「パチンコ屋に行ってるような奴ら」から人気の芸人ふたりのキャスティング


『勇者ああああ』芸人キャスティング会議

文=板川侑右 編集=鈴木 梢


「P1」という言葉をご存知だろうか。ご存知であれば驚きなのだが、これは『勇者ああああ』の中で、ある芸人が発した造語だ。F1層といえば20〜34歳の女性を指すが、P1層とは「パチンコ屋に行ってるような奴ら」を指す。

テレビ東京のゲームバラエティ『勇者ああああ』の演出・プロデューサーである板川侑右氏による連載「『勇者ああああ』芸人キャスティング会議」では、同番組で過去に呼んだ芸人・いま呼びたい芸人とその理由などをお話する。

P1芸人については以前のコラムでも登場しているのだが、今回は言葉の生みの親と、P1芸人の代表格であるもうひとり。『勇者ああああ』ではおなじみとなったふたりのP1芸人についてのお話。

「P1」の生みの親

映画『男はつらいよ』シリーズの寅さんが好きだ。たまにフラッと帰ってきては揉めごとを起こし、場をかき乱したら、多くを語らずまたどこかへふらっと旅に出るどうしようもないおじさん。あまりに自分勝手でロクなことも言わないけれど、いなきゃいないで「おじさん、今ごろ何してるのかな……」なんて心配されたりする不思議な存在。そんなめちゃくちゃだけど変にまじめで人情家なフーテンの寅を見るたびに僕はふたりの“P1芸人”を思い出す。

ハチミツ二郎(はちみつ・じろう)1974年11月20日生まれ。岡山県出身。

ひとり目は東京ダイナマイト・ハチミツ二郎。この人がいなかったら「P1」という言葉は世の中に存在しなかった。というか厳密に言うと現時点でもそんなものはないのだけれど『勇者ああああ』という番組においては間違いなくそれは存在する。

最初にハチミツ二郎が番組に登場したのは「クイズ・クロスフェード」という情報系企画だった。新しいハードが発売された後にリリースされてしまったがために、脚光を浴びることなく歴史に埋もれてしまった名作ソフトを当てるという、まあまあゲーム知識が必要とされるクイズコーナーである。

さっそくキャスティングのため「ゲーム 芸人」でAND検索してみるも、表示されるのはどこかのゲーム番組で見たことのある人ばかり。もうちょいパンチのある人を呼びたいなあと思っていたときにリサーチで挙がってきたのが、SNSで定期的にゲームの話題を出していたハチミツ二郎であった。

金髪、強面、プロレスラーみたいな体型と明らかにカタギには見えないその姿。ペンギンズと違ってガチ反社を思わせるその風体はF1層と呼ばれる若い女性たちからの支持がまったくないこの番組にはぴったりだと思った。ただネタがおもしろいのは知っているけど、実際に会ったことがあるスタッフは誰もおらず、収録当日までどんな人かもわからないという正直かなり不安なキャスティングでもあった。

そして迎えた本番当日。MCのアルコ&ピースよりだいぶ先輩であるゲストにいつもとは違った緊張感が流れるなか、オープニングトークでハチミツ二郎は開口一番、番組史に残る名言を放つ。

「俺らF1層には支持ないかもだけど、P1層っていうパチンコ屋に行ってるような奴らからはすごい人気だから」

そのひと言で現場が揺れた。「P1」というこの世に存在しない言葉。自虐の体裁を取りつつもワーキャー人気だけの芸人への批判、ギャンブルに人生の貴重な時間を割く人々への批判、なんなら木曜日の深夜にだらだらテレビを見ているすべての暇人へのいじりまでをも内包した全方位への毒がなんとも心地いい。若手芸人のような数撃ちゃ当たるではなく、確実に刺すその殺し屋のようなお笑いファイトスタイルに僕らは一気に心を持っていかれた。

そのひと言がきっかけで「とりあえず二郎さんに振っておけばなんとか落としてくれる」という風潮が番組のなかにでき上がったため、今ではハチミツ二郎にはあらゆる企画のご意見番、『勇者ああああ』の張本勲としていつも登場してもらっている。多くを語らず、さらっと爆笑を取り、またどこかへと去って行くそのスタンスに僕はある種の「寅さん性」を感じずにはいられない。


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