の行動によって恐ろしい未来が訪れることを私の想像力は予想する。果たして私に優れた想像力があるかは私自身にはわからない。私の経験が未熟で想像力が乏しく、その予想が外れることをむしろ強く願う。

大方の予想はイランが報復攻撃をアメリカに仕掛けることだ。予想というよりもイランはそれをはっきり宣言している。その内容はいろいろ言われているが、私の想像はそこまでは及ばない。しかし言えることは、今後アメリカ人は世界中どこでも狙われるだろうし、そのアメリカと軍事行動を共にする国も同様だろうということだ。そしてその行動を共にしそうな国が日本なのだ。

アメリカの核の傘に守られ(ていることになっている)、そのために沖縄をはじめとした広大な国土と権利をアメリカに与えてきた我が国。それでよかった時代はあったのだろうとも思う。しかしもうそのアメリカが到底正当化できない愚行を(いやアメリカではない、トランプがだが)し続けるとき、我が国日本は一体どうするべきなのか。トランプがまったく相手にもしない日本は一体どうするべきなのか。これまで通り忠犬でいて本当にいいのか。

イラクに大量破壊兵器があると言ってブッシュ政権が始めたイラク戦争。結局そんなものはなかった。その正義なき戦争によって数十万人以上とも言われる民間人が殺された。そしてその戦争は一向に終わる気配がない。そんな中で起きた今回のトランプの行為。人類の歴史からの学びが皆無なこの行為は、我々人類の近い未来をどのような世界にするのだろうか。新年早々、暗澹たる思いなのである。

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古舘寛治

(ふるたち・かんじ)大阪府生まれ。舞台出身で、近年では数々の映画やTVドラマに出演し、名バイプレーヤーとして印象を強く残す。2016年には舞台 『高き彼物』で演出を手掛けた。近年の主な出演作に映画『淵に立つ』(16)、『海よりもまだ深く』(16)、『勝手にふるえてろ』(17)、『教誨師』(18)、ド..

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