須田亜香里、初めて“ブス”と言われて泣いた日。「私みたいになってね、とは言えない」



後輩に「容姿イジリ」は勧めない

須田亜香里「ブスといわれて」インタビュー前編
須田亜香里

──容姿をいじられて、それを笑顔に変えてきた須田さんに聞くからこそ、説得力のある話がたくさん聞けました。ただ、須田さんの後輩アイドルや、ほかのアイドルに「ブスキャラ」や「体を張った仕事」を勧めますか?というのが気になっていて。

あ、それは勧めないです!

──なぜですか?

これって「アイドルグループあるある」だと思うんですけど、「ポスト誰々」とか「誰々さんみたいになってね」と後輩メンバーが言われることがあるじゃないですか。でも、その先輩が評価されていたからといって、同じことを別の誰かがしてもダメってことは、私は身をもって知ってるんです。

握手会の対応とかも、グループで一番かわいいと言われている子の対応を、私やほかの子がそのままコピーしてもファンの方には響かない。それはもう実証済みなんですよ。その子に、その子なりのドラマが乗っかって、その子がすることだからいいのであって。

──「もともとは端っこのポジションで目立たなくて……」とか「あのメンバーと切磋琢磨し合っていて……」とか、そういうドラマやストーリーが組み合わさってよさが出る。

その子なりのドラマがあってこそ努力や工夫が光るんです。

──もし、その子なりのドラマがあった上で、容姿イジリをされることでチャンスが開けそうな子がいたら、須田さんはなんて言葉をかけると思いますか。

私が言葉をかけるとしたら「私みたいになってね」ではないです。「こういう前向きな受け止め方もあるし、そこから逃げるのも方法だよ」かな。痛みや悩みって、食らい方が人によって違うじゃないですか。だから、私のやり方をその子に全部教えたとして、その子が自分に落とし込めるかというとそうじゃない。強要せず、こんな選択肢があるよ、ということは伝えると思います。

私の場合は、私自身よりも、まわりにポジティブな人がいたっていうのがすごく大きくて。「武器になる」と言ってくれる事務所に出会えたことや、環境が味方になってくれたことでなんとかなったけど、環境って人によって全然違う。私も、自分が喜んで「ブス」と言われにいくようになるとは思ってなかったですから。

──あと、そもそもの話、今はバラエティ番組の演出として「ブス」という言葉を受け入れているわけですが、最初は大きく傷ついたわけですよね。のちに事務所のマネージャーという強い味方ができて、自分の武器にできると気づいていったわけですが、最初はその耐性もなかった。

はい。

──そうなると、ほかのアイドル、いやすべての人に対して、バラエティの演出において「ブス」などの“容姿いじり”はされる側がその演出を告知されていて、本人に覚悟がある場合を除いて、本当におそろしい暴力にもなってしまう危険性があると思います。

須田 そういう部分は、あると思います。

──ただやみくもに容姿イジリをされていたときと、「ここでなら輝ける」という場所を選んで容姿イジリをされたときでは、全然違う意味になったということですね。

その子が傷つくかどうかは、置かれている環境に左右されるので、むやみに勧めたりはできません。でも、後輩がどうしてもバラエティ番組でがんばりたいというのであれば、その選択はありだと思う。「楽しいことが大好き」ってことだと思うし、人との関わりや、テレビが好きっていう気持ちは大事です。

私は「ブスと言われるアイドル」というのが武器だった。人にハッピーになってもらうために「自分の武器は何か」を知ることが、結局は自分を守る強みになってくれるんじゃないかな。

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森 ユースケ

(もり・ゆーすけ)1987年生まれ。東京都出身。毎日ウルトラ怪獣のTシャツを着ているライター/編集。インドネシアの新聞社勤務、国会議員秘書、週刊誌記者を経て現職。近年は企業のオウンドメディア編集も担当。オリックス・バファローズファン。

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