時代を問わず、絶大な支持を得ている「音楽漫画」。2月17日にアニメ映画が公開された『BLUE GIANT』をはじめとする、ヒット作に共通する特徴とは?
目次
ヒットする「音楽漫画」の特徴
日常からバトルまで、多様なテーマで描かれるマンガ。数ある作品の中でも『BECK』『ピアノの森』『のだめカンタービレ』『四月は君の嘘』……など、音楽漫画の勢いとその人気ぶりは周知の事実だ。
2023年2月17日よりアニメーション映画が公開された『BLUE GIANT』は、第20回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で大賞を受賞。現在ではシリーズ累計920万部を突破するなど、近年の音楽漫画を牽引する作品と言っても過言ではない。
音楽漫画というジャンルでヒットする作品には、大きく分けてふたつの特徴がある。
ひとつ目は、夢中にならざるを得ない物語が描かれているという点だ。そもそも、音楽漫画で主題として描かれるのは「音楽の道で生きていく」ということ。正直その道のりは、本編を読まずとも狭く険しいものであると誰もが予想できる。
だが、待ち受ける困難や苦労が多ければ多いほど、そこには唯一無二なドラマがある……そんな期待も相まってか、果敢にも茨の道にチャレンジする主人公たちについ夢中になってしまう。
ふたつ目は、“音”の描かれ方が巧妙であること。前提として、音楽漫画は特に表現力が問われるジャンルだといわれる。なぜなら、“音”は視覚的に表現することが難しいからだ。
だからこそ、巧みな画力で演奏シーンをリアルに描いたり、音を生き物のように表現したりするなど、マンガで描かれる“音”は作者ごとに個性的な意匠が光る。
聞こえるはずがないのに「マンガから音が聞こえてくる」
読者からアツい支持を集めるテーマでありながら、創作の観点で非常に難しいジャンルといえる音楽漫画。その中で、胸打つ作品や名作に触れたとき、読者は決まってこう表現する。「マンガから音が聞こえてくる」と。
当たり前だが、実際にマンガから音が聞こえてくることはない。だが、演奏中の息遣いや音が振動する様子、なだらかにストロークする手首、楽器を縦横無尽に駆け抜けるような滑らかな指先……。確かに、名作といわれる音楽漫画の演奏シーンは現実さながらの躍動感にあふれている。
私たち読者が思わず「マンガから音が聞こえてくる」と形容してしまうのは、各々の作者たちの圧倒的な筆致と表現力のなせる技だ。
しかし、画力や表現力だけではなく、ほかにも理由があるように思う。
『BLUE GIANT』に見る、読者が“音”を感じる瞬間
たとえば、冒頭で挙げた『BLUE GIANT』もまさに「音が聞こえるマンガ」と評されている作品のひとつだ。
中学のときに聴いたジャズの生演奏に心を打たれた主人公・宮本大。そこから彼はまったくの初心者ながらも世界一のジャズプレイヤーを目指し、ジャズにすべてを懸けてただひたすらまっすぐに突き進んでいく。
そんな大は、ジャズを好きな理由についてこう語る。
ジャズは感情の音楽なんだ。すげえプレーヤーの音やメロディには感情がもろに乗っかってる。うれしくても、悲しくても、どんな気持ちも音に込められるんだ。
『BLUE GIANT』1巻 5話より
そのセリフを体現するかのように、大の演奏シーンは全身全霊を絞り出した表情、圧倒的存在感を放つ佇まいが印象的だ。
そこには、彼がその舞台に至るまでに経験した苦悩、葛藤、あるいは喜びといった、たくさんの感情が満ちあふれていて、すべての物語が鮮明によみがえってくる。
そして、私たち読者はその感情や物語と共鳴した瞬間に、自分の中で音を創造して“音楽を感じている”のではないだろうか。
豪華メンバーが演奏シーンを彩る、映画『BLUE GIANT』
音楽の道で生きていく……本当にそれを実現できるのは、ほんのひと握りの人だけだと私たちは知っている。けれど、音楽への情熱を胸に険しい道も厭わない音楽漫画の主人公たち。
彼ら・彼女たちの歩む道が困難であればあるほど、その物語は私たちの胸を打ち、演奏シーンに感情と音のかたちを見出してしまう。そして私たちはその感動を伝える最大限の言葉として「マンガから音が聞こえてくる」と口にしてしまうのかもしれない。
2023年2月17日より公開された映画『BLUE GIANT』では、世界的ピアニストの上原ひろみ氏が音楽を担当する。また、大のサックスには国内外のトップアーティストが集まるオーディションを経て選ばれた馬場智章氏を迎え、そのほか豪華メンバーが演奏シーンを彩る。
アニメーション映画化によってリアルな“音”を手にした『BLUE GIANT』。マンガとはまた別物のサウンドが味わえるであろう本作を、ぜひ劇場で体感してみてほしい。
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