「王子様が幸せにしてくれる、そんなの幻想」でんぱ組.incが歌うシスターフッド的世界観



アイドルに欠かせない「集中力」「全能感」「対応力」

──以前、別の取材でもふくさんは「メディア型のアイドルを作るつもりはない。ライブに強いグループにすることしか興味がない」と言っていましたが、観た人がトランス状態に入れるライブをすることがひとつの目標となっているわけですね。その文脈でいえば、アイドル本人の意志が埋没しやすい、自我が認められづらいのも、祭りの中心としての機能を考えると歴史的なつながりもあるように感じます。

Yumiko そう、いろいろなことに気が散ってたら、祈りや舞に集中できないから。

もふくちゃん いわゆる“奇跡”を起こす上での存在として、集中は大事なんです。

Yumiko そのためには……若いときって「なんでもできる」って謎の自信があるじゃないですか。あれを持ってることは、羽化を見せる、奇跡を起こす上ですごく大事なんです。そして、現実を知っていく上で、それを持ちつづけることが非常に難しいんだと思う。

──確かに若いときの全能感は、現実を知らないからこそのもので。

Yumiko そうそう。あと単純に、年を取ったら新しい音楽、聴かなくなりません? それと同じような変化が、いろいろな面で起こっていくんだと思う。

──アイドルという仕事をする上では、「集中力」「全能感」「対応力」が重要というわけですね。4月に加入した新メンバーもこれらを備えていると思うのですが、アイドルグループにとって、メンバーの入れ替えは人気を左右してしまう難しい局面でもあると思います。ファンからの反響はいかがでしょうか。

もふくちゃん チーム全体が色々な面でフレッシュになったよね。アンケートや配信ライブのデータからは、観てくれる人たちの年齢層も10歳くらい若返って、女性が増えたっていうのが顕著な変化ですね。

相沢 もともと女の子のファンが多いグループではあったと思うけど、現場に足を運んでくれる女の子も増えていて、本当にありがたいです。

もふくちゃん 特にネットのライブ配信では女の子の割合が本当に増えた。特に自宅で応援してくれてるっていう子がすごく増えましたね。

Yumiko もともと、ほかのグループに比べてファン層の平均年齢が少し髙いっていうのはあるけどね。10年もやってて、ファンも一緒に歳を取ってるから。「彼女たちもがんばってるから、自分もがんばろう」って思う対象として、親近感を持ってくれているのも確かなんだと思います。

もふくちゃん 特にもがねむ(卒業した最上もが、夢眠ねむ)は女性ファンが多かったから、彼女たちが卒業したときにファン層が少し変わって、ねもぺろ(現メンバーの根本凪、鹿目凛)が入ったときも、また違う層のお客さんが入ってきて。

未鈴ちゃんが戻ってきて、さらにチーム全体が変化を遂げるように

──諭吉佳作/menさんなど、若いクリエイターと組んで楽曲制作を行ったり、「プリンセスでんぱパワー!シャインオン!」「玉虫色ホモサピエンス」を筆頭に、アップデートされた感覚の楽曲が多い部分が、若い人に受け入れられているのでしょうか。

Yumiko 感覚的なことだけど、チームの活気があって、そこにみんなが吸い寄せられてるイメージかな。あ、こっちはなんか楽しそうだなって。

もふくちゃん 祭りの会場はこっちかなって(笑)。そこは人間って、すごく動物的。

Yumiko そうそう、活気とかいい匂いにいはすごく本能的だよね。「関係性が清らかなら、活気も出るし、心も清らかになるし、それがイイ匂いに感じる」。グループの風通しをよくして、健全なコミュニケーションを。特に今気をつけていることです。

──その意味では、天沢璃人さんという男装するメンバーが加入したことも、多様性という観点では前向きなメッセージだと思うのですが。

天沢璃人、ミームトーキョーのプロフィール画像

もふくちゃん そこは、私たちは璃人の格好を男装と思ってるわけではないですね。男装文化があったのは、ギリギリ5〜6年前っていうイメージで、それ以降に入ってきた子たちは自然にいろいろな格好をする子が多いって印象です。

たぶん、ショートカットでボーイッシュな格好、くらいの感じだと思います。ガンガンに女の子の格好をすることもあれば、今日はカッコいい感じでっていう日もあるだけ。私たちの時代の感性だと男装って思っちゃったけど、今の子たちはそういう意識はまったくないと思います。

Yumiko そういう「気分」なんだと思う。私もその感覚を持ってたから、初めて彼女を見たときから「璃人くん」ってイメージはなかったですね。ただ、まわりが「男装の子でしょう?」「スカートを履かせたらいけないのかな」ってそわそわしてたみたい。

本人も「男装をしたほうがいいのかなな」って思った時期もあったらしいけど、実際は女の子の服を着るのも好きみたいだから。最近は「いろいろな服を着てみたい」「女の子のかわいい格好も似合うかも」ってなってるみたいで、それはハッピーな変化だと思います。

──こちらの質問自体が、無意識に何かを型にはめようとしていたのかもしれません。あくまで、好きな服を着ているなかのひとつのバリエーションだったと。

Yumiko そうそう。身長が高くて体格がしっかりしてるから、メンズの服が似合うだけ。

──ここまで聞いてきたグループのアイデンティティ、変化した結果、現在のアウトプットがあるだけという話と一貫性がありますね。

もふくちゃん 梨紗ちゃんだって、これから全然違う格好をするかもしれないしね。

相沢 そうかもしれない。「気分」って超大事で、「なんか似合うかも」って思った服のほうが絶対に似合うから。「似合わないかもしれないけど、これを着たほうがいいのかな」っていう服を着つづけるのは、生きづらい気がする。自分に合うものを見つけられると生きやすいし、まわりもそれでいいんだって思えるのが平和。私たちはそれを自然にやってこれたのかもって、今改めて思いました。

その意味では、若い子たちを自然と支えるためには、過去につらい思いも経験してきた年長メンバーがいることが、チームとしてすごくいいバランスなのかも。

もふくちゃん 先人の知恵みたいなものだね。

相沢 がむしゃらに無鉄砲に走る素敵な子たちが、ときに痛い思いをする。その気持ちって、過去に同じようにつらい思いをした人にしかわからないことってあると思うんです。未鈴ちゃんが戻ってきたときに、みんなで集中してさらにチーム全体が変化を遂げるんじゃないかなと思います。


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  • でんぱ組.inc『衝動的S/K/S/D』

    でんぱ組.inc新体制のシングル第2弾リリース。表題曲はグループの名曲を数多く手がけてきた玉屋2060%が作詞作曲。記事内でも触れた、前山田健一が作詞作曲の『玉虫色ホモサピエンス』のほか、スピンオフユニット「ねもぺろ from でんぱ組.inc」、「チャぺの泉 from でんぱ組.inc」の楽曲も収録する。
     
    発売日:2021年9月22日(予定)
    予価:2,200円(税込)

    関連リンク

  • 「相沢梨紗バースデー記念展〜Aquaporin〜」

    写真家・七菜乃が撮影した写真、デザイナー・MIYA NISHIYAMAがデザインした衣装に加え、本人が制作した絵画も展示予定。写真作品は販売も行う。特典付き限定ドリンクや展示開催記念グッズの販売も予定している。
     
    開催日:8月11日〜8月15日(12:00〜20:00)
    会場:AWAJI Cafe & Gallery(〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町2-4-6)
    チケット料金:無料

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森 ユースケ

(もり・ゆーすけ)1987年生まれ。東京都出身。毎日ウルトラ怪獣のTシャツを着ているライター/編集。インドネシアの新聞社勤務、国会議員秘書、週刊誌記者を経て現職。近年は企業のオウンドメディア編集も担当。オリックス・バファローズファン。

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