マヂラブ村上、テレ東P、テレ朝Dらが振り返る大学お笑い黎明期と裏話


8月2日、「大学お笑いサークル 36歳同窓会 ~『シンパイ賞』『激レアさん』×『勇者ああああ』『マヂクリ』の原点~」と題したトークライブが東京・LOFT HEAVENで開催された。

これは、『激レアさんを連れてきた』『爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞』『キョコロヒー』『秋山とパン』『中居正広のニュースな会』などを手がけるテレビ朝日・舟橋政宏(早稲田大学・寄席演芸研究会出身)と、『勇者ああああ』『マヂカルクリエイターズ』を生み出したテレビ東京の板川侑右(明治大学・落語研究会出身)、そしてペンギンズ・ノブオ(大正大学・コメディ研究会出身)をゲストに迎えたトークライブ。3人は、いずれも1985年生まれ(舟橋は早生まれのため学年は上)で大学お笑いサークル出身だ。さらに当時の学生お笑い王者・法政大学HOS出身のマヂカルラブリー村上がスペシャルゲストとして途中から参加した。

彼らが在籍したのは2000年代半ば(舟橋が2003年入学)。このころは舟橋と村上以外は、交流がなかったそう。そもそも大学間の横のつながりは薄かった。当時の大学お笑いは「凪のような時代」だったと口をそろえる。

90年代にいわゆるお笑いサークルが少しずつ登場。1990年代末期~2000年代初頭に早稲田の「WAGE」の登場で盛り上がりはあったものの、それがひと段落した時期。その反動か、プロ志向の人も少なかったという。そこから2010年代に入り、大学間の交流が活発化。全国規模の大会も整備され発展期を迎える。その狭間の世代、大学お笑いサークル黎明期といえるだろう。それだけにほとんど伝えられることがない貴重な証言が数多く飛び出した。

まずそれぞれがサークルに入ったきっかけを聞いた。

舟橋政宏
テレビ朝日 舟橋政宏(ふなはし・まさひろ)

舟橋 高校の時からお笑いが好きでした。先に東京に出てた姉が、早稲田にはお笑いサークルが300個くらいあるって(笑)。演劇のサークルと合わせて言ったのかもしれないんですけど、それで早稲田に入ったら、入学式の新歓で『早稲田大学お笑い工房LUDO』っていうでっかい看板もあって、ただその時は劇団なのかなって思ったんです。「工房」って感じが。別のところで「ハゲ・デブ・メガネ求む」って看板を持っている太ってる人がいて。それが『寄席研(早稲田寄席演芸研究会)』だったんです(笑)。「大丈夫かな?」と思ったんですけど、新歓ライブを観たらお客さんもいっぱい入ってて、すごいおもしろくて。それで入ったって感じですね。

落研(早稲田大学落語研究会)は落語家さんを呼んでイベントを開いたりとかそっちのほうがメインという印象で、あんまり自分たちが舞台に立つ感じじゃないな、と思いました。そもそも寄席研も落研から派生して舞台でやりたいという人が作ったサークルだと思います。LUDOは当時、今ほど大きくなかった。その当時のLUDOでは、2組めちゃくちゃおもしろい方がいて、元エレファンツの兵庫(祐樹)さんがやってた「なんたる偶然」というコンビと「俺軍」っていう……。これ誰にも伝わってないな(笑)。その2組はすごいおもしろかったんですけど、なかにはまだ照れ笑いしながらネタをやっているような人もいました。寄席研はベタなんですけど、みんなめちゃめちゃ笑わせてくれて、いいなあと思って入りました。

板川侑右
テレビ東京 板川侑右(いたがわ・ゆうすけ)

板川 小学校6年くらいでシティボーイズさんのコントを観たときに、お笑いは好きだけど、こんなすごい人たちになれないって思って。ただお笑いの話ができる人がずっとほしいと思っていて、高校にはお笑いサークルなんてなかったから、大学に入って初めてお笑いのサークルというのを知って。ああ、ここには仲間がいるのかなと思って入ったんです。当時、明大には落研(明治大学落語研究会)とややこしいんですけど、『木曜会』と『木曜会Z』っていうのがあったんですよ。木曜会の中にいた人たちがもうちょっとちゃんとやりたいってなって「Z」を作ってるんです。だから『木曜会Z』はけっこうプロの芸人さんを輩出している。そのころの『木曜会』と自分は肌が合わないなと思って消去法で落研に入りました。

『騒動舎』もあったと思うんですけど、ジョビジョバさんがテレビにバッと出ててあの人たちがいたところなんだって感じでお笑い的な活動はしてなかった。明大落研もお笑いの活動をしてるほうではないんですけどね。みなさんご存じの「4000年に一度咲く金指」は1個後輩。やっと『R-1ぐらんぷり』で名前が出るようになってうれしいなって。

――立川志の輔さんら歴代スゴい方々を輩出してますよね?

板川 確かにそうなんです。名前があるんで明治大学落語研究会ってことで何回かテレビに出させていただいたり、歴代の方々のおかげで営業の仕事がたくさんくるんです。だから俺、バイトは途中でやめて、営業の仕事だけで月10万から20万とかもらえてました。僕はそういうのが得意だったんで、そんなのでお金もらえるんだったらバンバン行きますって感じでした。

――明大落研には三宅裕司、志の輔、渡辺正行とエースがつける高座名「紫紺亭志い朝」がありますよね?

板川 それを誰が取るんだって争ってた時期もあったそうなんですけど、たぶん僕らの世代は、「絶対に志い朝を取る!」みたいなこともちょっとカッコ悪いなみたいな斜に構えた時代ではあったと思います。僕らの代にも志い朝はいましたけど、そいつも今何をしてるんだかわからないですね。

ノブオ みなさん、歴史があっていいなあというか。『大正大学コメディ研究会』は通称「コメ研」っていうんですけど、コメ研は僕は入学して間もなくしてできた研究会なので、歴史がない。僕が卒業したあとに何か活動してたのかなあって、さっき「コメ研」で検索したんですけど、米の研ぎ方しかでてこなかった(笑)。

――それは調べ方が悪い(笑)。

ノブオ 大学1年のとき、前の前のコンビでオーディションに合格して吉本に入れてもらったんです。その時に同期だったのが野田クリスタルくん。吉本のライブにちょこちょこ出てたんですけど、月に2回くらいしかないんです。場数が少ないなというのがあって、なんだかんだ大学にいる時間が一番長いんで、大学でお笑いの活動できないかなと思ってたら、たまたまチラシを見てサークルを立ち上げることを知って、お笑い好きの同級生と入りました。吉本のコンビとは別に組んで2コンビで並行してやってました。

ノブオは学生時代から「だいなお」というコンビで松竹からスカウトされプロの芸人として活躍。その同期には早稲田・寄席研の「カノン」もいた。よくだいなおとカノンは一緒にライブに出演していたため、カノンと同期だった舟橋はだいなおのことは観客として見ており、「シュッとした感じですごい人気があった」と証言する。在学中に『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)にも出演した。

当時は前述のように大学をまたぐような大きな大会はほとんどなかった。そんなときに生まれたのが2005年から始まった「大学お笑い日本一決定戦」だ。『アメトーーク!』(テレビ朝日)「大学お笑いサークル芸人」の回でも村上が優勝した大会と紹介されたものだ。この大会にノブオも参加していたという。

ノブオ
ペンギンズ ノブオ

ノブオ 1回だけ出たんです。シアターDでやってたんですけど、その時カノンが一緒だと思うんですよね。カノンが優勝したんじゃないかな?

舟橋 いや、HOSの村上くんたちが優勝した。

ノブオ あ、そうか。弾丸ジャッキーさんがMCで。

舟橋 そうそうそう(笑)。

ノブオ あの大会の決勝大会に出て、けっこうこてんぱんにされたというか。僕らの大学がビリ2だったんじゃないかな。ただ慶應に勝って。エンディングで悔しくて「学歴では負けたけどお笑いで勝った!」って言っちゃって変な空気にしちゃった(笑)。慶應の方も悲しい顔してて。

板川 みんなを傷つけてる(笑)。 

舟橋 作家の飯塚(大悟)さんが動いて大会を作ったって聞いたことあります。大学は卒業してたけど、作家活動の傍らやってたんじゃないかなと。

板川 この前、飯塚さんと話してたら「大学お笑いブームの原点は俺だ」って(笑)。実際、それは本当だと思うんですよ。ライブ仕かけたりした方でいまだにこの世界にいる人はあんまりいないから。

その前年から早稲田大学放送研究会主催の『大学生M-1グランプリ』が始まる。2005年の第2回では、舟橋が、古賀仁(現在NHKに入社し『有田Pおもてなす』などのディレクターを担当)と組んだ「北斎」が優勝した(第3回は『大阪芸術大学 落語研究寄席の会』のミルクボーイが優勝)。

舟橋 『大学生M-1』が2004年にできて、その次の年に『大学お笑い日本一決定戦』ができたくらいで、それ以外はほとんどなかった。

板川 お笑いサークルにいてもその話でもちきりみたいなこともあまりない。それくらいの認識だった。

舟橋 大学生M-1は早稲田主催なんで、3年生のときに出ました(優勝)。『大学お笑い日本一決定戦』のほうには出た記憶がない。だから村上くんが日本一になったっていうのはあんまり実感がないけどなあって思ってた。

板川 日本ってどこだよ! って(笑)。

舟橋 でも調べたら僕、2年目に出ててめちゃめちゃ負けてて、たぶん悔しくて記憶消してた(笑)。

こうした大会ができる礎になったのは、1999年に開催された『早稲田フェスティバル』だったのではないかと舟橋は証言する。

舟橋 僕が知っている限り、寄席研はずーっと内向的なサークルなんですけど、唯一くらい外に船を漕ぎ出そうとしたのが能登さんという方らしくて。その方ががんばって『早稲田お笑いフェスティバル』というのをやったんです。当時、かもめんたる(岩崎う大、槙尾ユウスケ)さんや小島よしおさんを輩出しているコントサークルの『WAGE』とできたての『LUDO』と寄席研と落研があったんですけど、それを集めて早稲田全体で盛り上げようと。結局、落研は出なかったんですけど、その代わりに明治大のsick in homeというザ・ギース尾関(高文)さんがいたトリオが出てくれて、学生芸人たちが、NSCと人力舎のスクールと戦ったんです。NSCは又吉(直樹)さんの線香花火、綾部(祐二)さんのスキルトリックとかがいたと聞きました。

そのときにアミューズの人をNSCから紹介してもらって、その人から「関東の大学全部に声をかけろ」という大号令があって、アミューズと協力して予選に20校以上、合計200人くらいが集まる規模の『ギャグ大学』という大会ができたそうです。

それでアミューズに学生お笑いチームみたいなのができて、寄席研からはギースの高佐さんがいったし、現フジテレビの日置(祐貴)さんも参加されてたみたいです。尾関さんやどきどきキャンプ(岸学、佐藤満春)さんもいました。そのプロジェクトは途中で頓挫しちゃったんですけど、WAGEさんはここからデビューしています。

寄席研は東西の交流がほとんどなかったころから同志社大学の喜劇研究会と関係が深かった。カズレーザーと東ブクロがコンビを組んだ「フルハウス」がいたことでも有名だ。

舟橋 “交換留学”じゃないですけど、同志社の学生が早稲田のほうに留学のようなかたちで来ていて、その人をきっかけで交流が始まったんです。僕の3つ上の女性の方。そこから毎年、ホーム&アウェイじゃないですけど東京と京都で1回ずつ対決ライブをやってました。カズレーザーさんは「レッド」と呼ばれてたんですけど、レッドくんは対決ライブを東京で観て、早稲田か同志社かどちらかに入ろうとして同志社の喜劇研に入ったと聞いたことあります。

ノブオ 喜劇研出身の渡辺(佑欣)さんはさらば青春の光さんの作家でがっつり入ってますよね。

舟橋 僕の番組にもほぼ全部入ってもらってます。同期で仲よくなったから、それからずっとつながってますね。

――北斎はフルハウスとも対決ライブで対戦したことがあるんですよね?

舟橋 あります。全然負けてましたね。すごいキャラ濃かったんですよね。見た目は今と一緒で全身真っ赤、しかも一人称が「あちき」だったんですよ(笑)。

板川 ええ!「あちき」!? 濃いなぁー(笑)。

舟橋 だから同志社の人はみんな知ってるみたいな感じでしたね。カズレーザーになって出てきたときに、めちゃめちゃびっくりした人いると思いますよ。地域の人とか。

板川 都市伝説みたいに(笑)。

このほかにも、だいなおが在学中から出演していた『イッテQ』の裏話、舟橋や板川が挑戦した『M-1グランプリ』のエピソード、ラーメンズやジョビジョバから受けた影響など話題は多岐にわたった。

大学間の交流が盛んになり隆盛を誇る現在の大学お笑いに連なる源流ともいえる位置にいた舟橋、伝統的なお笑いサークル・落研の中で他大学との交流はほとんどなかった板川、プロの芸人として活動の場のひとつとしてお笑いサークルを選んだノブオ。まさに三者三様。それぞれの視点の違いがとても興味深いものだった。

さらにイベントの後半には、法政大HOS出身のマヂカルラブリー村上が登場。

マヂカルラブリー村上
マヂカルラブリー 村上(むらかみ)

HOSの驚きの成り立ちや入ったきっかけ、HOSと早稲田・寄席研の交流、村上が組んでいた「コバヤシーン」のメンバーの現在、村上から見る「北斎」舟橋の意外な印象、大学お笑いサークル出身者同士の仲間意識、『勇者ああああ』や『マヂカルクリエイターズ』の裏話、ミルクボーイの衝撃、「LUDO」発展のきっかけなど盛りだくさん。

お笑いサークル出身だからこその作り手の矜持や現在の大学お笑いへの思いなども熱く語られた。


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  • 大学お笑いサークル36歳同窓会 ~『シンパイ賞』『激レアさん』×『勇者ああああ』『マヂクリ』の原点

    通常配信チケット:1,800円(税込)
    配信チケットはキャスマーケットにて発売!!
    アーカイブはイベント終了後から1週間(8月9日(月)23:59まで)

    主催・聞き手:大森あキ
    聞き手:てれびのスキマ(インタビュアー)

    【出演者】
    舟橋政宏(テレビ朝日『激レアさんを連れてきた』『シンパイ賞』演出)早稲田大学寄席演芸研究会出身
    板川侑右(テレビ東京『勇者ああああ』『マヂカルクリエイターズ』演出プロデューサー)明治大学落語研究会出身
    ノブオ(ペンギンズ)大正大学コメディ研究会出身
    村上(マヂカルラブリー)法政大学お笑いサークルHOS出身

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てれびのスキマ

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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