26歳、芸歴7年目で『M-1グランプリ』のファイナリストになり、長年、大阪の劇場シーンを牽引してきた、からし蓮根。2025年4月より東京に活動拠点を移したふたりは、再び『M-1』の舞台を目指しながら、これまでとは違う仕事にも挑戦していくという。東京でのブレイクを狙うふたりに、からし蓮根なりの「東京進出計画」を聞く。
からし蓮根
杉本青空(すぎもと・そら/1994年2月2日生まれ。熊本県出身)と伊織(いおり/1993年9月12日生まれ、熊本県出身)によるコンビ。2019年に『M-1グランプリ』で決勝に進出。『第8回ytv漫才新人賞決定戦』『オールザッツ漫才2024 オールザッツネタバトル』優勝。2025年4月より東京を拠点に活動している
芸歴13年目で上京。大阪との違い

──上京して約1カ月。慣れました?
杉本青空(以下、青空) 趣味がゼロなんで、基本家から出ないんですけど、さすがにちょこちょこ出るようになりました。東京は都会という印象ですね。大阪に比べて人と建物が多くて、緑が少ない気がします。
伊織 山手線の駅が全部なんばみたいで、どこに降り立っても楽しいです。今、家が見つかるまでカゲヤマ益田(康平)さんの実家に住ませてもらっていて、毎日のように終電ギリギリまで遊んでます。
──劇場はほぼ行かれましたか。
伊織 行ってないのは沼津だけで、大宮も幕張も行きました。大宮は……遠いです。大阪から行くのと変わらないような気がしますね。関西の劇場と違って、初見で見られてる感じがして、いい緊張感を持ってやってます。
青空 大阪やと僕らのことを知ってて、その上で見てくれている雰囲気だったんです。
伊織 でも逆に大阪の『グランドバトル』は、NGKに入れなかった初見の方も入ってくるんですよ。それが渋谷(よしもと)漫才劇場での『グランドバトル』は初見の方があんまりいなくて、本当にお笑い好きな人が来ているように思いました。芯食った笑いが求められるというか。
青空 シビアというか、ちゃんと見てくれている感じがしましたね。
伊織 ただ、渋谷はハチノス状の形が……。
青空 すり鉢状な。ハチノスは穴だらけになるから。
伊織 どこ見ていいかわからなくて、そこはまだ慣れてないです。
──ほかの劇場はどうでしょう。
伊織 大宮はめっちゃ濃いです。こないだ大阪では絶対ないようなイベントで、ななまがりの初瀬(悠太)さんと勝負して、新鮮で楽しかったです。
青空 東の主人公・初瀬と西の主人公・伊織で、どっちが本当の主人公かを争ってました。
──主人公……。それまでに因縁が?
伊織 まったくないです。
青空 気がついたらその企画ができていて、チケットが売り出されてました。
伊織 僕あんまり大声出さないタイプなんですけど、そこでは大声を出さないといけなくて、さっそくひとつの殻を破れましたね。今まで絡んでこなかった先輩たちと絡んだりできるのは、すごく楽しいです。
──絡んでみて衝撃的な芸人さんはいました?
伊織 益田さんの家に9年間住んでいるドンデコルテの渡辺(銀次)さんが、めっちゃ変な人だと思いました。相方の小橋(共作)ともしゃべったんですけど、「めっちゃ変やんな」という具体的なエピソードがあるわけじゃないから困るって。昨日も自分が出てるライブの映像を「めっちゃウケた」と、ずっと観てました。
青空 「これが変で~」というエピソードでもないな。たしかにむずい。
伊織 お風呂に入るからって追い焚きをするんですよ。でも、もう1回追い焚きをしないといけないぐらい、お湯がぬるくなってからお風呂に入ってました。
青空 絶妙やな。
大阪で人気だったあのライブが東京でも…
──舞台で変化はありました?
伊織 他事務所のライブにも行くようになりましたね。
青空 たしかにそれは大阪では経験しなかったやつです。
伊織 この間、初めてカナメストーンさんと絡ませてもらったんです。裏でも舞台と同じ感じで、すぐに仲よくなれそうな雰囲気がありました。
青空 あと誰やったっけ、女子高生トリオみたいな……。
伊織 コンビでしょ。ラブリースマイリーベイビー。小学生くらいの。
青空 そう! ライブに行ったら、ずっと楽屋の端っこにいて、「あれは誰やろう? 芸人さんが連れてきた関係者の可能性もあるな……」と気になってたんですよ。そしたら会話が聞こえて、ほんまに普通の女の子の話をしてました。「帰りに唐揚げ買う~?」「そうする~?」って。新鮮でしたね。
──東京でも珍しい存在ですからね。ライブということでは、大阪でやっていた『劇団伊織座』シリーズがアツいという噂を小耳に挟んだのですが。
伊織 なるほど……。立ち上げたつもりなかったんですけど、いつの間にか立ち上がっていた劇団ですね。
青空 僕は配信で観たりしています。伊織のプロジェクトなんで、僕は関与していません。
伊織 もともと僕が歌舞伎をやりたくて、芸人を集めて歌舞伎をやったんです。そこから『劇団伊織座』が始まって、ヘンダーソンの中村フーさんと『フーとイォリー』という『トムとジェリー』を完コピした無声劇をやったりして、最後は今年、新春初滑り公演『イオリー・オン・アイス』(劇団伊織座presents お正月特別ステージフィギュア公演「イオリー・オン・アイス〜氷上のファンタジー〜」)をやりました。アイススケート風に滑って得点を出すという。
──最後ということは、大阪で完結したんですか。
伊織 そのつもりだったんですが、∞ホールが(渋谷)よしもと漫才劇場になったことによって、そこに所属している僕らが森ノ宮(よしもと漫才劇場)でもライブを打てる状況になってしまったんです。なので、打とうと思ったら打てます。
──もしかすると、あまり乗り気ではない?
伊織 看板役者のドーナツ・ピーナツのピーナツが「やりたくない」と反対しているんですよ。今度、渋谷で『イオリックパーク』というコーナーライブをやる予定(※取材は4月に実施)で、その中から『伊織座』の関東メンバーを選考しようかなとは思っています。

──青空さんはやりたいライブあります?
青空 大阪で『百人組手』というツッコみまくるライブをやったことがあって、それを東京でもやりたいです。ツッコみ続けたら滝のような汗かいて、ちゃんとウケたりスベったりしました。ムチャクチャに追い込まれるのが好きなんで、ドMなのかもしれないです。

背中を押した熊プロの「大阪捨て!」
──この数年、大阪芸人さんがどんどん東京進出していく状況はどう見ていましたか。
伊織 先輩たちがすごい活躍してるなと。見取り図さん、さや香さん……。一緒にユニットライブやっていたマユリカさんが劇的に大ハネして、それはうれしかったし、刺激を受けました。同期の熊プロ(紅しょうが・熊元プロレス)もよく出てますし。
──そういう様子を目の当たりにして焦っていました?
伊織 それはなかったです。大阪ってちょうどいい温度の温泉みたいで、いつまでも浸かっていられるんですよ。
青空 食えてはいたんで。ただ、食えてるだけではありましたね。このままいたら、それが続くだけになりそうな気がして。
──それが上京した一因ですか。
青空 そうですね。若手もいっぱい増えてきたし、僕らもガッと上がってからはだいぶ落ち着いた感じもあって、もともと上京したい気持ちはあったんですよ。あとはもう一度『M-1グランプリ』で決勝進出したら行く考えもあったんですけど、2024年は準々決勝で落ちまして……。
伊織 自分たちの手応えはめっちゃあったんです。
青空 それで「これで準決勝行けへんのか? もう東京行ってまえ!」みたいになりましたね。それこそ準々の配信を観てくれた熊プロは、「めっちゃおもしろかった。東京やったら受かってたで。大阪捨て!」というメッセージを送ってくれましたし。
伊織 「東京でやってたら大丈夫だった」とは、よく言われました。
──それもあって環境を変えてみようと。
青空 はい。12月末ぐらいに決めました。
──去年の年末、『オールザッツ漫才』(毎日放送)のトーナメントで、本格的な漫才をやって優勝したじゃないですか。個人的に相当しびれたのですが、12月末ということはあの優勝が背中を押した?
伊織 あ、それは関係ないです。
青空 あのときはもう決まってました。でも土壇場で獲れてよかったです。大阪で賞レースを総ナメできなかったのが心残りではあったんで。
伊織 全部の賞レースで決勝行ったんです。でもほとんど負けました。
青空 『ABCお笑いグランプリ』も4回ぐらい出たんすけどねえ。獲れたのは『ytv漫才新人賞』だけでした。あと、レギュラー番組もやりたかったですね。よく上京するにあたって、関西のレギュラー番組をリセットするじゃないですか。僕ら、リセットする母体がなかったんで。
──その中で、『オールザッツ漫才』の優勝特番『漫才ぞ』は、「大阪で最後に越えるべき壁である先輩のもとを訪れる」という門出にふさわしい企画でしたね。
伊織 みなさんの前で漫才やって、楽しくやらせてもらいました。
青空 みんなから大変やったやろって言われるんですけど、やってるほうはありがたくて、楽しかったです。タイマンで見る先輩のほうが気まずかったんじゃないですかね。
──ブラックマヨネーズの吉田(敬)さんが特に緊張感あるような演出でしたが。
青空 会うところはめっちゃ緊張しました。でも、最初だけでしたね。お話をさしてもらったら、悩んでることを聞いてくれたりしたんで。
伊織 吉田さんとはそんなに会う機会がないんですよ。笑い飯・哲夫さんとメッセンジャー黒田(有)さんはちょいちょい関西で会うから、別に緊張感はなかったです。
やりたいこと。まずは家探しから

──上京した今後の目標を教えてください。
伊織 僕はまず家を見つけることです。あっ、もうそろそろ19時ですか。今日18時以降に審査の連絡があるみたいで、もう届いているかもしれない。ちょっと確認してもいいですか? (スマホを見て)まだでした……。
──早く決まるといいですね。
伊織 仕事ではテレビにいっぱい出たいです。ロケが好きなんで、ロケに行きたい。
青空 いろいろやってみて、そこから向いてるやつがあればいいなーという感じですね。
──よく東京のほうが仕事の幅が広いと聞くんですよ。大阪にはなかった仕事ってなんですか。
伊織 ギャンブル系が少ないかもしれませんね。競馬、ネットでボートレースの番組はあっても、競輪がないし、パチンコ番組もあまりない。僕はレインボー・ジャンボ(たかお)と仲いいんで、番組で一緒にパチンコ行きたいです。
青空 あと東京やったら、ABEMAにヒップホップ専門チャンネルがあるじゃないですか。僕、ラップ好きなんで、それ系の仕事はやりたいです。
──会いたいアーティストはいます?
青空 ラッパーだと、Jin Doggさんにめっちゃ会いたいですね。ラッパーの方だとまあまあしゃべれますし。アイドルも好きなんですけど、アイドルはしゃべれなくなるんですよ……。ハロプロ(ハロー!プロジェクト)が好きで、1回ラジオに来てくれたことがあったんです。あのときは40分ぐらいトークして、ふた言しかしゃべれませんでした。今やったらもうちょっと話せると思いますが。
──5月には単独ライブ『火の国Start』を控えています。
伊織 上京後初めての東京単独なんで、たくさんの人に観てもらいたいです。
青空 ですね。基本、漫才やります。
──からし蓮根さんといえば漫才ですもんね。大阪芸人さんの単独って、普段漫才が主体でもけっこうコントもやるイメージがあるんです。
伊織 僕らは『キングオブコント』の期間にちょっとやるぐらいです。
──だから『ダブルインパクト』には出ないんですね。
伊織 あれは器用貧乏な人が出る大会なんで。
青空 それは今日ロケで「どう思います?」って聞いたら、(博多華丸・大吉)華丸さんが言ってたやつ! おまえが言うな!

『からし蓮根単独ライブ「火の国Start」』
2025年5月17日(土)配信開始19:00/配信終了予定20:00
オンラインチケット:1,500円(税込)
※販売は5月24日(土)12:00まで
※見逃し視聴は5月24日(土)23:59まで
詳細はこちら
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■キャンペーン応募期間
2025年5月16日(金)〜2025年5月29日(木)■キャンペーン参加方法
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