「“氷川きよし”は人生最大の作品です」ラストコンサートでKiinaが明かした活動休止への想い


“氷川きよし”を愛してきたファンに、Kiinaとして思うこと

近年のKiinaの活動に対して、「昔から氷川きよしを応援してきたお年寄りたちはどういうふうに受け止めているのだろう?」と不思議がる声がある。しかし、いち新参ファンとして自分がむしろ気になっていたのは、「かつての氷川きよしを愛していたファンに、Kiinaはどのような感情を持っているんだろう?」ということだ。

過去のライブでKiinaは、「kiiとかKiinaって呼んでほしい。“きよしくん”だと、ちょっとキャラを押しつけられているように感じちゃう」とこぼしていた。その押しつけられてきたものから少しずつ解放されているとはいえ、対・世間には「わかってくれない人に無理にわかってもらおうとしなくてもいい。ありのままで生きればいい」というメッセージを発信できても、自身をデビューから支えてきたファンに向けてまったく同じトーンでまったく同じセリフを言うのは難しいのではないか。

Kiinaにとって、“氷川きよし”は人生最大の作品であり、枷でもある。誇りとやるせなさ、相反する感情がないまぜになった複雑な思いを抱いていることだろう。では、その“氷川きよし”を支持してきたファンのことは……?

リズム歌謡に股旅演歌、近年のロック&ポップス。バラエティ豊かな名曲たちを歌い上げ、いよいよコンサートも終盤だ。改めてKiinaは、歌手業への真摯な気持ちを語った。このような胸の内を吐露し、思わず涙声になる場面も。

「ずっと演歌をつづけていくことを期待されていた方もいると思う。その真心にお応えできず、申し訳ない部分もある」

絞り出すように言ったこのセリフに、そりゃそうだよな、と。悩みながらも、KiinaはKiinaであることを選んだ。この日の衣装の1着、自らオーダーしたという着流しが蓮の花の柄だったことが印象的だ。蓮は泥の中で咲く。Kiinaはそんな蓮の花が好きだという。

最後の曲は、自身が作詞を手がけた「魔法にかけられた少女」。偽りの姿で生きる少女の苦しみ、そこからの新たなスタートを描いた歌を、豪奢なドレス姿で熱唱した。

氷川きよし / 魔法にかけられた少女【公式】

最後の大舞台『紅白』で“新たなるステージへ”

こうして、ファンに別れを告げたKiina。コンサートは今回が最後でも、大晦日には『NHK紅白歌合戦』が控えており、年末の大舞台で「限界突破×サバイバー」を歌う予定だ。昨今、『紅白』に対して「男女で性別を分けるのは時代錯誤ではないか」という声が高まっている。Kiinaも同じ問題意識を持っているのか、2020年末の紅白では「囚われたホワイトkiiから枠を取り払ったレッドkiinaそして全ての差異を超えたゴールデン氷川きよし」をイメージした3種類の衣装を披露した。

今年は紅組でも白組でもない特別枠での出演ということで、また何かKiinaらしいメッセージを発信してくれるのではないかと期待している。『紅白』での特別パフォーマンスのタイトルは「氷川きよし~新たなるステージへ〜」。氷川きよしからKiinaへ。その人は、苦悩しながらも軽やかに飛翔しつづける。

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