大会史上最も熾烈な優勝争いに?『M-1グランプリ2022』ファイナリスト徹底解説

2022.12.15

文=すが家しのぶ 編集=菅原史稀


毎年恒例となっている“お笑い界のビッグイベント”『M-1グランプリ』。去る11月30日(水)に行われた準決勝ではファイナリスト9組が決定、さらに決勝を12月18日(日)に開催することが発表された。

大会史上過去最多となる7261組がエントリーし、例年にも増して熾烈な優勝争いとなることが予想されている2022年の『M-1』。本稿ではお笑い評論家・すが家しのぶが、今大会のファイナリスト全9組について事前解説する。


2年連続決勝進出!真空ジェシカ、ロングコートダディ

『M-1グランプリ2022』決勝進出者発表会見
『M-1グランプリ2022』決勝進出者発表会見

どうも、すが家しのぶです。

今年も『M-1グランプリ』の季節がやってきました。およそ4カ月にわたって繰り広げられてきた激闘の頂点に輝くチャンピオンが、まもなく決定します。日本中のお笑いファンが見守るなか、果たして、優勝トロフィーを手に入れるのはどのコンビなのでしょうか。そんな決戦の日を迎える前に、改めて今大会のファイナリストについて振り返りたいと思います。

まずは錦鯉の優勝で幕を下ろした『M-1グランプリ2021』から、2年連続で決勝進出を果たした、真空ジェシカとロングコートダディの2組です。

真空ジェシカ(左:ガク、右:川北茂澄)
真空ジェシカ(左:ガク、右:川北茂澄)

真空ジェシカはガクと川北茂澄によって2012年に結成。それぞれ別の大学のお笑いサークルで活動していたふたりで結成されたことから、学生芸人出身のファイナリストとして注目を集めました。その笑いのセンスはまさに最新鋭。オーソドックスな漫才の手法で、これまでに見たこともないボケを次から次へと惜しげなく見せてくれます。昨年の戦績は6位。昨年、その手の内を明かした彼らですが、今年はどのような漫才を見せてくれるのでしょうか。

ロングコートダディ(左:堂前透、右:兎)
ロングコートダディ(左:堂前透、右:兎)

ロングコートダディは堂前透と兎によって2009年に結成。2012年に一度コンビを解散していますが、2013年に再結成し、今に至ります。単独ライブではコントを披露することが多く、『キングオブコント2022』のファイナリストにも選ばれています。その芸風をひと言で表すなら“脱力系”。ふたりのゆるやかなやりとりによって生まれる小さなおもしろさが、波紋のように少しずつ広がっていき、やがて爆笑の渦を巻き起こします。昨年の戦績は4位。優勝候補と言われていた芸人たちが予選敗退してしまった状況下で、その芸風と同様、素知らぬふりをしながら優勝をかっさらってしまうのか、気になるところです。

返り咲き組のリベンジなるか?ウエストランド、さや香

つづいては過去に決勝進出の経験がある返り咲き組、ウエストランドとさや香の2組です。

ウエストランド(左:井口浩之、右:河本太)
ウエストランド(左:井口浩之、右:河本太)

ウエストランドは井口浩之と河本太によって2008年に結成。マヂカルラブリーが優勝した2020年大会で初の決勝進出を果たしました。世の中に対する不満や苛立ちを包み隠さず吐き出す、いわゆる“ボヤキ漫才”スタイルのネタを得意とする彼ら。当時、決勝の舞台にもそのスタイルで挑みましたが、結果は9位と惨敗。翌年、2021年大会にも出場しますが、こちらは準々決勝で敗退となってしまいます。もはや浮上することはないかもしれない……とさえ思われていましたが、今回その心配を見事に裏切ってくれました。リベンジが期待されます。

さや香(左:新山、右:石井)
さや香(左:新山、右:石井)

さや香は新山と石井によって2014年に結成。とろサーモンが優勝した2017年大会で初の決勝進出を果たしました。当時、結成3年目の若き才能に注目が集まりましたが、結果は7位と振るわず。その後、2018年大会、2019年大会、2020年大会と出場しつづけますが、いずれも準々決勝敗退という憂き目を見ることになります。そして昨年、2021年大会で4年ぶりに準決勝へと進出。今大会で5年ぶりの決勝進出となりました。決勝の舞台では、きっと長年にわたって苦汁を舐めつづけてきた彼らの熟成された笑いが見られることでしょう。


初の決勝進出①ダイヤモンド、男性ブランコ、カベポスター

残りのファイナリスト5組は、いずれも今大会が初の決勝進出となります。

ダイヤモンド(左:野澤輸出、右:小野竜輔)
ダイヤモンド(左:野澤輸出、右:小野竜輔)

ダイヤモンドは野澤輸出と小野竜輔によって2017年に結成。昨年、年明け直後に放送されている新春特別番組『おもしろ荘』において、優勝を果たしています。過去の予選では、ボケとツッコミの役割を排したトリッキーなスタイルの漫才を演じていた印象が強いのですが、決勝ではどのようなネタを見せてくれるのでしょうか。

男性ブランコ(左:浦井のりひろ、右:平井まさあき)
男性ブランコ(左:浦井のりひろ、右:平井まさあき)

男性ブランコは浦井のりひろと平井まさあきによって2011年に結成。普段はコントを中心に活動しており、『キングオブコント2021』では総合2位の結果を残しました。2022年は月に一度のペースで単独ライブを開催、更にコントに力を入れた活動を行っていましたが、『キングオブコント2022』は準々決勝敗退という結果に。しかし、日本一の漫才を決める今大会において、なぜか初の決勝進出を果たすことに。運命とは不思議なものですね。とはいえ、かねてより漫才師としての評価は高く、昨年大会でも準決勝に駒を進めていました。もしかすると、彼らはコントの王になるよりも先に、漫才のチャンピオンとなってしまうかもしれません。

カベポスター(左:永見大吾、右:浜田順平)
カベポスター(左:永見大吾、右:浜田順平)

カベポスターは永見大吾と浜田順平によって2014年に結成。今年、関西を代表する若手芸人の賞レース『ytv漫才新人賞』『ABCお笑いグランプリ』の2大会において優勝、今まさに勢いづいている関西漫才師のホープといったところでしょうか。過去に両方の大会を制しているコンビは、『M-1グランプリ2018』王者の霜降り明星のみ。このまま、彼らにつづけとばかりに、『M-1』の優勝トロフィーも手に入れてしまいたいところ。

初の決勝進出②キュウ、ヨネダ2000

キュウ(左:ぴろ、右:清水誠)
キュウ(左:ぴろ、右:清水誠)

キュウはぴろと清水誠によって2013年に結成。結成当初はアルファベットの「Q」という名前で活動していましたが、2014年に解散、2015年に再結成したときに現在の「キュウ」の表記へ改めました。ふたりのやり取りの中に生じる違和感の原因がやがて明らかになっていく、謎かけのような漫才を得意とするコンビです。漫才という大衆向けの手法で、作品性の高いネタを作りつづけていることから、一部界隈では「『M-1』で評価されるために存在するコンビ」として囁かれていました。そんなふたりが遂に『M-1』決勝の舞台へと足を踏み入れることになります。

ヨネダ2000(左:誠、右:愛)
ヨネダ2000(左:誠、右:愛)

ヨネダ2000は誠と愛によって2020年に結成。今大会のファイナリストの中では、最年少のコンビです。女性コンビによる決勝進出は、アジアン(05年)、変ホ長調(06年)、ハリセンボン(07年・09年)に続く4組目。復活後の『M-1』では初の快挙となります。形式に捉われない自由な発想と表現力が唯一無二の魅力を放っているふたり。先日、決勝戦が放送された『THE W 2022』でも、そのナンセンスな世界観を余すことなく見せつけていました。そんなふたりの漫才は、決勝戦でどのように評価されるのでしょうか。

敗者復活組の有力候補は……⁉

以上の9組に、準決勝戦で敗退した27組から選ばれる敗者復活組が加わります。

現時点での有力候補は、今大会で優勝候補とされていた東京漫才の雄・オズワルド、息の合った兄弟のしゃべくり漫才が魅力のミキ、他に類を見ない発想のボケが熊本弁で繰り広げられるからし蓮根、強烈な思想が得も言われぬ笑いを生み出すかもめんたる、『キングオブコント2022』王者・ビスケットブラザーズ、ボケとツッコミの和やかな応酬が見た目以上の衝撃を与えるママタルトあたりでしょうか。個人的には、パフォーマンス能力と発想力が共に高水準なケビンスを応援しています。チョキピース!

こちらからは以上です。皆さんが自分好みの漫才師に巡り合えることを心よりお祈り申し上げます。


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すが家しのぶ

(すがや・しのぶ)1985年生まれ、香川県出身。お笑い評論家。フリーペーパー『SHOW COM』誌上でお笑い芸人DVDレビュー『神宮前四丁目視聴覚室』連載(Vol.1~Vol.28)。『立川談志落語集成 1964-2004』土橋亭里う馬、『東宝名人会 立川談志大全集』毒蝮三太夫・野末陳平、各インタビ..

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