佐久間宣行、パンサー向井、ぺこぱ──2022年印象に残ったラジオを奥森皐月と振り返る

2023.3.26

パーソナリティとゲストの化学反応によるおもしろさ

──向井さんといえば、2022年6月の月間賞に『むかいの喋り方』(CBCラジオ)アルコ&ピース平子(祐希)さんゲスト回が入っていました。

奥森皐月

奥森 あの放送回もよかったですね! 向井さんも平子さんも場の雰囲気やメンバーによって印象が変わりますけど、ふたりきりだったからこそよかったような気がします。バランスとか、温度感とか、ふたりの色とか、相性がよかった。

平子さんってどうしても発言がコント的になるじゃないですか、ボケてしまうというか。もちろんそれが魅力でもあるんですけど、本心で語っているときも、少しキャラが乗るというか。でもあの放送回は、本当に“平子祐希”がしゃべっている感じがありました。

──確かにどこか、素の姿を感じたというか。

奥森 勝手なこちらの妄想でしかないんですけど、本心でしゃべっている印象で。向井さんと平子さんって、全然違うじゃないですか。それこそ向井さんはツッコミの人で、平子さんはボケの人だし。お笑いのテイストも違うし、年齢も違うし。

でもなぜか最終的に似たものを感じるというか……なんですかね? 品のよさ? おふたりともかたちは違えど朝の番組を担当されることになりましたけど、しっくりきますもんね。

──向井さんは『#ふらっと』を、平子さんは『プチブランチ』(TBS)を。

奥森 平子さんがどこまで本気で優しくしているのか、みたいな話をラジオでされていましたけど、平子さんって、親切で恥ずかしがりな人だと思うんです。

「こういうふうになったらダメだな」とか「これを言ったら恥ずかしいな」とか考える繊細さが感じられるというか、その繊細さも『むかいの喋り方』では言語化されていたので、ファンにとって特にうれしい回だったと思います。

──ほかの番組にゲスト出演されたときに見せる顔と、ご自身がパーソナリティをされている番組で見せる顔というのは、話す相手や引き出されるエピソードなどが異なるので、その人のまた違った魅力に触れられますよね。

奥森 そうなんですよ。それもまたラジオの魅力のひとつですよね。印象が安定的な番組やパーソナリティも素敵ですけど、安定しないのもまた魅力というか。そういうときに出る人間味も素敵じゃないですか。何が起こるかわからない感じとかも。

奥森皐月

──そういった化学反応が起きた放送回といえば、『ダイアンのTOKYO STYLE』(TBSラジオ)ランジャタイゲスト(ユースケさんはお休み)回もありました。

奥森 感動的なエピソードトークとか、ライフイベントとか、賞レース明けの放送とかがある中で、この津田(篤宏)さんとランジャタイさんの放送回が入ったことが、私はすごくうれしいんですよね……。

『お笑いの日2022』(TBS)でのコラボは、テレビ界、お笑い界……いや、2022年のニュースを総合しても入るくらいのビッグニュースになったじゃないですか!

──通称「ゴイゴイスーミュージカル」は、年末の『お笑いアカデミー賞2022』(TBS)でも再度フル尺で放送されていましたね。

奥森 『ダイアンのTOKYO STYLE』のランジャタイさんゲスト回も、いわばあの伝説のコラボの再放送みたいなところがあるというか。何度でも、味がなくなるまでつづける感じが。

番組のアフタートークで、津田さんが国崎(和也)さんに「最近、地下芸人って出てきてるよね」みたいな話をしてたんですけど、津田さんはチャンス大城さんの名前が出てこなくて、それを教えてほしいのに、国崎さんは全然違う地下芸人の方々のお名前を挙げつづけて……(笑)。

津田さんは優しいから、国崎さんが挙げる芸人さんの名前を確認して、一人ひとりどんな芸人さんなのかを確認するんですよね。その流れがすごくおもしろかったですね。

──津田さんって、困惑しているときがおもしろいですよね。

奥森皐月

奥森 そうそうそう! 周囲がよく津田さんに声を張らせたり、怒らせたりすることが多いと思うんですけど、困惑した結果で怒るのと、ただ怒らせるようなことをするのって違うじゃないですか。

やっぱり津田さんが本質的におもしろいのは、困惑しているときだと思うんです。『水曜日のダウンタウン』(TBS)の企画で「犯人を見つけるまでミステリードラマの世界から抜け出せないドッキリ」での“名探偵津田”はすごくおもしろかった。

そういう意味で、ランジャタイさんは津田さんを困惑させることができるし、津田さんもランジャタイさんも無理していない感じがあるから、収まりがいいというか、奇跡的に相性がいいんですよね。だからこそ「ゴイゴイスーミュージカル」はおもしろかったし、ラジオで共演されても組み合わせとして最高だったと思います。

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鈴木 梢

(すずき・こずえ)1989年、千葉県市川市生まれ。出版社や編集プロダクション勤務を経て2019年からフリーランスに。主に日本のエンタメ/カルチャー分野の企画・執筆・編集を行う。もちもちしたものが好き。

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