献身的なJAMと今できる最善を尽くしたJO1
メンバー紹介の映像が流れたあと、暗転したステージの上で客席に背を向け静かに右手を上に掲げる姿が見え、それが始まりの合図だった。一瞬の静寂を挟んで、ダンスブレイクのINTROからJO1のパフォーマンスがスタート。
豆原一成から川西拓実にセンターが移り変わるなど、短い時間でフォーメーションや表情が変わるパフォーマンスに一瞬で目を引きつけられた。今振り返れば新曲「Tiger」をアレンジして作られていたとわかるが、当時は何も知らないながらに大地のうねりや稲妻を連想させるような一種の不安定感のあるサウンドに、現場でもゾクゾクした。
今回のステージで私が“JO1らしさ”を最も感じたのは、INTROから1曲目の「Phobia」に切り替わった瞬間である。合同ライブということもあり、各グループそれぞれ盛り上がる曲を中心にパフォーマンスを行っていた印象だが、激しいダンスブレイクで会場の温度を引き上げたあと、次の楽曲で一気に爽やかな風を吹かせたのはJO1のグループの色をよく表していた。「Phobia」は今回初めて韓国語で披露されたが、事前予告がなかったため、会場では歌い出しの白岩瑠姫のパートから一拍遅れで歓声が上がったことはつけ加えておきたい。
新曲「Tiger」は、キリングパートといえるサビ中の「Tiger」を次々といろんなメンバーが披露していくので、正直、目がいくつあっても足りなかったが、曲の後半部分で獲物を追い詰めるように一歩ずつ前に足を踏み出す金城碧海と、まるで襲われているかのようにあとずさりする豆原一成といった物語性のあるコレオグラフィー(振り付け)が印象的だった。初披露にもかかわらず、曲中に煽りを入れているメンバーもいて、3年間さまざまな経験を積み重ねてきたからこその余裕さえ感じられた。
タイでのライブは観客の穏やかさと熱量の高さが両立されていて、それは初めて経験する感覚だった。全席着席での観覧のため、身長差や体力に不安がある人も安心して参加できるスタイルなのだが、観客の熱気は体の動きやノリというよりは、大きな歓声で伝えるのがタイ流なのである。
満席とはいえない会場の埋まり具合ではあったが、空席を感じさせない力強い歓声が約3時間にわたってすべてのアーティストに送られた。入場の際に飲み物を没収され、場内での水分補給がまったくできない過酷な状況でも、ライブを共に作ろうとする献身的な姿勢に心動かされた。
また、川尻蓮が足を負傷し、大事を取って椅子に座った状態での参加となったが、上半身を大きく使っていつも以上に指先まで意識を張り巡らせた彼らしいパフォーマンスを披露し、ほかのメンバーも一部ダンスのフォーメーションを変更するなど、今できる最善を尽くそうとする彼らの真心が伝わってくるステージだった。