猛毒を水だと言って一般人に言葉巧みに売りさばくヒップホップ売人
「深夜とはいえこんなものを電波に乗せていいのか……?」と爆笑しながら何度思ったかわからない。完全なる「イカレラジオ」だった。しかし、ヒップホップの話をしているときのふたりは「マジ」そのもの。
ヒップホップ業界や自分たちの身の回りで何か大きな出来事があれば、ふたりは茶化すこともへり下ることもなくまっすぐ自分の気持ちを話してくれていたし、古今東西の日本語ラップの名曲の魅力を我々素人にもわかりやすい言葉で紹介する「R-指定の日本語ラップ紹介コーナー」は本当に最高だった。このラジオがなければ出会わなかった曲がたくさんある。
また、スペシャルウィークのゲスト回では、Zeebra、般若、ZORN、宇多丸、AK-69、RYO-Z、KEN THE 390、Mummy-D、ファンキー加藤、T-Pablow、YZERR、呂布カルマ、Awich、MC TYSON、SKY-HI、IO、KEIJUと、同年代からレジェンドまでありとあらゆるラッパーがこの番組にゲスト出演しているのだが、およそ深夜ラジオリスナーとは永遠に交わることがないと思っていた強面のラッパーたちが下品で幼稚なこのラジオに降り立った瞬間、その印象がいい意味でガラリと変わっていた。
「ヒップホッパーって、不良でケンカっ早くて、すぐにメンチ切る、野蛮で暴力的ですごい怖いイメージがありますよね。はっきり言いましょう、そのとおりです。でも僕たちみたいな物腰の柔らかい紳士で柔和なジェントルヒップホッパーもいます。おいでよ」
『オールナイトニッポン0(ZERO)』時代のCMの言葉のとおり、アンダーグラウンドでドープなヒップホップを変えようとするのではなくそのままの魅力をリスナーに届ける。自分にとっては「猛毒を水だと言って一般人に言葉巧みに売りさばくヒップホップ売人」がCreepy Nutsで、その売場が『Creepy Nutsのオールナイトニッポン』だった。
しかし、その場がついに終わってしまう。3月以降の自分がどうなっているのか、想像するだけで恐ろしくてたまらない。たぶん「なぁ……cnannくれよ……もっともっとcnannくれよ……頼むよくれよ……」とうめきながらヨダレを垂らして手足を震わせているだろう。それが本当に怖い。