3.31-22:00 R‐指定、 星野源、サイプレス上野、全員にとっての最終回
それから2日後、『タマフル』最終回となる3月31日土曜日。『オールスター感謝祭』のマラソンを見に来た人たちでTBS周辺はごった返していたが、9階のラジオフロアは静かなままだ。廊下にはCreepy Nutsから番組宛に花が届いていた。18時30分ごろ、宇多丸が到着。打ち合わせ室に入ると、最終回へのメールの投稿状況や『アフター6ジャンクション』について、あるいは都内に新しくオープンした映画館について、軽く雑談を交わす。
いつもどおり19時頃になると映画評をまとめるために宇多丸は別室へ。スタッフルームでは、最終回演出として初期の番組EDテーマを使うプランがあり、簑和田Dが山下達郎の「土曜日の恋人」を流していた。橋本Pが「最初のエンディング曲じゃん!」と声を上げるも、古川に「え、覚えてない」「最終回で初期のEDに戻るって、アニメみたいですね」と軽く流される。橋本Pは「俺がディレクターレベルで細かく関わったのは主に最初の2年だったから、みんなが忘れてるころの記憶が強いんだよね……」と嘆き、一瞬だけ最終回めいた空気が流れた。
冒頭に戻り、放送開始20分前の21時40分頃、宇多丸が別室から駆けつける。と、そこに、花を出していたCreepy NutsのR‐指定が顔を出す。番組ファンだというR‐指定は、「『おつかれさまでした』を言いにきました」と挨拶。「ここで聴いてけば?」という宇多丸の誘いに、「いや、帰ってひとりで聴きます」とガチリスナーぶりを見せていた。
そして迎えた、21時59分。ディレクター席に座った簑和田Dが、「じゃあ、最終回……」と声を発する。ブースの宇多丸から「『じゃあ』?」とツッコまれながら片手を上げ、「めちゃめちゃ緊張する」とつぶやいたあと、キューを出した。「さぁ、ということで、2018年本日3月31日土曜日、2007年4月7日からはじまりましたこの『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』も〜〜」と宇多丸が口上を述べると、スタッフから歓声が上がった。
放送開始から10分ほど経ったころ、しまおまほが遅れて登場し、最終回に加わった。リスナーから寄せられた11年間の「ベストモーメント」が次々と紹介されていく。コントロール・ルームでは、「モーメント」の素材を流すべくADたちが用意に走り、「ダメロン(編註:映画『スターウォーズ/フォースの覚醒』の登場人物ポー・ダメロンについて言及したモーメント)ですよね!?」 「ダメロン!」と確認が飛び交っていた。
着々と放送が進むなか、23時ごろ、ラジオネーム、スーパースケベタイムこと星野源がTBSラジオに現れる。実はこの日、星野源の出演は宇多丸にも知らされていなかった。23時30分過ぎ、「おい、宇多丸ぅ〜!」と乱入。直後、サイプレス上野も遊びに訪れ、ブース内に人が増えていく。ジェーン・スーが、ブースの外からその様子を見つめていた。
「ほとんど明けて明日です、アフター6ジャンクションでまたお会いいたしましょう。ライムスター宇多丸でした」
23時59分、拍手が沸き起こる。多くの関係者が集まり、いつの間にかコントロール・ルームは満杯になっていた。ブースの扉が開き、みんなが流れ込む。
「最終回をこんな豪華にお祝いしていただける番組に育つとは、誰が想像したでしょうかって感じじゃないですか。自分のこととは思えないくらいです。とはいえ、あまりしんみりしている暇もなく、さらなる無茶が始まってしまうので、これまで以上にお知恵やお力をお借りしたい場面も増えると思います。ひと言で言えば『ありがとうございます』と『今後ともよろしくお願いします』、ありがとうございました!」
花束を抱えた宇多丸が挨拶し、再び拍手が贈られる。なぜか軽く躍る宇多丸を尻目に、橋本Pが冷静に「宇多丸さんはこのあと『Quick Japan』の取材なので」と告げると、集まった人たちはこのあとの打ち合わせに向けて、いったん解散となった。
2日後には新番組が始まる。感慨に浸っている余韻はないのだろう。いちリスナーとしても、寂しさより期待が勝つ。本当に「終わった」と実感するのは、来週の土曜日なのかもしれない。取材を終えた宇多丸は、そのまま打ち合わせへと向かった。なお、その後DJミッシェル・ソーリー(ex.ミッツィー申し訳)たちとの打ち上げで翌昼まで飲んだという。