有吉弘行、土田晃之、劇団ひとりなどが所属する老舗芸能事務所「太田プロダクション」で注目を集めている若手芸人がいる。昨年開催された『第45回ABCお笑いグランプリ』で準優勝した青色1号と、フジテレビの深夜番組『ハチミツ!!』にレギュラー出演中のセンチネルだ。
過去にはアルコ&ピースやタイムマシーン3号なども王者となった、事務所ライブ『月笑』。そのライブで年間優勝をした経験のある2組(センチネルは2023年、青色1号は2024年)。今まさにブレイクの扉が開きかけている彼らの魅力とともに、2組が見据える“未来”を紐解く。
違う種類のクズがそろった青色1号、まじめさを押したいセンチネル
──まずは、自分たちが思う強みや特徴を教えてください。

センチネル
大誠(たいせい/写真左)、トミサット(写真右)によるコンビ。2020年に結成、2023年に太田プロライブ『月笑』年間優勝。2025年3月まで『ハチミツ!!』(フジテレビ)にレギュラー出演。
トミサット センチネルの強みは、僕がまじめなところだと思います。
大誠 ……まじめかなあ?
トミサット ハーフ芸人で史上初なんですけど、目標に向かって真摯なんですよ。『月笑』で年間優勝をしたあと、いろんな現場に行かせてもらって、できたりできなかったりを繰り返してきたんですが、なんでもがむしゃらに取り組んだからこそ、少しだけステップアップできたかなと思っています。
大誠 僕らは多いときに月50本以上出ていたほど、めっちゃライブに出ているんですよ。いろんな場所でネタをやれているのは、トミサットの言う「ステップアップできてる」理由のひとつなのかなと思います。
──青色1号さんはいかがでしょうか?

青色1号(あおいろいちごう)
榎本淳(えのもとじゅん/写真左)、カミムラ(写真中央)、仮屋そうめん(かりやそうめん/写真右)によるトリオ。カミムラと榎本で結成し、2017年に仮屋が加入してトリオに。太田プロライブ『月笑』2024年クライマックスシリーズ優勝。『第45回ABCお笑いグランプリ2024』準優勝。『キングオブコント2022』準決勝進出。日常で起きた出来事を切り取ったコントが人気のトリオ。
仮屋 3人ともバラバラな性格で好きなことも違うので、結果を出せたらそれぞれの需要がバチッとハマり、個々の仕事が増えそうな気がします。
カミムラ 僕は格闘技やアウトドアが好き、仮屋はギャンブル好き、榎本は「ちいかわ」や「ディズニー」が好きなので、(売れたときに個々で)とんでもないことになりそうです。
榎本 深夜稽古をやったり、ライブにいっぱい出たり、定期的に新ネタライブをやったり、コントにストイックなところは強みだと思います。ただ、もちろん課題もあって……。僕ら3人とも“かわいげ”がないんですよ。
特に僕は有吉さんからも番組で言われましたし、森三中の黒沢(かずこ)さんからも「青色1号がもうひとつステップアップするには、榎本くんが変わらないといけない。どこを探してもかわいげがない」とラジオで言われたので、まずはかわいげを出せるようにがんばりたいです。

カミムラ 最近は不仲の解散もありますけど、僕らは各々クズなところがあって、強く言うと強く言い返されちゃうから、お互いビビりながらいいバランスを保っています(笑)。僕は気が強すぎて、榎本は嘘つき、仮屋はクズで女たらしで借金まみれですから。
大誠 仮屋さんだけ数が多いっすね(笑)。
カミムラ 借金の額がすごいし、彼女もいるけど女性関係がだらしない。今は仮屋の借金をもうちょっと増やせないかと目論んでいます。僕らの今の目標は『キングオブコント』優勝なんですが、「借金が1000万円まで行ったら賞金を全部あげる」とは言っていて。その額まで行けば優勝後に「クズ」で出られるじゃないですか。現在は仮屋のクズを育て中です。
仮屋 借金は増やさないですけどね。
賞レースの優勝も遠くはない
──では、客観的な目線からお互いについて思うことを教えてください。
トミサット 青色さんは、カミムラさんを軸にみなさんお笑いに真摯でネタもずっとおもしろい。やってることがブレずに一貫しているし、コンスタントに結果を出しているので、『キングオブコント』で優勝してもまったく違和感がないです。まわりの後輩もみんなそう思ってると思います。
大誠 とはいえ、カミムラさんはときどき後輩のネタをジャマしてます。
カミムラ こういうときは、いいことを言うんだよ。
大誠 (笑)。「この3人、なんでバラバラなのに一緒にお笑いやってんだろう」ってめっちゃ思うんですけど、ぶつかるたびにバラバラな3人が一丸となるので、目標に向かってひとつになれる力をめっちゃ感じます。

──青色1号さんはセンチネルさんのことをどう思っていますか?
カミムラ&仮屋&榎本 ……。
大誠 マジかよ。悪口でもいいからなんかしゃべってくれよ!
カミムラ おしゃれ。
トミサット どこがだよ!
仮屋 女性に人気がある。
トミサット ないよ!
大誠 出待ちナシでいつも直帰するんだから。
カミムラ でも、ハーフ芸人初の『M-1グランプリ』決勝進出者にはなり得るのかなと思います。それぐらいネタが強いです。
仮屋 トミサットは、前に出るし、イジられるし、人気者だし、振ると何かやってくれる絶対的な安心感がありますね。大誠はたまにツッコミを間違えるときがありますけど、それを許せる愛嬌があります。
大誠 (笑)。
榎本 見た目にパワー感があって、兄貴肌の大誠と、後輩に慕われるトミサットで、いい組み合わせだとは思います。ただ大誠はちょっと「口だけ」みたいなところがあります。
大誠 内容が伴ってない(笑)。

あのころよりわかってきたテレビのこと
──これまで活動してきた中で「あのときブレイクのチャンスだったのでは」と思う瞬間はありますか?
トミサット 『アメトーークCLUB』(『アメトーーク!』(テレビ朝日)公式ファンクラブ&動画配信サービス)で配信された「太田プロ若手芸人」企画ですかね。僕たちや青色さんなど太田プロの若手が出たんですけど、たぶんあの瞬間アジアで一番スベッたと思います。あんなに憧れた番組で、あんなに予習もしたのに……。
大誠 トラウマっすね〜。
トミサット あれから番組が観られない(笑)。もう少しうまくやれていたらと思うんですけど、経験としてよかったと思いますし、リベンジはしたいと常々思っています。

カミムラ 僕らが初めてテレビにちゃんと出たのが、『ゴッドタン』(テレビ東京)の「この若手知ってんのか!?2020」でした。「とにかくヤバい芸人部門1位」に選んでいただき、おかわりもあって僕をフィーチャーしてくださる企画も作ってくださったのに、うまく立ち回れなかったんですよ。あのとき、うまくやっていた栗谷(カカロニ)さんは、かなり売れているのに……。
榎本 「この方向なのかも」と思ったんですけど、うまくいかなかったですね。
カミムラ 今もまったくわかってないですけど、あのころより「テレビってこうやるんだな」というのは理解したので、もう一回『ゴッドタン』に出たいですね。
「散るために売れようとしているんじゃないか」
──賞レース、SNS、配信番組の台頭など、変わりつつある今の「お笑い界」についてどんなことを感じていますか?
トミサット 最近のライブシーンは、ほとんどの人がよく言えば「仲よく、楽しく、みんなで切磋琢磨」ですけど、悪く言ったらギラギラ感がない。僕はギラギラするほうが好きなんで、そこで停滞せずゴールを目指すべきかなと思っています。
大誠 変なこと言うツッコミが多くなったなと思います。今って、シンプルにツッコんだら「ダサい」みたいな空気になるんですよ。ボケならまだしも、ツッコミでも変なことを言ったほうがウケる世界はマジで腹が立つので、僕が変えます(笑)。
あとSNSの影響か、弱い立場を演じることがウケやすくなっていると思います。わざとそう装うことでウケようとする人が出てきているので、僕はそうならないようにしたいです。

仮屋 今はちょっとしたことでも大ごとになっちゃう世界じゃないですか。せっかく売れたとしても、過去まで遡って必要以上に晒されることもあるので、もはや僕たちは「散るために売れようとしているんじゃないか」って思うことはあります。
もちろん昔とは価値観が変わっているので当たり前なんですけど、とはいえ今は過剰にコンプライアンスまみれ。このままだとお笑い界が衰退しちゃう危機感があるので「今のうちに早く売れないとな」とは思っていますね。
榎本 今はお笑いライブを主催する方や団体が増えてすごくありがたいんですけど、その数が増えすぎて、人気芸人さんの取り合いになっちゃっているんです。仕事なので仕方がないとは思うんですけど、本当はもっと肩を組んでやったほうがいいのにな、というもどかしさはありますね。
カミムラ 僕らは、テレビに憧れて芸人になったんですよ。最近の芸人はYouTubeやTikTokに活路を見出している人も多いですけど、やっぱり「芸人はもっと強気でいろよ」と思います。テレビを軸にやっている人って本当におもしろいし、あれを目指せばいいのに、みんなブレちゃってるのが寂しい。
──2組が出演している太田プロライブ『月笑』については、どう捉えていますか?

トミサット 勝ち続けないと出演できないこともあり、おもしろい精鋭メンバーがそろっていると思います。だから勝つのもしんどいですし、ライブシーンでも主力の人が集まっていますし、それに今が一番脂が乗ってる時期な気がしますね。「ここで優勝したい」と思えるってめっちゃいいことだと思います。
大誠 「年間チャンピオンに対する注目度が、僕らより青色1号さんが優勝したときのほうが大きくなかったか?」と思うんで(笑)、もう一回優勝したいですね。

カミムラ 今ちょうどメンバーが、学校でいう学年みたいに世代が分かれていて、バランスがいいと思うんですよ。学年でいえば僕らはもう3年の世代ですけど、さすがに居続けるのもうっとうしがられるだけなんで、『キングオブコント』で優勝して売れて早く卒業したいです。
仮屋 『月笑』ってアツくておもしろいし、もっとウケていい若手もいっぱい出てるライブなんです。まずは僕らがもっと人気のライブにしていかなきゃなとは思いますね。
榎本 上位の人はしっかり仕事があるんですけど、そこでコケたら下位に落ちるし、事務所的に売りづらくなるから仕事も減ってしまう。仕事にもつながるぶんがんばれますし、やっぱり油断ができない。『月笑』は、いい戦いの場所だとは思います。
──最後に、今後の展望を教えてください。

トミサット 有名賞レースのタイトルを獲りたいです。「ネタが強いんだぞ」ということを周知したいですね。
大誠 僕らは漫才が多いですけど新ネタライブではコントもやっていますし、これからもライブにたくさん出て、ネタを磨いて、タイトルを獲れるチャンスがあればどんどん狙っていきたいです。
榎本 賞レースのタイトルを獲って、アルバイトをせずにお笑いだけでも食べていけるようになりたいです。
仮屋 岡野陽一さんや鈴木もぐらさんみたいに、お仕事でパチンコが打てるようになりたいですね。
カミムラ 『キングオブコント』で優勝して、マネージャーが推しやすい芸人になることが目標です。
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