青春時代とは「友達のことをどれくらい信用していいのかを実験していく期間」
―――ミュージシャンやクリエイターの友達だとライブを一緒にやったりコラボレーションしたりするとその過程で問題が起きたりして関係性がおかしくなっちゃうこともあるんじゃないかと思うんですが。その辺りのバランス感ってみなさんどうされてるんですか?
菅原 僕はそもそも関係性がおかしくなりそうな人とは友達にならない!(笑)
夏目 僕はRoji(cero高城晶平が営む阿佐ヶ谷のバー)とかで飲むからわりと関係者友達が多いんですけど。そこはもう「てへぺろ」ですよね。仲が良くても、音楽が好きじゃない友達ももちろんいるんですよ。で、そういう友達にイベントに誘われたりするんだけど、「てへぺろ」ってごまかして去る。音楽は半分仕事としてとらえているから、友人関係は割り切って話すようにしていますね。
―――そうやってかわし続けていると疎遠になっちゃったりしませんか?
夏目 ま、なります。仕方ないっすね、そんな暇じゃないですし。でも、それって疎遠っていうか…………たとえば、昆虫キッズって仲良くて最高にカッコいいバンドがいたんですけど。そのボーカルの高橋翔とはバンドが解散してからあんまり会わなくなった。でも、会えなくなってもハートが大切じゃないですか。気持ちが通じ合ってる……って勘違いしてることが大事じゃないですか?
―――離れているとなかなか「気持ちが通じ合ってる」って思えることって少なくなってくると思うんですが。
夏目 吉本隆明いわく、青春時代って言うのは「友達のことをどれくらい信用していいのかを実験していく期間」って言ってたらしくて。その実験期間を経ている人は、やっぱり信頼度が高い。たとえば、メンバーなんかはもう10年以上実験しているわけだから、もちろんそうなわけです。別に疎遠になってもそういう実験をお互いにした人たちはずっと友達なんだと思います。だから、僕にとっては友達と会うことはあんまり価値がないっていうか。
―――そうすると友人関係も、昔より身近なもの・楽なものの方に絞られてきているって感覚もあるんじゃないですか?
夏目 いや、それは本当にそうっすよね。よくないなぁって思います。免許の更新に行くと、普段出会わない人もいるじゃないですか? こういう人たちと友達になりたいなぁって思いますよね。定時制の高校とか行ったらどうなるのかなと思いますよ。なんの利益を得たいとかじゃないんですけど、そういうところに行っても友達ってできるのかなって。
藤村 自分が普段関わらない、なんでもない人とどこかで通じあう瞬間っていうのはすごい喜びですよね。
―――自分が今までいなかったような空間に突然身を置くと実感しますよね。こんなにも世の中にはいろんな人がいるんだというか。社会人になって友達の数って増えました?
夏目 俺、自分では友達多い方だと思ってるんですけど。正直、高校の同窓会とか1回も出たことないし、大学のサークルも卒業後一度も顔出してない。自分は友人関係をキープしようって感じがあんまりない。自然とそこにいる人が友達っていう。だから増えましたけど、同時に減りましたよ。それってもともと友達じゃなかったってことなのかな?
大塚 いや、そんなこともないでしょ。
夏目 どのくらいの人を友達と思っているかにもよりますよね。僕としては、たとえば飲み屋とかに行って、すげえつまんねぇ話してんなって人とおもしろい人がいたら、やっぱりフィーリングが違うってことじゃないですか。そこが合えばもう友達って感じがしちゃって。そう考えるとわりといますよね。
菅原 僕はそういうタイプじゃなくて、逆にこいつ全然趣味合わねえなってやつの方が仲良くなったり、自分にないものを持っているやつに惹かれるんです。
「シャムキャッツと考える「友達」【後編】男が友達になれる女子って?」へつづく
シャムキャッツ
メンバー全員が高校3年生時に浦安にて結成。2009年のデビュー以降、常に挑戦的に音楽性を変えながらも、あくまで日本語によるオルタナティブロックの探求とインディペンデントなバンド運営を主軸において活動しているギターポップバンド。サウンドはリアルでグルーヴィー。ブルーなメロディと日常を切り取った詞世界が特徴。
代表作にアルバム『AFTER HOURS』『Friends Again』、EP『TAKE CARE』『君の町にも雨はふるのかい?』など。2018年11月には5thアルバム『Virgin Graffiti』発売。2016年からは3年在籍したP-VINEを離れて自主レーベルTETRA RECORDSを設立。2018年、「FUJI ROCK FESTIVAL ’18」に出演。積極的なリリースとアジア圏に及ぶツアーを敢行、活動の場を広げている。