Aマッソは「友達もしくは年上の姉ちゃん」。加納と村上とっての「ラジオ」はどんな場所なのか?

2023.1.26
Aマッソが語るラジオの本音「なに考えてるか知りたいと思う芸人には、それを出せる場がある」

文=西澤千央 撮影=澤田詩園


『MBSヤングタウン』、通称“ヤンタン”。関西深夜ラジオの金字塔的な当番組の木曜レギュラーを務めるのがAマッソである。

2日前の火曜日に音声配信アプリ『Radiotalk』でライブ配信されたものを木曜にオンエアするというトリッキーなスタイルを取るAマッソのヤンタンは、ふたりにとって今どんな「場所」なのだろうか。配信直前の現場で、ご両人の本音に迫った。

※この記事は『芸人雑誌 volume7』(2022年9月9日から順次発売)掲載のインタビューを転載したものです。

リスナーは、すっごい近い

Aマッソが語るラジオの本音「なに考えてるか知りたいと思う芸人には、それを出せる場がある」
Aマッソ/『芸人雑誌 volume7』より

Aマッソ
加納 1989年2月21日大阪生まれ。ワタナベエンターテインメント所属
村上 1988年6月16日大阪生まれ。ワタナベエンターテインメント所属

──まずはおふたりとラジオの関係をお伺いしたいです。今までどんなラジオを聴いていたとか。

加納 ラジオ……ほとんど聴いて来なかったんですよね。

村上 受験生がみんな聴くみたいなイメージやけど……受験生のときも勉強してなかったんで聴いてないです。

──(笑)。深夜ラジオはそういうイメージですよね。では自分たちがラジオをやるっていうときは、まっさらな気持ちで臨めましたか?

加納 そうですね、説得力ある芸人がみんなラジオやってるっていうのは、芸人になってからイメージとして感じていて。『ヤンタン』決まるまでの2年前ぐらいまではうっすらラジオをやりたいなみたいなこと言ってましたね。特にそこでなにかを発露したいからっていう感じではなかったけど。

──「説得力ある芸人」。

加納 脳みそを知りたくなる人たちですよね。なに考えてるか知りたいと思う芸人には、それを出せる場があるんやなっていう。

──実際にラジオをやられてみて、芸人さんがラジオを大切にされてる理由みたいなものは実感しましたか。

加納 そうですね、本番だけじゃなくて日常的にしゃべることを探さなあかんし。ほかの現場でもラジオでしゃべってるからするっと出せたりすることもあるので、ルーティーンとしてめちゃくちゃ助かってますね。

村上 自分もラジオ頑張ってるって思います。きっとなかったらやらへんのやろなってことを、今ここでやってる感がある。『ヤンタン』の前(『Aマッソの両A面』)は月1回やったんですけど、ほぼほぼ後半寝てたんですよ。今は週1回になってるからそれなりにうちもしゃべらなあかんし、寝られへん時間やから頑張ってると思います。

Aマッソが語るラジオの本音「なに考えてるか知りたいと思う芸人には、それを出せる場がある」
Aマッソ加納/『芸人雑誌 volume7』より

──リスナーさんとおふたりの関係性って、どういう感じだと認識してますか?

加納 Radiotalkでコメントが流れてて、それってあんま普通のラジオではないじゃないですか。ずっとコメントが流れてるのを拾いながらなんで、正直ちょっと反応が速すぎる感じもあるんですよ。従来のラジオよりも、こっちが(リスナーとの)距離を決めれないというか、それはいい面もあるし、不自由な面もありますね。

──不自由な面ですか?

加納 たとえばなにかあったときに、その件をしゃべるかしゃべらんかって本来やったらこっちが決められるじゃないですか。どのテンションでしゃべるかとかも。やけど、うちらのこの形はずっと「あの件しゃべらんのか」っていうコメントが流れてるから、それを無視し続けてるとバレるんですよね。リスナーがこっちにしゃべらすことを決めてる感じはちょっと不自由な面と言えなくもない。「こんだけみんな言ってんのに感」が出ちゃうわけなんで。

──なるほど。リスナー側からどんどん距離を詰めてくる。

加納 あんまりそこに取り合ってもあかんなと思いつつ。でも、形として新しくて、うちらのラジオの番組の特色のひとつでもあるから……ムズいなと思います(笑)。

──窮屈に思うこともありますか?

加納 うーん、窮屈というかみんなで楽しんでるって感じ。こっちはRadiotalk見て、村上はハッシュタグ見てなので、忙しいですね。リアクションメールもあるし。ライブみたいなイベントに近いかもしれないです。放送は22時やけど、収録はその2日前の20時にリアルタイムでやってるし。時間も比較的早いから、いわゆる深夜ラジオみたいに潜っていってる感じはしないですね。ただ、ラジオをやる前に比べてリスナーというか、ファンの裾野はちゃんと広がってると思います。

──リスナーも演者さんという感じ?

加納 そう! 向こうも発信者として私たちと対等にしゃべるから距離感はSNSに近いですよね。やっぱお客さんの世代が若いんやろうなと思います。上の人にゆっくり腰据えて聴いてもらってるラジオではないかも。

──いつか、腰を据えて聴いてもらえる方にシフトしたいと思いますか?

加納 いや、うちらの形としてはこれでいいかな。柄にもないことやってる感じでもないし、今のうちらのTVの出方としても、合ってるからいいんかなと。

言っていいこと、喋らんこと

──以前弊誌『2021年の顔』特集でインタビューさせていただいたときに、加納さんが村上さんのことを「Aマッソは村上という謎の答えを探し続ける旅」だとおっしゃっていて。

加納 それはぎゅっとしてそういうことにしたんでしょ?(笑)

──ラジオを聴くと、村上さんという謎の答えを探し続ける旅に、ラジオという手法がすごくあってるのかもしれないと思って。ラジオと村上さんの相性の良さというか。

村上 相性いいんかな?(笑) ただしゃべらなあかんから、自分のこと話してるというだけで。

──インディアンスのきむさんと喧嘩した話とか、事件性の高さがそう思わせるのかもしれません。

村上 あれはすみませんでした。でも、言える場所があるから、救われてる可能性もあります(笑)。

──ちょっと変なことや嫌なことが起こっても「あ、これラジオで言おう」に変換できる。

村上 そうはいっても言われへんことばっかり起こってるんで、まろやかにして話さんとな……みたいなこともめっちゃありますけど。

──『2021年の顔』インタビューで、一方では村上さんは加納さんを「オフになると小石にも怒鳴り散らかすから、ずっとオンのままでいてほしい」とおっしゃっていて。ラジオは加納さんを「オン」にさせ続けていると思いますか?

村上 オンのままですね。けど、番組中加納さんの思ってる通りの感じに行ってないときもあるんやろうなって思います。うちがまた2択間違ったなみたいなことはめちゃめちゃある。こっちで行きたかったんやろなみたいなときに、私がそれを無視しちゃってるとかは全然あって……。

Aマッソが語るラジオの本音「なに考えてるか知りたいと思う芸人には、それを出せる場がある」
Aマッソ村上/『芸人雑誌 volume7』より

──ラジオをやることによって、おふたりの関係性に変化が生まれることは?

加納 楽屋で「聞いて」って言おうとした話を「あ、ちゃうわ。ラジオにとっとこ」っていうのは増えたかもしれません。

村上 「なに?」って聞いても「ラジオで言うわ」っていうことが多々ある。

加納 2回目なのに初見みたいにするのもちょっと気持ち悪いかなって。

──Aマッソをちょっととっつきにくい、変わったことをやるコンビだと思っていた人が、『ヤンタン』を聴いたらイメージが変わるかもしれないですよね。Aマッソがより近くに寄ってきてくれた感じがして。それは自覚的にやられていることですか?

加納 やろうと思えば、ラジオの中でリスナーを絡める比率は下げることもできるけど、でも友達というか、ちょっと年上の姉ちゃんぐらいの感じでやろうというのはまああります。

──それこそみんなで楽しんでる感じ?

加納 でも「それでもしゃべらんねや」っていうことは自分の中で明確になりました。それは自分の輪郭を理解する上でもよかったかなとは思いますね。なんでもかんでもしゃべってるようで、しゃべらんこともちゃんとある。

──ラジオで自分の輪郭がわかることがある。

加納 良い回はですね(笑)。毎週なんでね、あかん回もあるけど。

──良い回はどういう回ですか?

加納 単純に、髙本(プロデューサー)さんが笑ってる回です。西畑(ディレクター)は元々ラジオリスナーだから、めちゃくちゃラジオに愛があるんで、そこも信用できますね。私が迷ったときに「そうですね」「それは違いますね」ってはっきり言ってくれる。

──最後に、今現在のAマッソは、どれくらい自分たちが思い描いてるAマッソだと思いますか?

加納 別に理想の形みたいなものはなくて。その時々に次やりたいことをやれてはいるって感じですね、ラジオも含めてそれがつながってきている。ツアーも去年(2021年)やりたいと思ってて、今年(2022年)一応3都市やるので。

村上 私は……加納さんが笑ってたらいいと思います。気ぃようやってくれたらね。笑顔が消えたら終わり。

Aマッソが語るラジオの本音「なに考えてるか知りたいと思う芸人には、それを出せる場がある」
Aマッソ/『芸人雑誌 volume7』より

『AマッソのMBSヤングタウン』

Aマッソが語るラジオの本音「なに考えてるか知りたいと思う芸人には、それを出せる場がある」

■Radiotalk 毎週火曜20:00時ごろ~生配信
■MBSラジオ 毎週木曜22:00~23:30

『AマッソのMBSヤングタウン』初LIVEイベント「是是是是是(これこれこれこれこれ)」公演概要

『AマッソのMBSヤングタウン』初LIVEイベント「是是是是是(これこれこれこれこれ)」

公演概要2020年10月に前身番組『Aマッソの両A面』が放送開始し、2021年10月からは明石家さんま・笑福亭鶴瓶らに並んで『AマッソのMBSヤングタウン』としてグレードアップしてきたAマッソ唯一のラジオ番組が、2023年1月に番組初の有観客大型イベントを実施する。

昼公演は番組リスナーの総称「ソイヤ」「姫」からソイヤプリンセスと称して、観客を巻き込んだ企画満載で行う。番組のメインコーナーである「加納軍団VS村上軍団」をグレードアップし、リスナーとの対決企画を実施予定。夜公演はアバナイトと称して、ゲストにさらば青春の光・真空ジェシカを招き、村上のアバンギャルドな恋の行方に完全決着をつける。

まさに「これこれこれこれこれ!」と唸るような番組イベントに注目だ。

【出演】Aマッソ
【サブタイトル】昼公演:ソイヤプリンセス/夜公演:アバナイト
【ゲスト】昼公演:ゲスト無し/夜公演:さらば青春の光、真空ジェシカ
【日時】2023年1月28日〖土) 昼14時開演/夜19時開演
【会場】I’M A SHOW (アイマショウ)
東京都千代田区有楽町2丁目5番1号 有楽町マリオン(有楽町センタービル)別館 7F
【チケット情報】
・客席観覧:6,500円(全席指定・税込) ※未就学児入場不可  ※夜公演は完売
・配信:2,000円(税込)発売中
・チケット販売サイトはこちら
【主催】MBSラジオ、サンライズプロモーション

※その他詳細は、番組公式HPをご確認ください。

『クイック・ジャパン』vol.164

Aマッソが誌面を飛び出す⁉『クイック・ジャパン』最新号、笑いの実験を繰り返すコンビの60ページ大特集!!!
Aマッソ/『クイック・ジャパン』vol.164

Aマッソ特集の『クイック・ジャパン』vol.164(2022年12月27日から順次発売)表紙・巻頭写真は、3Dメガネを使用すれば立体に見える特別仕様。Aマッソの2人のソロロングインタビューはもちろんのこと、TV、ラジオ、YouTubeの現場取材、スタッフによるAマッソの分析など充実の誌面となった。

また、60ページ特集を記念したAマッソスペシャルトーク音声付き限定版の発売も決定! 小中学生時代の哀しいお笑い体験やルームシェア時代の衝撃エピソード、さらには今後のコンビを揺るがす大問題⁉についてまで、ここでしか聴けないトークが45分収録されている。

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