“身体張るバカの究極”瀬下豊の魅力は「大バカなところ」。天竺鼠・川原が「彼を嫌いな人はいない」と語る【魅惑の相方 ANSWER vol.2】



瀬下は“身体張るバカの究極”

天竺鼠川原
なすびの被り物+サングラスは、言わずと知れた川原のトレードマーク

──今、瀬下さんは身体を張るところがピックアップされていますが、ほかの売り出しポイントはありますか?

川原 身体張ることしかないんですよ。だからよかった、本当に。お笑いのタイプも真逆なんです。僕は妄想とかだけど、相方は昔から身体動かして「無茶してるなあ」で笑かすタイプだったんで。学生のときも、自分のバイクとかを燃やしたりしてハハッと笑ってたんですけど、俺的にはずっと「何がおもしろいの、おもしろくないよ」って言ってた。

──ではなぜ、お笑い芸人としてコンビを組むことになったんでしょう?

川原 人間的、哺乳類的にまわりにいない感じのタイプで、究極の真逆、身体張るバカの究極だから。“おもしろい”で言ったら自分のまわりにいっぱいいたんですよ。妄想を一緒にして、ボソボソ一緒にしゃべる奴らが。毎日国語辞典見て、みんなで回してニヤニヤするチームがあって、ボケの人がおもしろいから僕がツッコミしてたときもありましたからね。ただ、コンビを組むとしたら真逆の身体動かすぐらいのほうがおもろかった。さっき言った9割のマジョリティの中のトップにいる奴なんです。

──性格が真逆なのでケンカもあまりしたことがないとのことでしたが、一個だけ思い出に残っているお話を伺っています。同居していたころに、瀬下さんに勝手に頭を剃られたこと、覚えていますか?

川原 彼は「酔っ払って帰って、急に川原の頭を剃った」っておもしろい感じで言ってるけど、これ、僕がそもそも髪を剃ってる最中だったんですよ。酔っ払って、女の子も連れてきてたんかな?

──女の子を連れていたのは初耳です。

川原 言ってないでしょ? そういうところがおもしろいんですよ。バカでしょ? このエピソードしゃべったら俺がしゃべるのも分かるんやから。ちゃんと話すと、酔ってたのと女の子がいるってのも手伝って、僕が普段からしゃべらないタイプってのを知ってるはずなのに「おいなんかしゃべれよ!」って言ってきて。僕はいつもどおり無視してたんですけど、「女の子来てるからか」って言うてきて、なんやコイツと。そしたら「俺にもやらせろ!」って瀬下が1ミリで剃ってきたんです。僕は普段3ミリなんで「最悪や、マジでやめてくれへん」って言うたら、「なんやこらあ!」って。すごい理不尽で。

──ヤンキーですね(笑)。

川原 ただのヤンキー。この真逆さね。話の盛り方もバカなんですよ。こんなんいっぱいありますからね。なんか変なところで嘘つくんですけど、そこがまたおもしろいですよね。

昔、吉本から謹慎が出るくらい、(瀬下が)すごく仕事に遅刻してたときがあって。僕は舞台立ちたいし、このままだと仕事なくなるから「次遅刻したら解散ぐらい考えないと」って言ったのに、また酔っ払って遅刻してきたんです。だから「解散かタバコをやめるか選んでくれ」って言ったんです。タバコの提案には理由があって、喫煙者は寝起きが悪いってデータが出てたから。それに対して「分かった」って言ったんです。なのに、そのあとみんなに「自分への戒めで、命よりも好きなタバコをやめた。それぐらいお笑い好きなんや俺」みたいな感じで話してて……盛り方がバカで。どうでもいいんですけど、「遅刻しないためにやめた」でよくないですか? 僕はほかから「瀬下さん、あんな好きなタバコやめるなんて……」みたいな感じで聞くことになるけど、僕がやめてくれって言ってやめたことを僕は知ってるわけやから。

──バレたら絶妙に恥ずかしい感じの……。

川原 そう、それが不思議なんですよ。あと一個いいですか? これね、本人も脳みそ切り替えてるのも分かんないんですけど……。昔、何人かで阪神戦を観に行ったとき、ホームランがちょうど瀬下のメガホンに入ったんですけど、ポーンって跳ねてメガホンの外に出て、ガムシャラに取りに行ったけど結局子供に取られたんです。「クッソー!」って悔しがってて。このままのエピソードでも盛り上がりそうな話なのに、劇場のトークテーマが【あり得ない話】みたいなときに、「僕一回、ホームランをメガホンで取ったんですよ! でも、子供が欲しそうにしたからあげたんですよ」って瀬下が言ってて。おもしろおかしく話を盛る人はいっぱいいるんですけど、何をそんなんカッコつけた感じで話すねんって。そのへんが彼らしいところじゃないですか? そのバカバカしい感じがいいんですよねぇ。

天竺鼠川原
瀬下のエピソードは、次から次へと止まらなかった

瀬下が書いたネタは、分子レベルでビリビリに破いた

──瀬下さんは、自分にはない川原さんの発想力についても褒めていました。逆に、川原さんが、瀬下さんの発想力にハッとさせられることはありますか?

川原 ないですよ! まったくないことが、逆にハッとすることですよ。NSCのころに、一回だけ瀬下ががんばってネタを考えてきたときがあったんですけど、ボケ0でしたからね。普通に「いじめっ子がいじめをしてるだけ」のコント持ってこられて……ハッとしましたね。逆におもしろいなと思って。

2年前「『M-1』決勝に行ってたらどんなネタしてたのか見せてください」ってテーマでテレビに出たときに、あえてボケ0の漫才をしたんですよ。そのとき「あれ? NSCのとき瀬下がボケ0のネタ書いてたけど、ああいうボケだったのかな。それに気づけてあげれなかったのかな……」って、ハッと。「もしかしたら彼は2、3周してたのか?」と思いました。

──(笑)。

川原 ネタを書いてくれた紙を一応もらったんですけど、これでもかってぐらい手で細かく切りましたね。紙ってこんなに人の手で細かく出来るんだってぐらい、ギリギリまで細かく。

──瀬下さんが知ったら傷つきそうな……(笑)。

川原 彼は知らないところで。もう目で見えないぐらい、分子ぐらいの細かさまでやったんで。

天竺鼠のネタ作りは、逆算の肉づけ

天竺鼠川原
ネタは100%川原が書いている

──瀬下さんが「万人ウケしにくいネタも、最終的にはウケるネタに変わる」と、ネタの変換力を絶賛していました。川原さんは「ウケるネタにしよう」という意思でネタを変えていってるんでしょうか?

川原 ネタの作り方として、「このフレーズが言いたいだけ」「これがしたいだけ」っていうのが最初にあって、そこから設定を考えていくんです。普通は「学校のコント考えるぞ、じゃあヤンキーと……」とかっていうふうになるんですけど、僕は逆算で肉づけしていくんですよ。で、舞台に立ったときに、その肉づけ部分を変えていくんです。ウケるとかよりも、自分がやりたいことをやれる流れを作るために変えたりします。「俺がやりたいところはウケないから、ある程度前にウケさしとこう」とかって考えもあります。そう考えたら、ウケるように変換してるところもちゃんとあるし。

──まさか、川原さんのネタの作り方を聞けるとは……。ただ、瀬下さんは「本番中にどんどん変わっていくから、めちゃくちゃあたふたする」ともおっしゃっていました。

川原 漫才だったら、舞台出る寸前に「あそこやっぱ変えるわ」って言いますからね。なんやったらセンターマイクの前で「あそこのくだりなくすわ」って言ってるんちゃうかな? それぐらいギリギリ。

──(笑)。それって、川原さんが瀬下さんへの安心感や信頼感があるからかな?と深読みもしたのですが……。

川原 これは誰にでも。芝居とかロケでも「こうしたいです」っていうのはギリギリのほうがいいのが出るんで、瀬下がどうのこうのじゃないですね、残念ながら。単独ライブとかも、前日にどんどん出てくるんですよね。

劇場の通常出番でも、前の人のネタを観るのすごい好きで、それを観て「変えたい!」ってなるから、あと2、3組なのに舞台監督に「ネタ変えてもいいですか」って言うこともあるんですよ。大阪のころから僕らのこと知ってる方は、そんなことが何回もあったから、向こうから「どうする? ネタ変わる? 変わらないよね?」って聞いてきます。

この前『ザ・ベストワン』(TBS)のコントのときも台本と全然違うことをリハでして、ネタをフワっとさせてたんです。そしたらスタッフさんが本番前に走ってきて「もう変えないでしょ⁉︎ 変えないでね!? カメラワークとかあるから!」って言ってきて、「分かりません」って言いました。その人は『あらびき団』(TBS)とかもやってて前から知ってるスタッフさんで、もう勘弁してくれみたいになってました。

──瀬下さんの対応力はいかがでしょう?

川原 めちゃめちゃ慣れてるし、これが当たり前のようになってるからね。NSCの授業では、ネタしたい順番を自分たちで書くんですよ。みんなトリは嫌がるんですけど、僕は毎回トリに書くんです。それがなぜかというと、みんなのネタを観ながらネタを変えたいから。瀬下はそれに慣れてるからねえ。安心感というよりも、もう17年それやってるからそうしてもらわんと。

──「ネタ帳がないから困る」ともおっしゃっていました。

川原 かまいたちの濱家(隆一)が、昔から僕たちのネタけっこう細かく覚えてるから、濱家に「どんなことしてた?」って電話して全部教えてもらって、「めっちゃおもろいやん」「いやお前が作ったんや!」みたいなのも多かったですね。

──濱家さんすごい……作家さんじゃないですか(笑)。

川原 そうそう。久しぶりのネタして袖に戻ったら、濱家に「あそこ抜けてるやん!」って言われることもあります。

天竺鼠川原
自身のブランド「Poten Hit」のジャージがとてもよく似合っていた

瀬下は“ギリギリ犯罪じゃない奴”だった


この記事の画像(全13枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

佐々木 笑

(ささき・えみ)1996年生まれ。宝島社ムック局編集部のち、フリーランスの編集者・ライター。笑と書いてエミ読みます。本名通りお笑い大好き人間に育ちました。『フワちゃん完全攻略本』『#麒麟川島のタグ大喜利』『KOUGU維新 公式本で、イザ参ラン!』(すべて宝島社)など。アイコンは川島さんに描いていただ..

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。