ひとつのエンディングを迎えた「キミとボク」のストーリー
グループがそれまでとかたちを変えるとき、歌詞の【キミ】は、ラブソングの普遍とは異なる情緒を編み上げる。
5人での最後のシングル「Life goes on」にも【キミ】というフレーズはあり、
<キミとならalright>
と歌われるが、【ボク】という一人称はない。
<泣き笑い また明日に恋をしよう>
と告げ、
<一人じゃないさ>
とねぎらう。
おそらくこれはラブソングというよりは、感謝の唄であり、そこからはさまざまな想いを感じ取ることができる。
【キミ】がいるから【ボク】がいる。そんなラブソングの世界を生きてきた両者だからこそ、たとえ【ボク】がいなくても、人生はつづく、と伝えられるのだろう。
束の間の別れに際しているからこそ口にできる【キミ】が、ここにはある。【ボク】とわざわざ発語しなくても、想いは込められるし、届けることはできる。信頼関係。【キミ】さえいれば、大切なことはメッセージできる。すべて言語化しなくても、受け取ってもらえる。それこそが、【キミ】と【ボク】ともいえる。
終局だからこそ、主語の不在は感涙を呼ぶ。それでも、人生はつづくのだ。
「Life goes on」と両A面仕様だった「We are young」において、King & Princeは【We】という主語をタイトルに掲げ、曲の中でも歌う。
彼らは、
<君の背中を押すよ>
と口にするが、ここでの【キミ】は、若いころの自分たちのことである。
この曲はもはやラブソングではない。門出の唄であり、主語が主語に語りかけることで、ストーリーは円環を結ぼうとしている。
ベストアルバム『Mr.5』の末尾に収録された新曲「Beautiful Flower」には、過去のKing & Prince楽曲群からさまざまなフレーズが引用されているが、【キミ】と【ボク】が並列化された、
<そう君らしく そう僕らしく>
は特に強く印象に残る。
平野紫耀、岸優太、そして神宮寺勇太へと歌い継がれていく構成それ自体が明確なメッセージとなっており、最終的にはラブソングとして大きな花を咲かせることになる。
「Life goes on」「We are young」「Beautiful Flower」はそれぞれ別の作詞者だが、どの楽曲にも【ストーリー(story)】の一語が含まれており、三部作と呼び得る。【キミ】と【ボク】のストーリーは、今、ひとつのエンディングを迎えた。そんなふうに受け取ることも可能なのである。
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