「もがく工程」や「カッコ悪いこと」を肯定するための映画
――井口さんは、バンド活動の一方、こうして俳優としての活動もつづけられていますが、俳優としての自分を持ちつづけることによって、ご自身のどんな部分が満たされる感覚がありますか?
井口 歌を歌うことと大差がないと言えば大差がないんですよね。どちらも、自分にとっては自己表現だし。ただ、こうしてお芝居をやらせてもらって思うのは、King Gnuの4人の中の自分と、ひとりでお芝居をやっているときの自分って、やっぱりちょっと違うんです。
King Gnuを無責任にやっているつもりはないんですけど、ただ、お芝居では自分と向き合うという点において、より、甘えがないものだなと思います。もっと「自分自身」として向き合うものだし、見え方とかは関係なく、裸一貫でやっている感覚があって。それが恐ろしくもあるんですけど、それでも、やっぱり辞めることができない。きっと、そういうところはドMなんでしょうね(笑)。
内山 みんなそうだよね。モノ作りに向き合っている人たちは、みんなドMだと思う。たぶん。
井口 そうだよね。逆境に自分を立たせていないと不安になってしまうんですよね。どこまでも自分に向き合うのはしんどいことではあるんだけど、それで勝ち取れたものの気持ちよさによって報われるものがあって。それが欲しくて、つづけていくんだよね。
内山 この映画のクラウドファンディングを実施する際に、僕はコメントに「片足は墓穴にありてわれは立つ」と書いたんですけど、本当に、片足をお墓に突っ込んで立っているような感覚があるんですよね。
さっき理が、「前から来たものに対してひたすら向き合う」と言っていましたけど、それは本来なら返さなくてもいいものではあると思うんです。それでも、そこに想いや真剣さのようなものがあるからこそ、返さざるを得なくなる。「そこ」にあるものを捕まえようとした瞬間に呪いは始まってしまうんだけど、それでも、それをやることがモノ作りなんだと思う。それぞれ、音楽や映画や芝居や、表れ方はいろいろだけど、発端はみんな、同じようなことなんじゃないかな。
井口 そうだね。ただバットを振ることは誰でもできるんだけど、全部でホームランを打とうと思うと、めちゃくちゃしんどくて。それでも毎回、本気でホームランを打とうと思っている……そんな生き方だと思う。だからこそ、打てなかったときのしんどさもあるし。
内山 打てたとしても、またすぐ次の打席に立たないといけないし。
――今、自分がつづけるべきことを見つけることができずに悩んでいる若者たちも多いんじゃないかと思うんです。最後に、そんな若者たちにメッセージをいただければ。
内山 ずっと悩みながら生きちゃえばいいんじゃないかなと思うんです。僕はこの『佐々木、イン、マイマイン』という映画は、「カッコ悪いこと」を肯定するための映画だと思っているんです。悩みもがく若者たちに対して、「一緒の気持ちだよ」と言うための映画というか。
僕はもがく工程も、人生においては意味があることだと思うんですよね。もし、もがいた先で、自分が思い描いたものとは違う大人になっていたり、理想とは違う景色が広がっていたとしても、それはカッコいいことだと思う。とにかく、自分の泥臭さや、今ある自分を肯定してあげてほしいと思います。
悩みながら生きることって、悪いことではないと思うんですよ。すぐに結果を出すことが正解ではないし、もし、仮に正解が出てしまったとしたら、その先はつまらないですよね。悩めるのは、幸せなことだと僕は思います。
――井口さんはどうですか?
井口 そうだな……俺は、自分ではのらりくらりと生きてきたなっていう自覚があるんですよね。ただ、それでも振り返れば「それなりに向き合ってきたんだな」って今になって思うこともあるし。難しいんですけど……。
内山 難しいよね。そんな、おこがましいことを言いたいわけでもないし。
井口 うん……まぁ、丁寧に生きていけば、なんとかなるんじゃないですかね? それは自分が作る作品に対してだけじゃなくても、ちゃんと「おはよう」って言うこととか、そういう根源的な話として、人に対する丁寧さは大事なんじゃないかと思います。
それがあればきっとつづいていくし、いい人生になっていく気がする。俺、最近、ちょっと悟り始めたんですよ。何事に対しても丁寧だったら、うまくいくんじゃないかなっていう感じが、最近はしているんです。
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映画『佐々木、イン、マイマイン』
2020年11月27日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開
監督:内山拓也
脚本:内山拓也、細川岳
出演:藤原季節、細川岳、萩原みのり、遊屋慎太郎、森優作、小西桜子、河合優実、井口理(King Gnu)、鈴木卓爾、村上虹郎
配給:パルコ
(c)「佐々木、イン、マイマイン」関連リンク
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