tofubeatsからの宛先を失ったメッセージ――楽しかった“クラブ”での日々の備忘録

2020.5.18


人々はこのままクラブのことなんて忘れてしまうのかもしれない

話は戻って事務所から品川駅に向かった後、新幹線で新大阪へ。珍しいほどガラガラの車中の字幕スーパーでは「COVID-19」と何度も流れ、緊急事態宣言などが出る前でしたが、少しずつ自分たちのいる世界は変わってきているのだな……と感じました。到着した大阪の人通りはまだそこまで普段と変わらずだったような気がします。市内を抜けて会場へ。「イベント延期」と張り出されていたユニバースのエントランスが悲しかったです。

無観客の会場とはいえすることは普段と同じ、機材を並べてチェックしてサラっと流してやった後はフロアで鳴りのチェック、そこから本番が始まって……といった流れでしたが、実際リハーサルも含めて10回以上は歌ったのではないかと思います。MVではライブ音声は使われていませんがふたりとも本意気でライブしておりました。

ライブをやっている最中は意外と無観客でも気にならないのですが、ハッと気づくとカメラがあるだけであったり、「POSTPONED」の看板が置いてあるのは不思議な感じでした。この撮影の後もDJの現場は数本ありましたが、ライブとしては会場で演奏したものでいうとこの日が最後になってしまったのも少し示し合わせたような感じがします。

MVで使用された「POSTPONED」看板のデザイン

この「クラブ」という楽曲は再三書いているようにコロナウイルスとは関係のない(最終の仕上げは時期がかぶっていますが、歌詞などはそれより前に完成していました)時期に制作した楽曲なのですが、このクラブに「行けたら行く」みたいなある種悠長な表現をしていられたころとまったく状況が変わってしまいました。完成したビデオを観てみると、なんのことはないと思っていた各地でのDJやライブの模様が次々と流れてきて、本当にこんな人混みの前で自分が演奏していたときなんかあったっけ?と不思議な気持ちになります。

自分が昔作った楽曲にはクラブを思い描いて作ったものがたくさんあり、それはけっこう誇張であったり過剰なロマンみたいなものを内包していたと思います。ポップスとして人とコミュニケーションをする上で、そういったドライブ感みたいなものが必要だと思っていたからです。

ただ一方でこれをもっと直観的に描きたいという気持ちもありました。それができないまま何年か経っていて、それがようやく技術的(主に作詞の点において)にできるようになったのが今でした。ですがこのメッセージは宛先を失ったまま離陸してしまい、どこにも着陸できないまま漂うはめになってしまいました。もしかしたら人々はこのまま家に居つづけてクラブのことなんて忘れてしまうかもしれません(笑)。この「クラブ」を楽しかった日々の備忘録として、または次に会う約束として楽しんでいただけましたら。

*森祐樹監督、資料などの提供ありがとうございました。ほかのスタッフの方々にも改めて感謝申し上げます。細かいクレジットはYouTubeのコメント欄にて。


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    デジタルミニアルバム『TBEP』

    2020年3月27日配信
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(とーふびーつ)1990年、神戸市生まれ。中学時代から音楽活動を開始し、高校3年生の時に国内最大のテクノイベント『WIRE』に史上最年少で出演する。その後、『水星 feat.オノマトペ大臣』がiTunes Storeシングル総合チャートで1位を獲得。メジャーデビュー以降は、森高千里、の子(神聖かまっ..

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