“ルンバ車”で驚異の点数を叩き出した裏側──エバース佐々木隆史が「やりたい笑い」を確信した大御所の言葉【ソロインタビュー】
文=斎藤 岬 撮影=小見山峻 編集=Quick Japan編集部
2025年、2度目となる『M-1グランプリ』決勝において、エバースは“相方・町田和樹を車にする”という漫才で歴代最高得点に迫る驚異的な点数を叩き出した。そのネタ作り&ボケを担当するエバース佐々木隆史。
相方のキャラクターを最大限に活かし、おもしろいと思うほうへ「行き当たりばったり」でネタを操る佐々木は「ファミレスで隣の席になった兄ちゃんふたりの会話」のような漫才を理想とする。なぜ彼は、このような漫才スタイルへとたどり着いたのだろうか。
本記事では『Quick Japan』vol.184に掲載されたソロインタビューより、一部抜粋してお届けする。
目次
ファミレスで隣の席になった兄ちゃんふたりの会話みたいな漫才が理想

1992年生まれ、宮城県出身。エバースのボケ・ネタ作り担当
──『M-1』で「雑談ファンタジスタ」というキャッチコピーがつけられていたように、エバースさんといえば雑談めいたやりとりで展開していくしゃべくり漫才が大きな武器ですが、このスタイルは佐々木さんの中で最初から理想として存在していたんですか?
佐々木 NSCに入ったときは漫才に種類があることもよくわかってなかったです。ただ、僕はダイアンさんが好きで芸人になったんで、ああいうふうに飄々としててちょっとシュールなボケを言うようなスタイルが「一番おもしろい漫才」ってイメージでした。
──そこからなぜ今のようなスタイルを志向することに?
佐々木 「コント漫才は向いてないな」っていうのが最初の理由でしたね。単純に僕も町田も演技が下手で。あと、しゃべくりのほうが作りやすかったです。会話の中でおもしろくしていくほうがやりやすくて。
──それは展開や応酬を思いつきやすかったという意味でしょうか。
佐々木 器用なヤツやセンスあるヤツは、設定決めてコントに入ったらそこでボケを次々思いつくと思うんですよ。僕はそれができなくて、だったら町田と会話してる中でちょっとおもしろいやりとりをするほうが簡単だった、って感じですかね。
──評価を得られない時期が長かったことが知られていますが、その中でも「この方向でいいんだ」と確信できたタイミングなどはありましたか?
佐々木 5〜6年目ぐらいのときに関根勤さんの前でネタをやるライブがあって。そのときに関根さんが「ファミレスで隣の席になった兄ちゃんふたりの会話を盗み聞きしてるみたいだった」って言ってくれたんです。その前から、なんとなく「俺らはこういう漫才をやりたい」ってものはあったんですよ。でもまだ名前がついていない状態だったのが、関根さんに言語化されたことで「あ、それじゃん」ってなりました。

もう町田を車にするしかない
──「漫才の究極の理想形は立ち話」とよく言われますが、それを知っていたわけではなかったんですね。
佐々木 そうですね、勉強不足で……。
──いや、自力でたどり着いているからこそこんなにおもしろいんだと思います。一方で、エバースさんの漫才は雑談風でありながら、すごく緻密に構成されていますよね。『ルンバ車』でいえば序盤に「エンジンもガソリンもないのに」があって、後半にもう一度そのフレーズが出てくる。ああいうのは先を見越して作っていかないと成立しないように思うのですが、どうやって筋道を立てているんでしょうか。
佐々木 いや、マジで先を見越して作ってないんですよ。「ここが目的地だから」って決めて逆算してるわけじゃなくて、「こっちの道に行ったほうがおもしろいか」って行き当たりばったりで進んでいった結果、どんどん広がっていってめっちゃおもろい最後になった、みたいな感覚で。芸人からも「こことここはどっちを先に考えてるのか」ってよく聞かれるんですけど、ほんとに全然、何も考えてないです。
──作る順番としては設定やテーマが最初ですか?
佐々木 完全にテーマからですね。
──『ルンバ車』だと、どこからスタートしたんでしょう。
佐々木 あれはたしか作家さんから指定されたお題でネタを作ることになって「乗り物」ってお題が出たときに「だったら『町田に乗って移動する』とかおもろいかな」と考えたのが最初です。
じゃあ町田を乗り物にするにはどうしたらいいんかな、「明日デートあるけど『車持ってる』ってウソついちゃった」ってなったら「もう町田を車にするしかないから、お願い」ってスタンスでしゃべれるな、って。あとは「いや、レンタカー借りればいいじゃん」「免許持ってないんだよ」って、可能性をつぶしていくような作業ですかね。
──「町田を乗り物にする」が最初なんですね。それはやはり町田さんのキャラクターがあってのことですか?
佐々木 そうですね。町田はもともとあんまりツッコミが得意な人間じゃないんですよ。イジられキャラではあるけどMCタイプではないというか。たとえば楽屋で芸人がしゃべってて、誰かのボケや行動に対して町田が我先にツッコむようなことは一回もないんです。なんだったら、その場でどれだけおもしろいことが起きてても、自分に関係なかったら我関せずで寝たふりするのが町田で。
本当は入りたいけど、自分から入っていって「何? どしたの、お前」って言われたら恥ずかしいから「俺はひとりで生きてます」みたいなふりしてるんです。で、自分に矢印が向いたり巻き込まれたりした瞬間、うれしそうにツッコんでくる。だからそれを漫才でやってる感じですね。とにかく町田がうれしそうにツッコめるネタというか(笑)。「車やって」だったら、「なんでそんなことしなきゃいけないんだよ」ってツッコめるんで。

先輩芸人の背中から学ぶカッコよさ
──昔はシャバい・キモいと思っていたけれど今は許せるようになったものはありますか?
佐々木 あ、それはありますね。当時は嫉妬や僻(ひが)みもあって「人気あるからバトルライブで客票入るだけだろ」とか思ってたのが、「それはそれですごいことだな」と思うようになりました。『M-1』決勝とか目に見えた結果は出てないのに人気あるって、すごいじゃないですか。それも才能だと今となっては思います。
──逆に「カッコいいな」と思える範囲も広がりました?
佐々木 ここ1〜2年でルミネ(theよしもと)とかNGK(なんばグランド花月)、地方とか営業でめっちゃ上の先輩と一緒に出させてもらうようになって、カッコいいなと思うことが増えました。ルミネだったかな、僕らのあとがザ・パンチさんだったことがあって。やらなくてもいいっちゃいいんですけど、そういうときは自分たちがネタ終わってハケてきたら、次の出番の先輩が袖から出ていくまでお見送りするってルールが一応あるんですよ。
それで僕らが袖にいたら(パンチ)浜崎さんが「いや、いいって! 俺ら見たって勉強することねぇだろ」って言ってきて。僕らが「いや、勉強させてもらいます」って言っても「いい、いい」ってずっと言いながら歩いてって、袖から自分たちがお客さんに見える位置に行った瞬間、「どうも~~~!」って全力で手ぇ振りながら出ていったんです(笑)。あの瞬間、めっちゃカッコよかったですね。
──カッコいい背中だ。佐々木さんはそういう振る舞いはあまり得意でないイメージです。
佐々木 そうですね。でも地方や営業のときは昔より手振ったりするようになりました。町田もそういうことをやるタイプじゃないんですよ。基本、スカシ漫才師なんで。でもそういう場って僕らを初めて観る人とか「なんかやってるな」で観てる人も多いじゃないですか。そんな中で、それこそだいぶ上の先輩が手振って出ていってるのに若手の俺らがふたりともスカして「どうも〜」って出ていったら態度悪いかなって思っちゃって。だから最近は元気よくやるようになってます。
──それはもしかしたら、「そういうことをしても自分たちの価値は目減りしない」という確固たる自信や評価がついてきたからできるようになったのかもしれませんね。
佐々木 あー……たしかに。それはあるかもしれないです。

※『Quick Japan』vol.184では、エバースのふたりへのソロインタビューのほか、パーソナリティを務めるラジオ番組『GURU GURU!』(J-WAVE)や5月8日からスタートした全国ツアー『エンタイトルスリーベース』での密着取材、ふたりをブレイク前からよく知る関係者への取材など、ここでは公開できなかったさまざまなコンテンツを掲載しています。
『Quick Japan』vol.184&『ここで1球チェンジアップ』発売中!

サイズ:A5/並製/144ページ
価格:1,650円(税込)
『Quick Japan』vol.184(2026年6月24日発売)には、エバースが表紙&総力特集に登場。“TRUST YOUR FEELINGS.”をテーマに、芸人人生の中のいくつもの分岐で、自分たちにとってリアルであること、向いていること、ダサくないことをその都度選んできた、エバースの研ぎ澄まされた感覚を徹底取材する総力特集になっている。

仕様:四六判/240ページ
定価:1,980円(税込)
エバース佐々木隆史の初エッセイ書籍『ここで1球チェンジアップ』。野球に懸けた青春、夢に届かなかった挫折、目標を失った時間、そして芸人として再び立ち上がっていく日々。もう一度何かを目指したい人の背中を、そっと押してくれるような自伝的エッセイとなっている。
関連記事
-
-
東京よしもとの期待株・大王×ナユタが語る若手芸人の層の厚さ「10年前と今の子はおもしろさが違う」
よしもと漫才劇場:PR -
新人アイドルグループ「RE-GE」白石るり・花井心桜・田崎杏夏、デビューライブ“涙”の理由とは?
株式会社バンダイナムコミュージックライブ:PR -
Omoinotake×マユリカの邂逅と共通点「クラスメイトだったら、同じグループだろうな」【『DAIENKAI 2026』特別企画】
『DAIENKAI 2026』:PR





