#自撮りおじさんの火つけ役・マシンガンズは「今、心底モテたい。本当にモテたい」

2023.6.15
マシンガンズ

文=安里和哲 撮影=山口こすも 編集=梅山織愛


2023年5月20日、漫才の歴史に新たな1ページを刻む賞レースが放送された。芸歴16年以上の漫才師による賞レース『THE SECOND~漫才トーナメント」(フジテレビ)だ。これまでの賞レースとは一線を画し、ベテラン芸人がそれぞれのスタイルを披露し、いぶし銀の漫才で視聴者を魅了した。

そんな大会で最も注目を浴びたのが、芸歴25年のマシンガンズであることは間違いない。ゴミ清掃員として注目を浴びる滝沢秀一と、俳優業や発明に活路を見出してきた西堀亮。そんなふたりが、キレ芸とアドリブ満載の漫才で、準優勝まで上り詰めたのだ。

大会終了後も、メディアに引っ張りだこ。滝沢に至ってはSNSの自撮りがバズるというまさかの事態に。今回、絶好のタイミングで取材を行えることになったが、滝沢の到着が遅れてしまった。そこでまずは相方の西堀に滝沢の“顔ファン”ブームについて話を聞いた。

マシンガンズ
滝沢秀一(たきざわ・しゅういち/1976年9月14日生まれ、東京都出身)と西堀亮(にしほり・りょう/1974年10月4日生まれ、北海道出身)の漫才コンビ。『THE MANZAI』で2012年、2014年に認定漫才師に。2023年、『THE SECOND~漫才トーナメント~』で準優勝。YouTubeチャンネル『マシンガンズチャンネル』も始動した。滝沢はゴミ清掃員として活躍し、『このゴミは収集できません』(白夜書房)や『ゴミ清掃員の日常』(講談社)など著書も多数出版する。一方、西堀は発明家の顔を持ち、発明監修した商品「静音 くつ丸洗い洗濯ネット」が現在予約受付中。

西堀「あいつ、かっこいいんだよな?」

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西堀亮

西堀亮(以下、西堀) 相棒が遅れちゃってすみません。今日取材の時間早めてもらったでしょ? でも、アイツにだけ時間変更が伝わってなかったとかで。本当かどうかわかんないけど(笑)。

──今朝もゴミツイートをしていたので、寝坊ではないですよね。

西堀 最近、滝沢は自撮りばっかりがんばってるじゃないですか。そっちに気取られ過ぎなんですよ(笑)。

──『THE SECOND』以降、滝沢さんの“顔ファン”が急増しています。ファンの間では昔から「イケメン」という扱いだったんですか。

西堀 いや、まったく。そんなのゼロですよ。滝沢の自撮りがバズってから、芸人仲間たちとも確認し合ったんです、「あいつ、かっこいいんだよな?」って。でも誰もピンときてない。まぁ「かっこいい」ってことで評判になるなら、それでいいんじゃないかな。

──西堀さんは顔ファンどうですか?

西堀 「西堀さんだってかわいいよ」って取ってつけたように言ってくれる人はいますね。気遣ってくれてるのか知らないけど(笑)。

──こう言っても困らせるだけかもしれませんが、『THE SECOND』での漫才姿に中年男性の色気を感じました。

西堀 ありがとうございます。そう言ってくれる人は確かにいるんですよ。でも、できることなら結婚前にこの反応が欲しかったな。今さらチヤホヤしてもらっても、別に女性にいけるわけでもないんで。

──このブレイクに奥さんは何か言ってますか。

西堀 奥さんは「エゴサーチが忙しい」って言ってます。俺より俺のこと検索してますよ。

──奥さんがそんなに喜んでくれるのはうれしいですね。

西堀 そうですね。スマホ見ながら、「あー忙しい! 寝る暇がない」って言ってますよ(笑)。妻は僕と結婚してることをあんまりまわりに言ってないんで、エゴサーチしながらこっそり盛り上がってるみたいですね。夫婦仲はそんなに盛り上がってないけど。

──そうなんですね。

西堀 『THE SECOND』以降、忙しくなっちゃって、しゃべる時間も減りました。夜なんか帰ってきても僕が抜け殻みたいになってるんで。毎晩、時計見ながら酒飲んでますよ。翌朝も早いから深酒できなくってね。

──仕事の状況も劇的に変わりましたよね。

西堀 そうですね。今日も取材がこれ入れて3つ。それにテレビとラジオも。一日中仕事しちゃってますよ。でも、俺らよりマネージャーが疲れてるんじゃないですか? 俺たちは現場行ってやっちゃえば終わりだけど、彼は通常業務もあるから(笑)。

──マネージャーも予期せぬブレイクだった。

西堀 誰も期待してなかったですからね。予選でランジャタイと当たった時点で「ここまでよくがんばったよ」って諦めムードでしたし。でも、あれ本当にあるんだなぁ「俺はずっと応援してた」って言うやつ。終わってみるとみんな「期待してたよ」って言うんですよ(笑)。

漫才と発明があるから嫌なことにも耐えられる

──今回のマシンガンズのブレイクは時流に乗ってると思いました。『M-1グランプリ』では、昨年“悪口”のウエストランドが、一昨年は“おじさん”の錦鯉が優勝しました。その意味で「悪口×おじさん」のマシンガンズが支持されるのは納得だなと。

西堀 確かにそういう気もしてきますね。おじさんと悪口のミックスでマシンガンズ。でも優勝したのはギャロップですからね(笑)。僕らは負けてますから。今、僕らが取材やテレビの仕事をもらえてるのは、ギャロップの本拠地が大阪だからですよ。

──優勝したギャロップは「これを機に劇場の出番が増えたら」と言っていました。劇場を主戦場にする吉本所属のギャロップに対して、マシンガンズはメディア出演が増えて、結果的に決勝のふた組でおいしいところを分け合えたのもよかったですね。

西堀 ほんとそうですね。吉本以外の芸人は「劇場で食ってく」という選択肢がないので。漫才愛でもギャロップには完全に負けてますよ。

──ところで西堀さんは“発明”でも注目されていますよね。

西堀 ありがとうございます。私が発明監修した「静音 くつ丸洗い洗濯ネット」が今度発売になるんですよ。

──これはどういった商品なんですか。

西堀 名前のとおりなんですけど(笑)。洗濯機で靴を洗うと、音がうるさいでしょう。その音を抑えられる。靴だけじゃなくて、金具がついたハーネスとか小さいバッグにも使えます。

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西堀が発明監修した「静音 くつ丸洗い洗濯ネット」

──西堀さんは「発明は不満をきっかけにして生まれる」と言っていますね。マシンガンズの漫才も、不満やグチを言っているので、そこが共通してるなと思いました。

西堀 そうかもしれませんね。不平不満が発明やネタの養分になってるのは間違いない。嫌だったことって、昔のことでもずっと忘れられずに記憶に残ってるんですよ。生活してて不便なことがあると「これは発明の種なんじゃないか?」と思うし、ツイッターに悪口書かれても「これネタになるかもな」と思う。もちろん不便なのもイヤだし、悪口だって言われたくないですけど、漫才と発明があるから「まぁいっか」と思えている節はありますね。

※30分ほど遅れて滝沢が到着

滝沢秀一(以下、滝沢) おはようございます! すみません、遅くなりました。

西堀 おい、みんな言ってたぞ。

滝沢 何を?

西堀 「自撮りゴミ野郎遅えな」って。

滝沢 めっちゃ怖いじゃん! もう帰りたい!

──言ってないですよ(笑)!

ビジュアル人気もしっかりお金に

──滝沢さんの自撮り、バズってますね。

滝沢 いやー、ありがたいっすね。俺は今、心底モテたい。本当にモテたい。これはマジですからね。

西堀 滝沢は照れがなくなったよな。

滝沢 確かに若いころからSNSがあっても、自撮りなんてやってなかっただろうね。今は「芸人風情が、なんで調子乗ってんだよ」とか言う人もいないんで、やり放題ですよ。

西堀 最初は「いい年して何やってんだよ」と思ってたけど、気づいたら俺までやり出したからね(笑)。モテた先に何があるわけでもないのに、モテたい気持ちを保ってるのも不思議だよな。

──滝沢さんが急にチヤホヤされて奥さんは心配してませんか?

滝沢 全然っ! むしろ「もっとやれ!」ってけしかけられてますよ。最近は子供のPTA活動とかで「旦那さん見ましたよ」って言われることも増えてきたらしいんで、よかったんじゃないですかね。今までは自慢できるような夫じゃなかったから。あとは、この人気をきっちりお金に替えたいな。グッズとかじゃんじゃん作りたい。

西堀 お前はネタは考えてこないのに、そういうことばっかり提案してくる(笑)。

滝沢 確かに! 最近、俺この話ばっかりしてんなぁ!

西堀 俺の顔見たらグッズの話しかしてこない(笑)。「これからの季節はTシャツが売れるんじゃないか?」とかずっと言ってる。でも、そういうところが頼りになるんですよ(笑)。

──滝沢さんはマシンガンズのマネタイズ担当なんですね。

滝沢 そうそうそう。グッズ作るにしてもデザインにこだわりとかまったくないの。優秀なデザイナーさんはいっぱいいるから、そこはお任せで、徹底的にお客さんのニーズに応えた商品を出してお金を稼ぎたい。でも、芸人のグッズって売れ残ってもおもしろいじゃないですか。せっかくのチャンスだし、いろいろ手を出したいんですよ。グッズもそうだし、YouTubeもがんばりたい。写真集も出したいよな。

西堀 お前はもう相棒っていうよりプロデューサーみたいな感じだよ。

滝沢 そうだね、うんうん。そういうのが好きなんでしょうね。ネタへの情熱もほとんどないし。

西堀 こいつ、ヘタしたらそのうち「出資しないか?」って回り出すよ。

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遅れて到着した滝沢秀一(左)

さっそく、グッズ化が実現!

──芸人さんの中にはグッズへの抵抗感がある人も少なくないですが、おふたりは……?

滝沢 ないです。全然っ! むしろノウハウとか教えてほしいです。

──今日はインタビューのあとに撮影させていただくんですが、もし、おふたりがよければその写真を販売したいなと思ってまして。

滝沢 あぁ、いいじゃないですか! 商魂たくましいっすね(笑)。昔、原宿で売ってたブロマイドみたいな。いいですねぇ。

──反響があれば、今後定期的にマシンガンズさんのグッズを出していくのはいかがでしょうか。今後はいろんな衣装を着てもらって撮影するのもいいかなと……。

滝沢 いいと思いますねー。

西堀 軍服とか着たいなぁ……。

滝沢 お前の“おもしろ”はいいんだよ! ある程度お客さんのニーズは考えたほうがいいよ。俺は金にしたいって言ってんだから(笑)。

西堀 お前、さっき自分で言ったろ、「なんでもやってみたい」って。どこにニーズがあるかわかんないぞ!

滝沢 軍服おっさんマニアなんていないだろ!

西堀 こういう固定観念の押しつけがまだ見ぬ才能を潰すんだよ。

滝沢 お前が軍服好きとかだったらまだわかるけどさ、好きでもないのになんで軍服着るんだよ!

西堀 うーん、着てみたかったから……。これじゃ理由弱いなぁ(笑)。

滝沢 こいつはほっといて、僕とクイック・ジャパンさんで金を生むアイデア考えましょう!

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撮影オフショットも限定公開

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※販売は終了しました

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安里和哲

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安里和哲

(あさと・かずあき)ライター。1990年、沖縄県生まれ。ブログ『ひとつ恋でもしてみようか』(https://massarassa.hatenablog.com/)に日記や感想文を書く。趣味範囲は、映画、音楽、寄席演芸、お笑い、ラジオなど。執筆経験『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』『Maybe!』..

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