俳優・古舘寛治 日本はなぜ文化芸術にここまで無頓着になってしまったのか?

2020.3.11

文化芸術というものがいかに重要なものか?という「問い」が成立してしまう日本社会

まず野田氏は「専門家と協議して考えられる対策を十全に施し、観客の理解を得ることを前提」と言ってるよね。

前提として今回の政府の要請も、後手後手の政府が場当たり的に打ち出した方針(しかも専門家に聞きもせず判断した?)ということがある。その信頼も信用もできない政府の要請を受けるなか、自主的に専門家と協議し対策を講じて、公演の主催者と観客という自立した個人が、それぞれまた自主的に判断し、「やる」「やらない」「行く」「行かない」を決めようという声がけである。

行きたくない観客はもちろん行かなくていいのだ。

根拠が弱い政府の方針に盲目的に従うほうがおかしくないか? だったら朝の通勤ラッシュのほうが濃厚接触度と密室度が高いのではないのか? そっちは経済的インパクトがより甚大で大企業から反対されるからノーコメント? 小さく弱いフリーランスや興行主は多少つぶれても文句が少ない? これらは俺のうがった考えか?

考えて欲しいのは興行などによって生計を立てている人間にとって、中止はまさに死活問題なんだということ。彼らの多くは利益よりも作品の文化芸術的価値を基準にして働いているので、収入は少ないし金銭的にいつもギリギリで運営している。ひとつのつまずきでつぶれかねない。

他のあらゆる職業の人と同じように、自分の生活のためにも働いているのであり、その場が場当たり的な政府の要請で失われる。生活ができなくなればその業界の死を意味する、という野田氏の思いは切実なのだ。

その切実な声明に対して演劇に無関心な人たちからは、演劇がなくなってもいいという意見さえ出てくる。その短絡的な言動が誰にでも安易にできる場があるのが現代のネット社会で、それ自体は否定しても仕方がないのかもしれないが、人間社会にとって文化芸術というものがいかに重要なものか?ということが「問い」になってしまうほど、日本ではその教育において文化芸術に触れる機会を作ってこなかった。その重要性を教えてこなかった。その実利主義的教育の結果、俺らは文化芸術について無頓着になってしまったのではないか、とか思う。

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野田秀樹氏が芸術監督を務める東京芸術劇場

時の政府が非常時に真っ当な仕事ができないときに、個々の市民の行動はどうあるべきか?という問いも立てられるよね。それぞれの自発的な判断が求められるのが民主主義ではないのか? 無能なリーダーの元でも市民がその方針に盲目的に従わなければいけないとしたら、それはまったく民主主義の趣旨を失ってるよね。戦前と同じ。独裁主義、全体主義のそれでしょ?

「また言ってる」と言われるかもしれないけど、これ本当に全世界的な傾きだからね。全体主義化、ナショナリズムの強化の傾向は。まったくもって現実的・現代的な流れなのです。それを俺は恐ろしいと思う。

「そんな流れならむしろ止められないでしょ」という指摘も受けそうだよね。

そう。止められないのかもしれない。しかし人間は考えることができるわけでしょ。自分で判断し行動ができる知的な生き物なんでしょ。だったら軌道修正もできるんじゃないの?

そういう可能性を願ってこうやって発言することで誰かに響き呼応し、全体が緩やかに変わってはいかないだろうか。なんて願う。そんなのはユートピア的夢なのかな。俺はドリーマーか。でも俺だけじゃないよね? ジョン・レノン気取りか! 俺!!!

さて、今回の文体、気に入っていただけましたでしょうか?

ではまた次回! 最終回です!



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