17歳の高校生ラッパー・edhiii boiの野望「いろんな人に勇気を与えたい」

2024.4.18
17歳の高校生ラッパー・edhiii boiの野望

文=折田侑駿 撮影=大橋祐希 編集=森田真規


「おともだち」がTikTok総再生数8億回を超えるなどバイラルヒットを記録し、若い世代を中心に注目を集める17歳の現役高校生ラッパーのedhiii boi(エディボーイ)。

2021年、14歳でSKY-HIが主宰するマネジメント/レーベル「BMSG」のアーティスト契約をつかみ取った彼は、今、どんな野望を抱いているのか。

4月10日に2ndアルバム『満身創意DX』がリリースされたことをきっかけに、音楽との出会いや創作の源、「音楽がどんどん遠のいていっている感覚がある」という現在の心境についてなど、さまざまな話題について話してもらった。

edhiii boi
(エディボーイ)SKY-HI率いるマネジメント/レーベル「BMSG」所属の現役高校生ラッパー。2021年、SKY-HIに送ったデモ1曲で心を撃ち抜き、14歳にしてアーティスト契約をつかみ取り「edhiii boi」と名づけられた。2023年11月にデジタルリリースした2ndアルバム『満身創意』の先行シングル「おともだち」は、TikTok総再生数8億回を超えるなどバイラルヒットを記録。独特の声、ワードセンス、テクニカルなフロウから、ダンスやトラックメイクまでハイレベルでこなす。さまざまな音楽を経由してきたことを感じさせるハイブリッドな音楽性で、唯一無二の存在感を放つ異端児

「やっとここまで来られた」という実感

2022年1月に「NO」でソロデビューを果たしたedhiii boi。翌年3月には1stアルバム『edhiii boi is here』をリリースするなどアクティブな活動を展開し、2ndアルバム『満身創意DX』にも収録されている「おともだち」が、若者世代を中心に大きな話題となっている。今の状況を彼はどのように捉えているのだろうか。

edhiii boi うれしいことに「おともだち」が話題になったことをきっかけに、テレビ出演をはじめとする多くのお仕事をいただけることになりました。でも、驚くほど過密なスケジュールを過ごしていくことになって……。うれしい反面、制作とメディア出演のお仕事を両立させるのは大変ですし、僕の場合は学業もある。今はとにかく冷静に、目の前の一つひとつのお仕事に丁寧に向き合っていこうという気持ちでいます。

edhiii boi まったく想定していませんでした。「おともだち」はすごく個人的な楽曲でもあるので、これが同世代の方々に肯定的に受け止めてもらえている事実がうれしいですね。これまでもオーディエンスの方からのコメントやメッセージには目を通してきましたが、ここまで反応を体感することはありませんでした。『沼にハマってきいてみた』(NHK)に出演した際、番組が密着したファンの方の姿を見て、かつて僕が音楽に救われたように、今の僕の音楽に救われている人がいるのだとわかりました。誰かが日々を過ごしていく上での活力になることができるのなら、こんなにうれしいことはないです。

edhiii boi こうして僕のことを知ってくださる方や音楽を聴いてくださる方が一気に増えたことに関して、まわりの方々からも「すごい勢いだね」と言われます。でも僕は幼いころに音楽と出会い、そこからずっと続けてきた自負があります。キャリア的には10数年やっているので、まだ17歳とはいえ、「やっとここまで来られた」という実感のほうが強くあるんです。

edhiii boi / おともだち -Lyric Video-

チャレンジングな姿勢が色濃く出た『満身創意DX』

2023年11月に配信リリースされた2ndアルバム『満身創意』に、新曲「スーパーヒーロー」などの4曲を追加した『満身創意DX』がCDとしてリリースされる。前作『edhiii boi is here』と聴き比べたときに、edhiii boiの明らかな変化を感じられる一作だ。ここには彼のどのような想いが込められているのだろうか。

edhiii boi

edhiii boi デジタルと実際に手で触れられるものとでは、圧倒的な違いがあると感じています。今はスマートフォンさえあれば簡単に音楽にアクセスできますが、再生機器を介してCDで聴く音源は、やっぱり違う。僕自身、小説を読むなら実際に本を手にする行為を大切にしています。すごく意味のあるものができたのではないかと思います。

edhiii boi 『満身創意DX』はかなり模索しながら作ったアルバムです。いろいろなタイプのプロデューサーの方とご一緒し、常にワクワクしながら制作していました。僕の憧れの方々なんです。1日中スタジオにこもって一気に2曲録る日もあれば、何もできずにスタジオをあとにする日もありました。思い返してみれば、僕自身のチャレンジングな姿勢が色濃く出ている作品のような気がします。

edhiii boi 「StAR」はSoundCloudに上げていましたが、あそこだとどうしてもアクセスできないリスナーの方がいたりします。ニーズを考えたとき、アルバムに入れるのがベストかなと。プロデューサーであるKosuke Crane(INIMI)は、初対面のときに「おもしろい人に出会えたな」と思えたフランクで素敵な方です。当初は「StAR」の続編も構想していましたが、続編を出すことでこの曲を伏線のようにしたくない。一曲で魅せられるものになったと思います。

edhiii boi これは「青い春」に続いてhirihiriさんがプロデューサー。「青い春」がとにかく最高で、もう一度ご一緒したいと思ったんです。LA在住の友人がたまたま自宅に遊びに来ていたときに、曲作りをしました。

edhiii boi 「おともだち」のリミックスです。もとは数名のラッパーとマイクリレーをする案も出ていたのですが、MANONちゃんのことが頭に浮かんだとき、これはふたりでやるべきだと思いました。いつか一緒にやれたらという話をしていたので、そのタイミングがやっときたなと。それに彼女がいれば、僕の曲のリスナーとはまた異なる層の方々に「おともだち」を届けられると考えたんです。プロデューサー陣の存在もそうですが、ひとりで閉じこもって創作するのとはまったく違うマインドで作ることができました。

edhiii boi デモの段階では違うことを書いていたので、曲調にしろBPMにしろ、完成したものとはまったく別の楽曲でした。これはこれで「いいね」となったのですが、なんだかしっくりこない。あまり広がっていかない気がしました。そこでパソコン内に残っている過去に作った曲たちをチェックしていたところ、ひらがなで「すーぱーひーろー」と書かれた曲を見つけた。そこから今のかたちになりました。

edhiii boi / スーパーヒーロー (Music Video)

変化する音楽との関係

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折田侑駿

(おりた・ゆうしゅん)文筆家。1990年生まれ。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、文学、服飾、酒場など。映画の劇場パンフレットなどに多数寄稿。映画トーク番組『活弁シネマ倶楽部』ではMCを務めている。

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