自分で自分のことがわからない
これは自分にとっても身に覚えのある感情だ。たとえば私の中には「自分は中身のない人間なのではないか」という感覚が10代のころから染みついていて、誰に対してもうっすらとした「見捨てられ不安」のようなものを抱いてしまう。なので、自分の話に相手が笑ってくれたり、SNSのつぶやきに肯定的な反応をもらえたりすると、安堵の気持ちが湧いてくる。逆に言えば、いいリアクションをもらえないとすぐにネガティブな感情が押し寄せてくる。不安や恐怖がすぐ隣にいるような感覚が正直ある。
『男性は何をどう悩むのか:男性専用相談窓口から見る心理と支援』(濱田智崇・『男』悩みのホットライン編/ミネルヴァ書房)という本にもこのような記述があった。
「優越志向」とは裏を返せば、自分が劣った存在、弱い存在であるとは認めたくないということです。「優越志向」の裏には、本人は意識できていないことも多いのですが、常に「不安感」が存在しています。自分が何か相手から脅かされるのではないかといった不安を払拭するため、相手よりも上に立つことを目指すと考えられます。意識してしまうと苦痛や不快感を生じることを、本人も十分に自覚しないまま、意識しないで済むように処理してしまう、精神分析の言葉で言うところの「自我防衛」が働いて、不安感を処理しているのです。

ここで言う「優越志向」とはジェンダー学の世界で男性性の特徴とされている傾向だが、その裏にはやはり不安や恐怖が存在しているのかもしれない。問題なのはそれに無自覚なこと。つまり男たちは、自分で自分のことがわからないのだ。
それが不安や恐怖の源泉となっており、他者からの承認や賞賛がないとすぐに足元がぐらついてしまう。そして女性にケアを求め、それが「さしすせそ」をはじめとする“男ウケ”のモテ技という形を取り、小学生の女子にまで押しつけられようとしている──。
もしそうだとするならば、『おしゃカワ!ビューティー大じてん』がいっそうグロテスクなものに見えてくる。ただし、そのグロテスクさを作り出しているのはこの本自体ではなく、そういう価値観を生んでいる男性の幼稚さや無自覚さにあるはずだ。そこから脱却する鍵は、「さしすせそ」で気持ちよくなってしまう我々自身の中にある。
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