位置ゲーにRPG要素は必要か。『テクテクライフ』の戦い。開発者・麻野一哉に事情を聞いた

2020.8.19

オレだけは大好きなゲーム

──『テクテクライフ』のクローズドベータテストに参加してどうでしたか?

米光 僕は前作のころから、もっとストイックなゲームになればいいじゃんって思ってたからバッチリだった。反面、大丈夫だろうかと思ったり(笑)。「オレだけが好き」って思われるタイプのゲームになりそう。

でも、もともと麻野さんってそういうゲームばっかり作ってたからね。『弟切草』も「オレ以外はやらなそうだけどオレは大好き」って思ったもん。

麻野 『トルネコの大冒険』を出したときにも、「死んだらレベル0になるのはあり得ない。ただし僕はおもしろいと思った」ってさんざん言われた(笑)。

米光 おもしろいと思ったんだったら、それでいいじゃん(笑)。そこはゲーム作る上で難しいところだよね。

麻野 「最初は何がおもしろいかわからなかったけど、ある日、狂ったように自転車で駆けずり回ってた」みたいな話をよく聞くので、そこに気づいてくれる人が増えてくれれば……。

米光 やる前に「何がおもしろいんだろう」って困惑する感じはすごくわかるけど、「地図を塗る」ってすごい普遍的なおもしろさがあるから、わーっと広まって3年くらい経ったら、「おもしろいのが当たり前」ってことになりそうだよね。

麻野 新しいジャンルになってくれるとうれしいな。『ドラクエ』でRPGをで初めてやったとき、Bボタンでダッシュもできないしジャンプもできないし、なんじゃこりゃって思ってたけど、今となってはRPGのない世界なんて信じられないし。

田村 『弟切草』も「いつゲームが始まるんですか?」って言われてましたからね。

麻野 もう始まってるんですけど……って(笑)。『テクテクライフ』もSNSを見ると「バトルがないんですか?」「本当に塗るだけなんですか?」「それの何がおもしろいんですか?」って言われてたけど、ある種の人にとってはものすごくおもしろいゲームになってると思う。

麻野一哉(左)米光一成(右)
おもしろいと思ったんだったら、それでいいじゃん

目指すはインフラ!

米光 おもしろさがわかるきっかけって些細なことだから、友達がやり始めたらすぐにわかるんじゃない?

麻野 そこでソーシャル要素があったらちょっと広がるかなとは思っていて。ウチの息子とかも「Zenly」(自分の位置情報を共有し合うSNS)ばっかり使ってるんだよ。

田村 ソーシャル要素を入れちゃうと位置がバレちゃうからマズイかも……なんて心配してたのに、「Zenly」は全部公開しちゃってますからね。

麻野 今回「看板」(任意の場所に立ててメモや写真を残せる)という要素を新たに作ったんだけど、この「看板」をユーザー同士で共有できたら、旅に行って「あいつ、ここに来てたんだ」と思ったり、「ここに行けばいい」ってオススメのお店を教え合ったり。関心を持った場所や物を「看板」で共有するSNSみたいな感覚で長く遊べるんじゃないかな。

看板 (c)テクテクライフ 画面は開発中のものです
看板を立てメモや写真を残せる!(C)テクテクライフ 画面は開発中のものです

米光 謎解きゲームとかもできそうだよね。

麻野 オリエンテーリングみたいなものや、地図を使った軽いSNSみたいなものもできると思う。僕の趣味で、あばら屋の写真をとにかく撮って記録してるんですよ。撮っておかないとすぐ消えちゃうから。それを「看板」で場所のデータと一緒に記録できたらいいなと。

田村 実はさっそく、とても有名なIPと箱根の第3新東京市で(笑)スタンプラリー的なコラボをやる予定です。

スタンプラリーもできる(c)テクテクライフ 画面は開発中のものです
スタンプラリーもできる (C)テクテクライフ 画面は開発中のものです

麻野 コラボ企画もそうだけど、前回、課金が回らなくて約半年でサービスが終了してしまったという反省を活かして、「課金をしなくても楽しめるけど、課金すれば“塗り”がはかどって楽しいですよ」っていう方向で調整しています。

長く楽しんでもらえる作りにしているだけに、1〜2年で終了しなくちゃならないという状況は考えたくもない。できれば何十年単位でつづけてインフラにしたいんですよ!

麻野一哉と米光一成
この街を早く塗りたい

位置情報ゲーム『テクテクライフ』 iOS/Androidにて2020年10.1リリース予定。

追記(10.1)
日本をぬりながら、エヴァゆかりの地をめぐる「テクテクエヴァめぐり」発動!

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北村ヂン

(きたむら・ぢん)1975年群馬県生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌を伺うライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れ過ぎています。

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