日常にひそむエンタテインメント「おつとめ狩り」とは何か(パリッコ)

2020.2.28

ちょっと変わり者の地元のダチ「まなマート」

僕の住む東京都練馬区・石神井公園は、スーパー事情にとても恵まれた街だ。
よく利用するのが「ライフ」。広さ、品揃え、価格、どれもちょうどよく、イメージ的には“クラスの優等生”という感じ。

同じ系統でさらなる充実度を誇る北口の「サミット」は、“学年一の優等生”と言えるかもしれないが、どちらかというと南口で買い物をすることのほうが多いので、行く頻度はそんなに高くない。

同じ北口でも、駅目の前の「クイーンズ伊勢丹」は、独自性が高いのでよく行く。その名のとおりの“お嬢様”というイメージだが、そこは田園調布ではなく練馬のお嬢様。誰にでも分け隔てなくにこやかに接してくれ、お高くとまった感じが一切ないのが素晴らしい。同じ肉でも、いつもより100円か200円多く出してもいいから、ちょっとおいしいものが食べたいな、なんて週末は、真っ先にここへ向かう。

一番新しいのが、駅前再開発にともなって改札の目の前にオープンした「イトーヨーカドー」。広くてきれいで、店内には「築地銀だこ」「京樽」「とんかつさぼてん」といった有名チェーンも出店し、こちらは“できる新任教師”という感じだろうか。

クイーンズ伊勢丹のさらに奥にある「西友」は、もうなくなってしまったけど、実家のある西武池袋線の隣駅、大泉学園にも昔はあって、子供のころ、母親に連れられてよく行った記憶がある。なじみ深いという意味では、“気のいい用務員のおばちゃん”。アメリカ産のステーキ肉が安定して安く、家でステーキ気分のときは西友一択だ。

駅からのアクセスはそんなによくないけど、公園のほうへ下りていった裏手あたりに「アコレ」というスーパーもある。小規模ながら、酒コーナーの業務スーパー的陳列もおもしろく、いつからあるのかもわからない感じも含め、僕にとっては“謎の転校生”といった存在。

そしてもうひとつ、石神井のスーパーを語る上で避けて通れないのが「まなマート」だ。まなマート、ほとんどの方が聞いたことのない名前だと思う。だって、石神井にしかないローカルスーパーなんだもの。

西武池袋線・石神井公園駅前に鎮座するまなマート石神井駅前店。店内にはオリジナルソングや、練馬在住のシンガーソングライター谷修による練馬についての歌がいつも流れている


昭和24年、個人商店「丸正食品石神井売場」として創業したのに端を発し、平成15年に現在の店名「まなマート」になったという、なかなか歴史のあるスーパー。南口を出てすぐの商店街入口付近にあり、有名花形スーパーたちが競い合う石神井の街において、一歩もひけをとることなくにぎわいを見せている。全体的に安くて、鮮魚類にこだわりがあって珍しいものに出会えることも多く、そしてほかにないオリジナリティあふれる惣菜に目尻が下がってしまうような、愛すべき店。“ちょっと変わり者の地元のダチ”といったところか。平日は深夜12時まで営業していて、僕の大好きなタカラ「焼酎ハイボール」シリーズの品揃えが豊富なことから頼りにしている「ローソンストア100」が並びにあるので、コンボで寄れるのも頼もしい。夜中に思い立って「今からちょっと飲まねぇ?」と連絡すると「おう」と応じてくれるような、親しみ深いやつなのだ。

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