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牧場バイトからアイドルへ、かてぃが歩んだ多彩な仕事遍歴

かてぃ

文=安里和哲 撮影=澤田詩園 編集=脇 みゆう


お笑い芸人、アーティスト、俳優など、話題のタレントに「仕事遍歴」を聞くインタビュー連載「求人ボックスpresents Echoes of Career~人気者の仕事遍歴~」

当時なぜその仕事を選び、それがその後の活躍にどうつながっているのか?をテーマに、現在の職業に至るまでの経歴を聞きながら、そこで得たこと、逆境の乗り越え方を紐解く。

今回登場するのはガールズバンド「Haze」のGt&Vo、アイドルユニット「悪魔のキッス」のメンバーとして活躍する、かてぃ。表舞台での活躍だけでなく、衣装や空間作りも手がける多彩な彼女に、数々のバイト経験や、アイドル活動の思い出を聞いた。その仕事遍歴はたしかに、現在のかてぃにつながっていた。

「自分らしく生きるための選択」について語った後編はこちら

動物好きが高じて牧場バイト

かてぃさんはアイドル活動を経て、バンド活動を始め、クリエイティブも手がけています。最初の仕事はなんでしたか?

ずっと牧場のバイトが最初だって言ってきたんですけど、先にコンビニでバイトしてたかもって思いました。高1のとき。

そうだったんですね。

それまで、お金のために働かなきゃいけないって気づいてなくて(苦笑)。子供のときは、お母さんに「あれがほしいからお金ちょうだい」って言ったら3千円とかくれたんですよ。中3くらいになると、さすがに厳しくなって「お金は天から降ってくるもんじゃないんだよ」みたいな方針転換があったけど、「そうなんだ。でも、ちょうだい」みたいな(笑)。

かてぃ

なぜコンビニバイトを始めたんですか。

当時、好きだったでんぱ組.incの最上もがちゃんのマネして、興味本位で引きこもったんです。そうしたら暇だしお金もほしいってなってバイトしました。でもすぐ辞めさせられました。

それはなぜ?

自分だけ毎日ハロウィンみたいに派手な格好してたんです。爪も皮膚まで赤く塗ってたり、メイクもすごくて。もう辞めてくれって感じで言われました(笑)。今だったらそんな格好で接客されたら迷惑なのもわかるんですけど、そのときはなんで受け入れてくれないんだろうって思ってました。そこを辞めてから牧場ですね。

かてぃさんと牧場って、イメージが結びつかないんですよ。

動物、めっちゃ好きです。本当は獣医さんになりたかったし。でも、手術で失敗したら死なせちゃうじゃないですか。それは耐えられないから世話しようって。子供のとき、ウサギと鳥の名前をめっちゃ覚えてて。よく家族で遊びに行ってたアカコッコ館(三宅島自然ふれあいセンター)が好きだった。主にバードウォッチングするんですけど、“鳥マスター”になって。馬も好きで、地元の近くに「ソレイユの丘」っていう牧場があって、乗馬してました。

そんなに生き物と触れ合う子供だったんですね。牧場バイトは肌に合ったんじゃないでしょうか。

それが、動物と触れ合いたいのに、肉を食べさせる側のバイキングのレストランに連れて行かれちゃって、あれ?みたいな(笑)。それで次は業務用のスーパーの面接を受けたんですけど。

それはどうして?

レジ打ち、かっこよくないですか? やってみたかったんですよね。でも面接で「精肉だったら空いてますけど」って言われて、それって牧場のときと一緒じゃないですか(笑)。

動物にメスを入れるのがイヤで獣医あきらめたのに、なぜか肉に近づけられてしまう(笑)。

それで「じゃあ辞めときます」ってあきらめました。

かてぃ

憧れのマルキューバイト

バイトにはなかなか恵まれなかったんですね。

ちゃらんぽらんしてました。で、最初の高校は辞めて、定時制の3年生のときに「ミスiD」に受かったんですよ(※審査員による「大森靖子賞」を受賞)。それで上京して、東京でアパレルのバイトを始めて。ずっと好きだった「バブルス」っていうブランドで、しかもマルキュー(SHIBUYA109)で働けて、びっくりしました。

やっと念願のやりたいことができた。

当時のバブルスは、ポップ派手ギャルって感じでめっちゃ好きでした。それに小学生のとき、プロフィール帳に「将来の夢:マルキューの店員」って書いてたのを、あとで思い出して。「え、叶ったやん」ってうれしかったです。

憧れの場所で働いてみて、実際どうでしたか?

楽しすぎて、仕事って思えなかった。厚底で足は疲れるけど、それも苦じゃない感じ。私生活はボロボロだったんですよ、当時付き合ってた彼氏からDV受けてて。アパレルの仕事が楽しいから、なんとか生きてた感じはあって。結局、生活がめちゃくちゃになって、ちゃんと通えなくなって辞めちゃったんですけど。でも、数カ月しか働けなかったのに、めっちゃ濃かった。1年くらい働いてた感覚です。

楽しかったバイトを辞めなくちゃいけないのはつらいですね。

でもなんかみんな優しかったんですよ。今やってるHazeってバンドも、あのバイト先でできた友達と組んだし。東京の友達っていうと、マルキューの店員してたときに出会った人が今でも多いし。今もファッションの撮影とかでも、そこで働いてたときの知り合いがけっこういて。世間狭いなぁって思ってます。

バブルスでのバイトを最後に、アイドルグループに入るんでしょうか?

そのあとも1回、アパレルやりました。そこはちょっと礼儀とかに厳しい職場だった(笑)。でも、言葉遣いを学べたのはよかったかも。敬語がワンランク上なんですよ。「です・ます」だけじゃなくて……。

「うけたまわりました」とか?

そうそう(笑)。「かしこまりました」とか。そういう言葉があるんだってことを知れたのは、すごいよかった。ちゃんとした言葉を使ったほうがいいときってあるなぁって。

かてぃ

憧れのロリィタアイドルでの挫折

かてぃさんといえば、大森靖子さんが立ち上げたアイドルでの活動が印象的ですが、以前にもアイドル活動の経験があったんですよね。

はい。もともとでんぱ組.incとか、ももクロ(ももいろクローバーZ)が好きで、中学生のときにロリィタアイドルをやりました。『下妻物語』に影響を受けて、ロリィタ着たいなぁって思ってたんですよ。でも高くて、自分では買えないし、お母さんにお願いしてもムリで。しかもそのときのロリィタってルールがめっちゃ厳しくて。

ルールがあるんですか。

たとえば、全身ひとつのブランドで絞らないといけないとか。ミックスして着るとかできなかったんです。うちはそのとき1個だけ、Angelic Prettyっていうブランドのスカートを持ってて。ブラウスセットだったから、それ着てお兄ちゃんの中型バイクのうしろに乗って、『下妻物語』ごっこしながら、アイドルのオーディションを日々探してました。それで受かったんです。

初めてのアイドル活動はどうでしたか?

衣装もブランドでそろえてくれたし、曲もめっちゃよくて、楽しかったです。でも、そのグループのコンセプトに合わせられなかったんですよね。うちは、アイドルになりきれてなかった。特典会もひとりのファンだけがずっと回ってくれる感じで。

それはつらいですね。

ファンが来ないときは、ひとりで立ちっぱなしなんですよ。アパレルのときは厚底でずっと立っててもつらくなかったけど、あのときの特典会は1時間立ちっぱなだけで、けっこう地獄だった。けど、今は経験してよかったなって思います。あのときの感情は今でも思い出すし。自分らしくいられる場所でがんばるのが大事だし、うちのところに来てくれるファンの人は大事にしたいなって、今も思います。

かてぃ

かてぃ
ガールズバンド「Haze」のGt&Voを務める。戦慄かなのとのアイドルユニット「悪魔のキッス」としても活動している

【後編はこちら】「自分勝手でも自分の人生を突き進んで」かてぃが語る、仕事と人生の選択

<「求人ボックスpresents Echoes of Career~人気者の仕事遍歴~」>
お笑い芸人、アーティスト、俳優など、話題のタレントに「仕事遍歴」を聞くインタビュー連載。
当時なぜその仕事を選び、それがその後の活躍にどうつながっているのか?をテーマに、現在の職業に至るまでの経歴を聞きながら、そこで得たこと、逆境の乗り越え方を紐解く。

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安里和哲

(あさと・かずあき)ライター。1990年、沖縄県生まれ。ブログ『ひとつ恋でもしてみようか』(https://massarassa.hatenablog.com/)に日記や感想文を書く。趣味範囲は、映画、音楽、寄席演芸、お笑い、ラジオなど。執筆経験『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』『Maybe!』..

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