たったひとつのツイートから生まれた、一冊の本と大学サークルの話【ニッポン放送・石井玄×「大阪大学ラジオの会」山浦暁斗】
『オードリーのオールナイトニッポン』『三四郎のオールナイトニッポン』『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』(以上、ニッポン放送)『アルコ&ピース D.C.GARAGE』(TBSラジオ)など、数々の人気ラジオ番組でディレクターを務め、オールナイトニッポン(以下:ANN)のチーフディレクターを担当していた石井玄。そんな彼が2020年3月に投稿したひとつのツイートが、当時大きな話題を呼んだ。
このツイートをきっかけに生まれたのが、石井氏の初の著書となった『アフタートーク』(KADOKAWA)であり、学生サークル「大阪大学ラジオの会」である。石井氏と「大阪大学ラジオの会」前代表で同サークルの発起人である山浦暁斗氏の対談前編となる本稿では、石井氏本人が語るツイートの裏側、そのツイートに感化されサークルを立ち上げることに至った話など、“ラジオの現在”をめぐる幅広いテーマについて話された。
「諦めないぞ」という決意表明のツイート
──山浦さんが石井さんのツイートに影響されて、大阪大学で「大阪大学ラジオの会」というサークルを立ち上げたと。その話を知った石井さんから「ぜび、話してみたい」と連絡をいただいて、今回の対談が実現しました。
石井 「話してみたい」というか、「好感度を上げたい」と思って(笑)。
──そもそも、きっかけになった2020年3月のツイートはどんな思いがあって書いたんでしょうか?
石井 いろんなところで言っているんですけど、僕が入ったころから今もそうなんですが、ラジオ業界は基本的に下向きなんです。これはディレクターに限らずなんですが、いい時代を過ごしてきた人たちがベテランとしてたくさんいらっしゃって、業界がどんどん下向きになっているのを知っているから、基本的には「もうラジオは終わりなんだよ」という考えの人がいるんですよね。
ただ、僕らの世代……特に僕がそうなんですけど、ラジオ第1志望で入ってきているから、最初はそういう人たちの話を聞いて、ずっと嫌な気持ちになっていたんです。もちろんそうじゃない宗岡(芳樹、当時のANNプロデューサー)さんのような先輩もいたので、そういう人たちについていこうという気持ちでいました。でも、なかなかその状況を変えられなくて。
──憤りを抱えていたと。
石井 制作費が下がっていって、ラジオの仕事は縮小していくから、映像やイベントなどをもっとやっていたほうがいいと言われていたんです。でも、僕はラジオ自体がやりたくて、ラジオを盛り上げるために業界に入ってきたから、それにものすごく反発していたんですね。
もうだいぶ前のことなので記憶は定かじゃないですけど、このツイートの前後に何か言われて……ムカついたことがあったんでしょう(笑)。でも、「自分は諦めない」という決意表明でツイートをした記憶があります。思いの外、バズったんでびっくりしましたけど。
──番組関連ではないのに、3200リツイート、2万4000いいね(2021年12月25日時点)がつくなんて、ラジオスタッフのツイートとしては異例だと思います。
石井 当時、『オリコンニュース』さんにそのツイートに関して「どういう気持ちなんですか?」と取材を受けて(「ラジオファンを熱くさせた『ANN』統括Dのツイートの真意 発端は“ラジオ業界”への怒り」)、そこでも同じようなことを言ったと思うんですけど、内部から変えないとよくならないという気持ちを発信していこうと決めた、決意のツイートでした。
──こんな事情は当然、リスナーとしてはわからないことでしたけど、山浦さんはこのツイートをどんなふうに受け止めたんですか?
山浦 そこまでの事情はもちろん知らなかったんですけど、「ラジオは終わっている」と言われたってことは、僕も「終わっている」と言われたようなものだなと感じて。これはなんとかして終わらせたくないと思って、いろいろ考え始めました。
──その気持ちがサークルを立ち上げるまでに至ったと。
山浦 そうです。僕ひとりで発信しても誰も相手してくれないだろうから、何をしたらいいかなって考えたときに、大学の名前を使えばある程度は相手してくれるだろうし、大学の中の人には届くかなと思ったので、サークルを作りました。
石井 今、メンバーは何人ぐらいいるの?
山浦 今は20人弱ぐらいですね。
石井 すごい! いろんな大学の人がいるの?
山浦 今は大阪大学の中だけです。もともとの始まりは「好きなラジオを終わらせたくない」という気持ちで。SNSでシェアして、「こういう番組があるから聴いてください」と拡散するかたちでした。
石井 作るほうじゃなくて、最初はラジオファンのサークルなんだ。
山浦 で、のちのちメンバーから話してみたいという声が出てきたので、自分たちでもラジオをやるようになった感じです。
──サークルのメンバーでは、将来的にラジオでしゃべりたい、ラジオを作りたいと考えている人が多いんですか?
山浦 けっこういろんな層がいて、ラジオ業界に行きたい人もいれば、いろんなエンタメが好きで、そのひとつがラジオという人もいるので、一概にみんながみんなラジオ局を目指すという感じではないかなって思います。
──今後、サークルとしての目標はありますか?
山浦 正直、思いつきで作ってしまったんですが、将来的にはこの会がオススメしているラジオは間違いないなって思ってもらえて、そのラジオを聴く人が増えてくれれば……。それで目標達成って感じですね。
石井 おもしろいなあ。僕は業界内部に向けてあのときつぶやいたんですけど、山浦君のように外部の人がすごい反応してくれたんです。それには驚きと喜びがありました。山浦君のインタビュー(「リスナーインタビュー【57】男性/20代前半/大学生の場合」、ブログ『『ラジオの時間』ですよ』)を読んだときにも思いましたけど、こんな人がいるんだって。業界内で孤立するような発言をしてるだけなのに(笑)。
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