等身大を知る河野純喜が主演作『途中下車』で見せた“普通の青春”【JO1初主演ドラマ『ショート・プログラム』レビュー】

2022.3.19
河野純喜/『途中下車』より

(c)あだち充・小学館/吉本興業
文=坂井彩花 編集=森田真規


2022年3月4日にデビュー2周年を迎えた、11人組のグローバルボーイズグループ「JO1(ジェイオーワン)」。あだち充の同名短編集を原作に、彼らがそれぞれ1話ずつドラマ初主演を務めた『ショート・プログラム』が3月1日よりAmazon Prime Videoにて配信されている。

QJWebでは、このドラマの概要と見どころを記したレビューを1話ずつ掲載していく。第11回は、河野純喜が主演を務めた『途中下車』を紹介する。

JO1主演『ショート・プログラム』30秒|Amazonプライムビデオ

愛されキャラでグループをつなぐ潤滑油

河野純喜といえば、伸びやかなハイトーンとパワフルな歌声を持つJO1のボーカルリーダー。夢を諦め切れず、大手企業の内定を辞退してダンス&歌未経験でサバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』に挑戦した。高校・大学時代にサッカーで全国大会に出場したこともあり、運動神経は抜群。持ち前の向上心で、経験者に引けを取らないパフォーマンスを確立してきたのである。

河野の強みは、なんといっても楽曲を鮮やかに描く豊かな歌声だ。「Born To Be Wild」の歌い出しでは高音をバチりと当て、「MONSTAR」のサビ前には曲の盛り上がりをブースト。YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』に出演した際には、一つひとつの言葉に想いを乗せながら、透き通った声で「Voice(君の声)」と「無限大」を歌い上げた。

グループ内では盛り上げ役のテンション担当、快活なイメージが強い。その一方で、虚勢を張って強がるようなナイーブな一面も併せ持っている。どちらも彼の優しい人柄に紐づいたものであり、JO1の潤滑油を担う愛されキャラなのである。

河野純喜/『途中下車』より
河野純喜/『途中下車』より

どんな不運も幸せに変えられる

そんな河野が『途中下車』で演じるのは、小さいころから運のない高校3年生の松村渡だ。友人との罰ゲームで初恋の人と2ショット写真を撮らなければいけなくなってしまい、その子に会いに行くところから物語はスタートする。

ゲームに負けたり、カバンを失くしたり、海の家の看板オブジェを壊してしまったり、発揮されつづける運の悪さ。そんな彼の「運が悪い」という自己認識が、中学時代の同級生である小宮慶子との出会いにより一変する。どんな不運も自分の力で幸運に変えていけるのかもしれない……と、希望を見出せる青春物語。それが『途中下車』なのだ。

小宮慶子を演じるのは、映画『初恋』のヒロイン役に約3000人の中から選ばれた経歴を持つ小西桜子。監督は、本シリーズで『プラス1』や『ゆく春』など半数の作品を手がけた渡部亮平が担当している。

小西桜子と河野純喜/『途中下車』より
小西桜子と河野純喜/『途中下車』より

“未経験”が生きた普通っぽさ

『途中下車』は、青春の甘酸っぱさや運命のおもしろさを味わえる作品だ。「初恋相手だと思っていた子が、実は別の子だった」なんてストーリーは、珍しいものではないだろう。しかしながら、海の家で同級生と過ごすキラキラした日々や松村の“運がない”という特性により、胸の奥をギュッと掴まれるドラマに仕上がっている。

さらに、少しざらっとした画質に重なる音楽のセレクトがよい。海で遊ぶシーンでのカントリー、手持ち花火をするシーンでのピアノなど、本作をよりノスタルジックかつドラマチックに演出。セリフを交えず音と画で魅せることで、言葉で語る以上の含みを生み出しているのだ。

普通っぽいのに愛嬌は抜群、そんな松村をうまく演じていた河野。JO1になるまで芸能とは異なる道を歩んできた彼は、世の中にあふれている“普通の青春”を知っているのかもしれない。それでいて、JO1内では年下メンバーからイジられる愛されキャラでもある。そんな彼だからこそ、作中での普通っぽさや素直さに嫌味がない。特に、さまざまな感情が交差するラストのとあるシーンは必見だ。

『ショート・プログラム』ときめくキャラ紹介 松村渡(演:河野純喜)|Amazonプライムビデオ

【関連】JO1初主演ドラマ『ショート・プログラム』レビュー


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  • JO1初主演ドラマ『ショート・プログラム』 (c)あだち充・小学館/吉本興業

    JO1初主演ドラマ『ショート・プログラム』

    配信開始日:2022年3月1日(火)よりAmazon Prime Videoにて独占配信中!
    作品ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B09PQRYF97
    出演:大平祥生、川尻蓮、川西拓実、木全翔也、金城碧海、河野純喜、佐藤景瑚、白岩瑠姫、鶴房汐恩、豆原一成、與那城奨ほか
    原作:あだち充
    脚本:山浦雅大、守口悠介ほか
    監督:渡部亮平、菊地健雄、上村奈帆、土屋哲彦、益山貴司、森谷雄
    プロデューサー:北橋悠佑、森谷雄、斎木綾乃
    制作:アットムービー
    製作:吉本興業
    (c)あだち充・小学館/吉本興業

    1話読切の短編集。あだち充ならではの青春感や切なさがふんだんに注ぎ込まれた作品集を、JO1メンバー全員が主演を務め、世代を超えて、現代に生きる視聴者にも共感・共鳴できるドラマに仕上がった。
    さらに、メンバー11人全員が出演する最終話「Dreamer」も3月14日(月)よりサプライズ配信がスタートした。


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坂井彩花

(さかい・あやか)1991年、群馬県生まれ。ライター、キュレーター。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。『Rolling Stone Japan Web』『Billboard JAPAN』『Real Sound』などで記事を執筆。エンタテインメントとカルチャーが..

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