男性ブランコ「思い出の場所」でラストライブ。独特のおかしみに包まれたふたりの魅力
1月28日(土)、29日(日)の2日間にわたって、3331 Arts Chiyodaにて、男性ブランコによる企画ライブ『ダンブラ大サーカス』が開催された。
2018年と2019年に、3331 Arts Chiyodaにて単独ライブと企画ライブを計5回開催してきた男性ブランコ。今回の『ダンブラ大サーカス』は、3331 Arts Chiyodaが2023年3月末で閉館してしまうため、「最後に何かできないか」ということで行われたとのこと。
本稿では、全5公演のうち、ゲストを呼んで行われた4公演のライブをレポートする。
目次
【ゲスト:うるとらブギーズ回】打ち合わせなしの「幕開け〜!」からスタート
初回となる1月28日(土)13時回は、ゲストにうるとらブギーズを迎えた。
男性ブランコとうるとらブギーズがそれぞれひとつずつネタを行い、最後にコーナーがあるとの説明があり、いざ始まるというタイミングで、平井まさあきが浦井のりひろに、「せっかくだから、『幕開け〜』ってこうやってよ」と、サーカスの幕が開くような動きをしながらムチャ振り。
「幕開けって言ったら始まるんですか?」と不安げな浦井に、「はじま……始まります。大丈夫大丈夫、そこは阿吽の呼吸よ」と平井が答えると、「言いましたね?」と念を押してから「幕開け〜!」と幕が開くようなマイムでライブをスタートさせた。事前に打ち合わせしていないとは思えないくらい、タイミングがばっちりの暗転に、スタッフ陣とのさすがの阿吽の呼吸を感じられる幕開けだった。
男性ブランコのネタは、2019年12月の単独『みかん軸』で披露されたコント。ふたりがどういう関係なのかは説明されないが、作業着を着ていることとセリフから、何かしらの会社か工場での先輩と後輩の関係であることがわかる。
”買い物に行ったのに目的のものを買い忘れた”という、日常でのちょっとしたあるあるに、大げさな会話を組み合わせることで、何か重大な問題が起きているように見えてくるという、その拡張のさせ方が、男性ブランコのコントの魅力のひとつだと感じる。
うるとらブギーズのネタは、ペンションを舞台にしたコント。こぢんまりとした会場に佐々木崇博の声が響き渡り、八木崇の「大きい声やめてください」というセリフが奇跡的にマッチしていた。客席との距離が近いからこそ、ふたりの表情もよく見えて、笑いがどんどん増幅していった。
ふた組によるコーナーでは、2018年3月末から4月頭に行われた単独『Denki Ifuku Yē‐Yē』で行われた「オーブントースターチャレンジ」に4人で挑戦。
これは、オーブントースターの中に、形容詞と名詞がそれぞれ書かれている紙が入っており、そのふたつを組み合わせた設定で即興コントを行うというもの。
制限時間は、平井が適当に回したオーブントースターのタイマーが「チン!」と鳴るまで。「鳴ったあとは絶対にしゃべってはいけない」という平井の説明に、浦井が「鳴ってからしゃべったらどうなるんですか?」と聞くと、「首を廊下に晒します。斬首フォトスポットにします」という衝撃の答えにざわつく3人。
即興コントの設定は、「厳しい居酒屋」「可愛い合コン」「怖がりな実家」「ダンディな引っ越し」。誰が何を演じ何をしゃべるのかわからない状態で、こんなにも笑えるコントをリアルタイムで作っていくふた組からは、『キングオブコント』決勝進出経験者としての実力を存分に感じた。
最後に、2019年11月にこの施設で行った企画ライブ『DanBlaCircus』のために、うるとらブギーズの佐々木が作詞作曲したというテーマ曲を、弾き語りで披露してエンディングとなった。
【ゲスト:トニーフランク回】名前のないジャンル「玉猫」に動揺
1月28日(土)16時回のゲストは、トニーフランク。
公演の説明を簡単にしたあとに、平井が浦井に再度の“幕開け”を要求。「1回目でやったじゃないですか……」と言う浦井に、「じゃあ、2回目〜!で」と返す平井。13時回のゲスト、うるとらブギーズの佐々木の声が大きかったというところから、浦井の大声の「2回目〜!」でライブは無事に始まった。
男性ブランコのネタは、2019年9月の単独『えんがわサイケ』で披露されたコント。最初は、息子がちゃんとし過ぎていてプレッシャーを感じる、と父親が吐露している会話がメインのコントだった。しかし、セリフや声のトーンにより、途中から明確に会場の空気を変えていったところに、男性ブランコのコント師としての力量を感じた。
トニーフランクのネタは、財布を前にして自分の中の天使と悪魔が出てくる様子を、ギターの演奏とものまねで披露。途中、配信での歌ネタの扱いに混乱し、3〜4人やりたかった人が全部飛んだ中、上沼恵美子だけが残ったからできた、という裏話も。
トニーフランクのネタが終わって一度はけると、男性ブランコのふたりがミラーボールを猫にした「玉猫」を持って舞台上で踊るターンに。「玉猫」も『えんがわサイケ』で披露されたもので、最初は当時使われた音源で踊り、途中からトニーフランクの演奏するギターに合わせてのダンスに移った。
終わったあとに、「今のはいったいなんですか?!」というトニーフランクに、「まだ名前のついてないジャンルです」と平井が返したのが印象的だ。
最後は、男性ブランコの単独の音源制作を担当しているトニーフランクによる、過去の単独で使われた楽曲の弾き語りタイム。なかなか人前で演奏する機会がないため緊張していると言うトニーフランクを、「彼は天才なんですよ」と平井が紹介すると、「いやいやあなたが天才なんですよ」とトニーフランクが返すノリが発生。
『栗鼠のセンチメンタル』『てんどん記』『トワイライト水族館』で使われた楽曲、全4曲を披露する間に、浦井も巻き込んだ「あんたが天才」と言い合うくだりが定番化し、エンディングにまでもつれ込んだ。
【ゲスト:ラブレターズ回】「豆もやしの妖精」とのおかしみコント
1月28日(土)19時回のゲストは、ラブレターズ。
今までは男性ブランコふたりでのオープニングだったが、今回は平井の準備が大変なため、浦井とラブレターズのふたりでのオープニングに。
浦井が「3331 Arts Chiyodaでやってきたネタをやってるから、自分たちは懐かしいんだけど……」とこぼすと、すかさず塚本直毅が「音符新規か?」と客席を煽って盛り上げていた。
男性ブランコのネタは、こちらも『えんがわサイケ』で披露された、平井演じる豆もやしの妖精・マメモと、浦井演じるサラリーマン・のりひろの何気ない会話で進むコント。マメモだからこそのフレーズで大きな笑いが起きる一方で、「マメモはおるだけやしさ」「おるだけでいいのよ」「話聞くしか」「それでいいのよ、聞いてくれるだけで」という、ささいなかけ合いが挟まってくる。
マメモというキャラクターがありながら、会話の内容はひどく普遍的な悩み相談であることが、ちょうどよく入り混じり、男性ブランコだからこそ出せるおかしみを感じた。
ラブレターズのネタは、彼女の家に挨拶に行くという設定のコント。気まずい空気の中、溜口佑太朗が演じるクセの強いキャラクターであるエディに、会場の笑い声が止まることはなかった。
最後は、うるとらブギーズのゲスト回でも行われた「オーブントースターチャレンジ」に4人で挑戦。コーナー前に、舞台上をうろうろしながら長い口上を述べる平井に、ソデからは浦井とラブレターズふたりによる「何やってんだ」「呼べよ早く」というヤジが飛んでいた。
今回も、形容詞と名詞が書かれた紙を1枚ずつ引き、その設定で即興コントを行った。即興コントの設定は、「美しいオリンピック」「悪い服屋」「静かなメイド喫茶」。この中のひとつには、ラブレターズのコントでも登場したエディが参加している。
【ゲスト:コマンダンテ回】“木の前で立ち話”しているような漫才を
1月29日(日)13時半回のゲストは、コマンダンテ。
舞台には1本の木が置かれており、それを漫才で使うマイクに見立てて、立ち話をするように漫才を行うというコンセプトだそう。
そんなコンセプトを説明しながら、そのまま漫才に移った男性ブランコ。本当に木の前で立ち話をしているようなナチュラルなかけ合いから、田舎に住むおばあちゃんの家へ遊びに行く体験をする話へ。
男性ブランコの漫才では、彼らのネタの大きな特徴である独特の言葉遣いを存分に味わえる。「孫の気配」「胃袋の収縮具合」など、彼らの漫才以外では出会うことのない表現や、その表現によって見えてくる景色は唯一無二だ。
コマンダンテの漫才は、財布を落としたときに自分の中の天使と悪魔が出てくるというもの。前日のトニーフランクのネタと設定は同じだが、天使と悪魔がさらに細かく分岐していく展開のスピード感とハプニングに客席も引き込まれ、笑いは加速していった。
コマンダンテの漫才が終わると、しばらくしてから、ソデにいる平井による丁寧な口調での謎の演説が始まり、それから男性ブランコとコマンダンテによる不可思議な儀式が行われた。
これは『みかん軸』で行ったものなのだが、コマンダンテのふたりは、平井に「儀式をやるので一緒にやってください」とだけ伝えられただけとのこと。とても描写しにくい儀式の内容のため、いったい何が起きたのかご自身の目で見届けてほしい。
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