WAGE事実上の解散から、かもめんたる結成まで

2006年、WAGEは活動に終止符を打ち、事実上の解散となった。

岩崎　一応「活動休止」って言い方をしてるんですけど、その2年前くらいに一度「辞めたい」と言ったんです。もう1回、自分の好きなお笑いをやって、それをやって散らないと後悔するからそれを早くやりたいと。やっぱり20代の何年かは大きいから無為に過ごすよりいいと思って気持ちを打ち明けたんです。そのときはマネージャーも「もうちょっとがんばったらどうだ」って。ほかのメンバーも「まだやりたいし、う大さんいないと困る」って言われたのでつづけたんですけど、そこから1年くらいしたら、アミューズ自体の風向きが変わってきたんです。お笑い部門を閉じたいと。そうなったとたんにマネージャーも「お前らにう大の人生を縛る権利があるのか」って正反対のことを言い出して（笑）。それで解散しました。

リーダーはアミューズに残って脚本家になり、あとのみんなはアミューズを辞めて、野中はミュージシャンになって。僕はピン芸人でしばらくやってました。ほとぼりが冷めたら、ホントは槙尾と小島の3人のユニットでやれたらいいなあって思ってたんですよ。僕は好きなことができたんで。ただ、僕が言い出して解散してすぐ3人で組むのは仁義に反するから、1年ぐらい様子を見ようかなって思ってたら、小島がすぐ売れ始めたんです。

じゃあ、槙尾とふたりでやろうかな、と「劇団イワサキマキオ」を組んだんです。当時、槙尾は「お笑いをやりたくない」って言ってたんで、ふたり芝居みたいのでやっていこうと。一緒に舞台なんか観に行って。それで『二人芝居演劇祭』っていうのを1時間やってみたんです。WAGEのときのお客さんも来てくれたりして、わりと評判がよかったんですよ。

でも、これをつづけていっても、世に出るのっていつになるんだよって思ったらもう途方もない。それで「じゃあお笑いライブに出ながら名前をちょっとずつ売っていこうか」って言いながらも、僕の中では、コントを槙尾とふたりでやったらどうなるか試してみたい気持ちもあって。そうしてライブで勝った負けたをやってるうちに、コントライブをやるようになっていって、お笑いのほうに戻ってきたんです。

その後、「かもめんたる」と改名し、2013年の『キングオブコント』で優勝するなど活躍していくのは周知のとおりだ。大学お笑いサークルに入ったことは、プロの芸人として活動するにあたって、う大にどんな影響をもたらしているのだろうか。

岩崎　芸人って試験があるわけじゃないし、数値化できる特殊な能力ではない曖昧な世界じゃないですか。いきなり芸人の世界に入ってたら、「この人たちは芸人だからおもしろいんだ」って思っていたかもしれない。おもしろさに対する見方をより神秘的なものに捉えてたと思うんです。

でも僕はお笑いサークルでお笑いをやってたから、おもしろくてもプロの芸人になってない人ってそこらじゅうにいるんだってわかった。だからそんなに芸人＝最強って考えも僕の中にはない。日本人全員が芸人になってたら、僕のランクなんてだいぶ下がると思うんです。やっぱ、そういう感覚はほかの芸人さんより持ってるんじゃないですかね。

大学お笑いを通して、プロの芸人じゃないのにあんなにおもしろい人たちがいるって知れたのは何かいいことのような気がします。その中で僕がお笑いをつづけられてることのありがたさとか、だからこそがんばらなきゃという気持ちはありますね。