aiko×井口理(King Gnu)「あの日のラジオ」と、私たちの音楽の話
昨年2月に放送された『King Gnu井口理のオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)で、番組のゲストに登場したaiko。生放送中にふたりは「カブトムシ」を披露し、大きな話題を呼んだ。
あれから1年。aikoと井口による対談を実施。“あの日のラジオ”を振り返りながら、ふたりが音楽に対する思いを交わした。
※この記事は『クイック・ジャパン』vol.154に掲載のインタビューを一部抜粋し、本誌では未公開だった写真を加えて転載したものです。
井口くんは人間味のあるイカれた天才(aiko)
──おふたりがお会いするのはいつぶりになるんでしょう。
井口 去年2月にラジオ(『King Gnu 井口理のオールナイトニッポン0(ZERO)』)でご一緒して以来だから、お会いするのは1年ぶりになるんですね。
aiko あの番組はすごい楽しかったです!
井口 楽しかったですよね。トークだけじゃなくて「カブトムシ」も一緒に歌わせてもらって。
aiko ね! 歌い終わったら、ブースの向こうで番組スタッフさんや報道センターの人も拍手してくれて。めっちゃラジオっぽいなと思った。
井口 ラジオをやってて、すごく報われた瞬間でした。そもそもaikoさんが僕の番組に出てくれたのは、岡村(隆史)さんのラジオ(『ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン』)終わりに、廊下ですれ違って挨拶したのがきっかけですからね。その懐の深さが信じられないなと思って。
aiko 会う前から井口くんのラジオは聴いてて。私が「こういう番組をやりたいな」というのを若くしてやってたので、それがすごく羨ましかったです。その後、ゲストに呼んでいただいたり、(ラジオを)何週も聴いていくうちに、これは若さ特有の勢いとかそういうものじゃなくて、努力してやっているんだなと気づいて、より好きになりましたね。
井口 いやあ、恐れ多いです。
aiko まあ、会う前は「aikoとかしょうもな!」と思われてるんちゃうかなって不安やった(笑)。
井口 ははは、言ってましたね。
aiko あるとき、私がラジオで「King Gnuが好きなんです」と言って曲を流したら、井口くんがツイッターで動画を上げてくれて。「aikoさんがKing Gnuを聴いてくれてる!」と言ってくれてたんですけど、これはディスられてると思った。
井口 いやいやいや。
aiko 私の音楽なんて絶対聴いてないと思ってたから戸惑ったもん(笑)。
井口 その動画がちょっとふざけたテンションでしたもんね。
aiko なので会う前はイケイケの印象だったというか、緊張せずにワーっと面白くしゃべる才能を持っている人なのかなと思ってたの。だけどラジオに呼んでもらったときに、「aikoさんを呼んでるのに、全然音楽の話してないじゃん!」とスタッフの人から井口くんが怒られてて。「やっちまったなぁ」みたいな顔をしてるのを見て印象が変わりました。すごいまじめでセンシティブな人なのかもしれないって。
井口 あのころは、精神的にいちばん苦しかったですからね。
aiko ライブをやりながら、ラジオもやるのは大変だよね。
井口 ええ。でも、aikoさんがそこまで裏を読んでくれる方で良かったです。普通だったら「こいつイカれてるな」って敬遠されると思うし。
aiko 「イカれてる」とは思うんですよ。
井口 ははは! それは思うんですね。
aiko 天才の人とか、いき切ってる人って、どこか欠落している瞬間が見えたりするんですけど、井口くんの場合は人間味のあるイカれた天才みたいな。
井口 僕からすればaikoさんは学生時代から慣れ親しんだアーティストなので、会うのが怖かったんですよ。実際に話してみたら印象が変わってしまうかもって。だけど「曲の中にいるaikoさん」のままだった。そこが本当に素敵だと思いましたね。
──「曲の中にいるaikoさん」って、どういうイメージでした?
井口 ずっと恋の曲を歌い続けてるじゃないですか。それでいて「山をいくつも飛び越えていける」とか「海を割って渡っていける」とか、そういう大それたことは言わなくて。「あなたのためなら嫌いな野菜も食べるよ」みたいな無理をしてないリアルな人間らしさを曲にしてる。あくまで実生活に基づいてるところを大切にされてて、それが素晴らしいですよね。
「aikoさんは“歌って楽しい”が全面に出てる」(井口)
──歌い手としてお互いの歌唱力をどのように見てますか?
aiko 井口くんはすごいじゃないですか! この前、テレビで声楽の方たちが「井口くんの声がすごい!」と言ってるのを観て「うんうん! そうやんな!」と深くうなずきました。高音が出せる男性ボーカリストって160センチ台の人が多い印象なんですけど、井口くんの体格であの繊細で力強い声が出ていることも素晴らしいし、ピッチ(音程)も抜群に良い。
「カブトムシ」を歌わせてもらったとき、井口くん自らコーラスを考えてきてくれたんですけど、それがめちゃくちゃメロディにぶつかっているところに当ててくるコーラスやって。私も不協和音というか、ぶつかる音が好きなので「ここに当ててきたんや! すごいな!」と思いました。音大の声楽科出身ですよね?
井口 そうですね。
aiko 何を勉強してたの?
井口 クラシックを歌ってました。
aiko ほら! かしこが出てるもん。
井口 かしこって! 「カブトムシ」に関しては、原曲がかなり巧妙なコード進行とメロディがつけられていたので、コーラスの考え甲斐がありました。
aiko 井口くんのおかげで「カブトムシ」が月日を経て、新しく生まれ変わった感じがしました。本当にありがとうございます。
──井口さんから見た歌手・aikoさんの魅力は?
井口 フェイクの入れ方、ニュアンスのつけ方、声の掠れ方とか技術の高さはもちろんですけど、それ以上に身体性の高さを感じますね。よく「お腹で声を出す」と言いますが、そうじゃなくて全身で振り絞って歌ってる。この人は心から歌うのが楽しいんだろうなって。
プロの方でも小手先で歌う方はいるけど、そうじゃない。技術を超えた「歌ってて楽しい」さまが全面に出てるのがaikoさんだと思いますね。
aiko ありがとうございます。うれしいです。
井口 僕の体格の話をされてましたけど、aikoさんこそ体格以上のエネルギーがあふれてるボーカリストだと思います。そういう瑞々しさを、いまだに保ち続けているのがすごいですよね。
※『クイック・ジャパン』vol.154では、ふたりの対談をロングバージョンで掲載。ここでは公開できなかった「音楽を楽しむためのこだわり」「“歌で突き放す”という意味」など、貴重な対話を収録しています。
aiko(あいこ)
1975年生まれ、大阪府出身、歌手
井口 理(いぐち・さとる)
1993年生まれ、長野県出身。King Gnuのボーカル、キーボード担当。テレビドラマ『MIU404』(TBS)、映画『劇場』『佐々木、イン、マイマイン』に出演し、俳優としても活躍している
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