俳優・瀬戸康史「辞めたい時期もあった」15年間の葛藤と、新たに見つけた“自分らしい働き方”

2022.2.21

「かわいいと言われるのがすごく嫌だった」10代のころの葛藤

──仕事をしていく上で、まわりからのイメージとのギャップに悩む人は少なくない印象です。瀬戸さん自身、まわりからのイメージづけに悩んだ経験はありますか?

瀬戸 10代のころは「かわいい」と言われるのがすごく嫌でした。でも、その一方で「自分には、それしかないのではないか……」と悩んでいる自分もいました。

それに、嫌だという気持ち以上に「好かれなきゃいけない」「(自分を)知ってもらわなきゃいけない」っていう気持ちのほうが強かったです。

瀬戸康史

──かなりの葛藤があったのですね。その悩みはどのように解決したのでしょうか?

瀬戸 年齢を重ねるにつれて、自分は自分、人は人と考えられるようになり、まわりと比べなくなりましたね。

それに「かわいい」って言われるのも、自分の一部だと受け入れられるようになりました。そうするうちに、今は芝居から知られるのでも、ビジュアルから知ってもらえるのでも、どっから入ってもらってもいいかなって思えるようになったんです。

──なぜでしょう?

瀬戸 瀬戸康史個人としての考え方とか、感じていることみたいなものをSNSで発信したり、こうやって取材をしてくださっている人たちが僕の言葉を書いてくださったりという15年間の積み重ねがあって、わかってくれる人はわかってくれてるなと思えるようになったんです。

それによって、昔よりもずいぶん楽になりました。フラットにいられる気がしています。

瀬戸康史

辞められないなら「自分で環境を変える」

──「わかってくれる人がわかってくれたらいい」とは思いつつ、自分の置かれている環境で「わかってくれる人」を見つけられない人もいます。

瀬戸 それはもう組織が悪いですよね(笑)。辞めちゃえばいいと思っちゃいます。若い世代の才能を理解してくれて、見つけ出してくれる組織に所属しないとつらいです。

瀬戸康史

──瀬戸さんは、今のお仕事を辞めたいと思った経験はありますか?

瀬戸 何度もあります。でも、僕は辞めるのが恥ずかしいというのと、親が17歳の息子を福岡から東京に行かせるって、だいぶ覚悟があったんじゃないかなと思ったら辞められなかったんです。その覚悟を考えると「逃げちゃいけないな」って。

──なるほど。

瀬戸 それでつづけてたら、この仕事が好きになってたから、そういうパターンもあります。ちょっときれい事っぽいけど。

あとは、すぐに辞められないんだったら、自分で環境を変えていくしかないですよね。

瀬戸康史

──自分で環境を変える?

瀬戸 僕、最初は、言われるがままに仕事をやっていたんですけど、意見を交わすようになったら楽しいなと思えるようになったんです。そしたら「意外とわかってくれるじゃん」って思えたし「そういうこと考えてたなんて知らなかった」って言われました。そういう場合もあるから、意見を言ってみるというのは大切かなと思います。

──意見を言うことって勇気が要りませんか?

瀬戸 そうだな〜……意見を言うというよりも、自分が「おかしいな」と思ったこと、わからないことを問いかけることを意識したらいいんじゃないですかね。そういう問いかけの中で、上司との信頼関係が生まれることもあるし、シンプルに納得できないまま進むのってめっちゃつらいですから。

瀬戸康史

──最後に、葛藤を抱えながら働く人にメッセージをお願いします。

瀬戸 若手という立場から、後輩のいる立場になっていくこと、いわゆる中間管理職的な立場って一番しんどい気がしています。でも、そこでどう機能するか、どう働くかで自分の環境って違ってくると思うんです。

だから、今いる環境に負けずにがんばってほしいし、がんばるときはひとりで溜め込まないでほしいです。一緒の境遇の人って絶対にいると思うので、たまには愚痴を言ったりしてもいいのかなと思います。

瀬戸康史

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    監督:城定秀夫×脚本:今泉力哉による本作は、古本屋の店主と、店主に求婚する女子高生、店主の憧れの女性とその夫など、一方通行の恋愛が交差し二転三転する先の読めないラブコメディ。ユニークで切実な今泉脚本の魅力と、城定監督の巧みな演出が絶妙なハーモニーを奏でた、ダメだけど愛おしい男女たちの厄介な愛の物語。

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