JO1“初主演”ドラマを監督する重圧と、「ちゃんと本物の役者にさせる」という決意

2022.4.2
『途中下車』で主演を務めた河野純喜、ヒロイン役の小西桜子と一緒に撮影現場にて

(c)あだち充・小学館/吉本興業
文=新 亜希子 編集=森田真規


2022年3月4日にデビュー2周年を迎え、2NDアルバム『KIZUNA』のリリースを5月25日に控える11人組のグローバルボーイズグループ「JO1(ジェイオーワン)」。あだち充の同名短編集を原作に、彼らがそれぞれ1話ずつドラマ初主演を務めた『ショート・プログラム』がAmazon Prime Videoにて好評配信中だ。

QJWebでは、全12話(オリジナルストーリー1本を含む)のうち『プラス1』『ゆく春』『交差点前』『どこ吹く風』『メモリーオフ』『途中下車』の6作にて監督を、さらにその3作の脚本を担当した渡部亮平にインタビューを行った。

インタビュー前編では、彼が『ショート・プログラム』に携わることになった経緯や、ほぼ演技未経験であるJO1の初主演作を撮ることのやりがいについて話を聞いた。


“チープな学芸会”になるのが嫌だった

──どういった経緯で『ショート・プログラム』に携わることになったのでしょうか?

渡部 ドラマのプロデューサーから「こういう原作で、JO1でドラマを撮ってほしいんですけど、どうですか?」っていうお話が来ました。今回のドラマは、若手のディレクターや脚本家を集めた若いチームでやりたいっていう構想があったみたいで。若い監督を探しているなかで、僕を見つけてくださったんだと思います。

──すぐに「引き受けよう」というお気持ちに?

渡部 JO1のことは「オーディションで出てきたグループ」だとは知っていたんですけど、正直なところ、詳しくは知らない状態だったんです。まずは『PRODUCE 101 JAPAN』を含めJO1のことを調べて、送っていただいたあだち充さんの原作を読みました。素晴らしい原作と、彼らが一生懸命オーディションでがんばっている姿を観ているうちに、「これはおもしろいものが作れそうだな」っていうイメージができたんです。それで、ぜひやらせてほしいです、と。

ただ、芝居未経験の子たちがやる“チープな学芸会”みたいなドラマになっちゃうのだけは本当に嫌だったんです。だから、リハーサルを含めてちゃんと時間を取ってくれるのであればできます、とは伝えました。芝居経験の有無ではなく、彼らがお芝居にちゃんと向き合う時間を用意してくれるのであれば、よいものを作れる自信があるからやりたいです、と。そうしたら「ぜひ、たくさんリハーサルをしてください」という返答をいただいて。

とはいえリハーサルの時間って、取れるようで取れないことも多いんです。「ぜひ」とは言いながらも、結果的に忙し過ぎて時間が取れなかったってことが実際には多いんですけど、今回は事務所がしっかり協力してくれましたし、何より本人たちにやる気があった。少しでも空き時間ができれば、とにかくリハーサルや稽古をやりたいっていうふうに、積極的に協力してくれましたね。

JO1主演『ショート・プログラム』30秒|Amazonプライムビデオ

脚本家として魅力的だった『ショート・プログラム』

──渡部監督は、全体の半数にあたる6作品を担当されています。どの監督がどの作品を撮るかは、どのように決まったんですか?

渡部 原作が素晴らし過ぎて、本音を言うと全部、自分でやりたいくらいだったんです。スケジュールを考えると現実的には難しかったんですが、それでも「できれば多くの作品をやりたい」とは伝えました。ほかの監督も少しずつ集まってきた段階で、各々「これがやりたい」と、意見を出し合いながら決めていった感じです。基本的には、それぞれがやりたい作品、「これだったらおもしろくできるな」という作品を担当しました。

──『ゆく春』だけは、監督が単独で脚本も担当されていますね。

渡部 今回は監督としての依頼だったんですけど、僕は普段、脚本だけの仕事もやっているので、プロデューサーから「渡部さんにも書いてほしい」と言っていただいていて。僕としても「できるのなら書きたい」っていう気持ちがあったんです。で、書くんだったら『ゆく春』を書きたいなって思ってたんですね。口に出してはいなかったんですけど、なんとなくその雰囲気を察してくれたのか(笑)、「この話は誰が脚本を書く」って決まっていくなか、なんとなーく『ゆく春』だけがずっと取り残されていたんです。これはもう、僕が書いていいよって感じで残されてるのかなと(笑)。原作自体とっても好きな作品で、自分が書けばおもしろくなるっていう自信もありましたし、やらせてもらいました。

坂本友見と鶴房汐恩/『ゆく春』より
鶴房汐恩が主演を務めた『ゆく春』

“原作をふくらませる”という作業は、脚本家としてはすごくやる気が出るんです。「この原作をどのようにしておもしろくさせようか」って、原作を超えていけるチャンスがある気がして。逆に、500ページくらいの小説を2時間にまとめなきゃいけないってなると、どうしても省く作業が中心になってくる。脚本家の「らしさ」を発揮させづらいんですね。

『ショート・プログラム』の場合は、どっしりとした枠組みや原作がありつつも、まだ余白の多い物語。普通にやったら10~15分にしかならないお話を30分にふくらませるというのは、脚本家としての腕の見せどころといいますか。「よっしゃ、やったるぞ!」って、やりがいがありました。

役者としての名刺代わり”を任された重責


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