M-1グランプリをきっかけにブレイクを果たしたすゑひろがりず。M-1、キングオブコント、R-1ぐらんぷり(野田)のトリプルファイナリストとなったマヂカルラブリー。そして4年連続キングオブコント決勝進出を果たしたGAG。彼らの共通点は埼玉にある大宮ラクーンよしもと劇場所属の「大宮セブン」メンバーであること。すゑひろがりずインタビューを端緒に、その成り立ちを紐解き、強さと人気の秘密に迫るシリーズ。第2回は、立ち上げから大宮セブンに所属する”大宮の語り部”GAG福井俊太郎に話を聞いた。
あんなに影の団体がいたんだぁ
──昨今、「大宮ラクーンよしもと劇場」を主戦場とする「大宮セブン」に注目が集まっていますが、その理由を福井さんはどうお考えですか?
福井 注目というか、たまに取り上げていただいているくらいですけども。そうですねえ、2年前くらいから第七世代ブームがあって、そろそろ何か新しいものが欲しいなあというタイミングで、僕ら大宮セブンが賞レースで少しずつ結果を残し始めたというのはあったかもしれません。言うたら僕ら、第七世代とは真逆の存在なんで。ずうっと日陰で15年くらいやってきて、ようやくほんのちょっとだけ結果が出てきた芸人たちがいる集団。光が眩しければ眩しいほど影が濃くなると言われる、その影の濃ゆさがほんのちょっとだけ目立ったのかな、って思ったりするんですけどね。「あんなに影の団体がいたんだぁ」って。
──福井さんが大宮セブンについて語ってらっしゃる動画(GAG公式チャンネル【福井トーク企画】『大宮セブンを語ろう』)で、大宮のライブにはほかの劇場とは異なる独特の空気感があるというお話をされていますが。
福井 大宮セブンを立ち上げたのは吉本の社員さんで、初代の大宮の支配人なんです。僕はプロデューサーX氏と呼んでいるんですが、その方が「そういうお笑い」が好きで。
──「そういうお笑い」?
福井 普通の、というと語弊がありますが、お客さんにだけ笑ってもらう笑いではなく、もっと芸人とかスタッフさんとかが笑えるようなもの。そういう、ちょっと変わってるお笑いをその方はされたかったと思うんです。それで自然と「やらせてもらえるんなら、僕らもお客さんに向けてだけじゃない笑いをやらせてもらいたいです」という流れに。
──「お客さんだけでなく、芸人やスタッフも笑う」というのは素敵な響きですが、時にはお客さんが置いていかれるようなことも、あるわけですよね?
福井 それも、確かにあります。特に昔は、お客さんが笑っていない状況がつづいても別に謝るわけでもなく、そのまま突き進んでいっちゃうっていうことはありました。ただ、当時のお客さんはそれを「ほかの劇場で観られない笑い」として見てくれてて。お客さんを含めておかしな集団になってたな、とは思います。
──芸人さん側は「そういう笑い」にすっとなじんだんでしょうか?
福井 というか、X氏がそれに対応できるメンバーを選んだんだと思うんですよ。……対応できる、というとよく言い過ぎですね。そういうことをやらせても文句を言わない、むしろ楽しんでやるようなメンバーを。ただ詳しく言いますと、「初代大宮セブン」があって、途中に「大宮セブンV」という5組の時代があって、次に今の大宮セブンがあるんですけど、今のかたちにぐっと寄ったのは、初代大宮セブンの最後から大宮セブンVあたりからだと思いますね。
──初代メンバーが辞めたあたりから「そういうお笑い」の空気が濃くなった。
福井 初代大宮セブンには先輩方がいらしたので、ヒエラルキーといいますか縦の関係性がしっかりしていて、Aチーム/Bチームのふたつに分かれていたんですよ。当時のAチームはサカイストさん、ブロードキャスト!!さん、犬の心さんで、Bチームにマヂカルラブリーさんとタモンズとえんにちさん。僕らもどっちかというとそっちで。
──動画では「宮戸さんだけAチーム」という話が出ていましたね。
福井 そうですそうです。Aチームは色男の集まりだったんですよ。宮戸は、見た目に反して中身は男前なんです。だから彼はAチームに属していましたし、僕と坂本くんは泥臭いタイプの人間だったので、Bチームの人たちと空気が合った。
──たまたまそのBチームの皆さんが残って。
福井 はい。そのころの空気がそのまま今につながったのかな、と。
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