ドラマ『ファーストラヴ』に描かれた、女性が覚える違和感の正体

2020.2.24

文=西森路代 編集=鈴木 梢


「男だから、女だから」といった差別的な判断を変えていこうという動きは多い。しかしその理屈は、固有の痛みや傷を都合よく見て見ぬふりすることに使われてはならないだろう。

ライター西森路代のドラマコラム連載「ドラマの奥底」。今回は2月22日(土)にNHK BSプレミアムで放送されたドラマ『ファーストラヴ』に描かれた、多くの人々が持つ記憶の中の違和感について考える。

単なるフィクションの中の他人事ではない

島本理生による直木賞受賞作『ファーストラヴ』がNHKのBSプレミアムでドラマ化された。主人公の公認心理師の由紀を演じるのは真木よう子。彼女が、父親殺害の罪に問われている女子大生の環菜(上白石萌歌)のルポ執筆を依頼されたところから物語はスタートする。

まだあどけない表情のこの女子大生による殺人事件は、世間の注目を浴びる。環菜自身も謎めいており、「動機は見つけてください」「正直言うと……私、うそつきなんです」という言葉を残す。

彼女の周辺を追っていくと、彼女自身の出生に秘密があることがわかる。美術学校の講師をしている父親によって、幼い頃から男子大学生たちの絵のモデルをさせられていること。家庭から、そして父親から逃げ出したくて、男性たちの元に行くしかないこと。彼女はいつも本心を隠しているが、そこにも理由があることなどが見えてくる。

絵のモデルをさせられるシーンでの環菜は着衣であるし、絵を描いている男子大学生たちは「これは芸術であり、性的な目で彼女を一切見ていない」と一般論を言う。彼女が頼る男性たちも、彼女が頼ってきたから受け入れたわけだし、自分は悪いことをしているどころか人助けをしたのだと思っている。

※ 写真はイメージとなります

しかし、これらのシーンは、このドラマを観る女性たちにとっては、単なるフィクションの中の他人事ではなく、かつての自分の心情を思い出すきっかけになってしまう。

たとえば子どものころ、自分や自分の友人が、大人から何気なくさらされてきた視線が、なんでもないことのようでいて、実はなんであったかに気づく瞬間が、多くの人にはあったと思う。子どもだから、それをなんでもないものだと思っていても、振り返って考えると、ものすごく後味の悪い違和感を覚えることがある。

また、自分の意志のつもりでやってきたことは、本当は自分の意志からやってきたのだろうか。そうしないと怖かったから、みんながそうしているから、周囲の期待があったからといった、自分の本意ではないのにも関わらず、知らず知らずのうちにとってきた行動があったことを思い出すのである。

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西森路代

(にしもり・みちよ)1972年、愛媛県生まれ。ライター。大学卒業後、地元テレビ局に勤務の後、30歳で上京。派遣社員、編集プロダクション勤務、ラジオディレクターを経てフリーランスに。香港、台湾、韓国と日本のエンターテイメントについて、女性の消費活動について主に執筆している。

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