『THE W』歴代優勝は「コント」だが、「漫才」の優勝に期待したい

2022.12.8
『女芸人No.1決定戦 THE W』

文=かんそう 編集=鈴木 梢


女性芸人の日本一を決める大会『女芸人No.1決定戦 THE W』が今年も開催。決勝戦は12月10日(土)夜7時から日本テレビで生放送される。カルチャーブログ『kansou』などで執筆を行うかんそうが過去5回の本大会を振り返り、今年の注目ポイントや今後の展望について考える。

『THE W』にしかない最大の魅力

正直『THE W』の印象は、個人的にけっしていいとは言えない。毎年観てはいるものの「審査員の票が蝶となって舞う演出」に代表される絶妙に緊張感を削ぐ演出、点数制ではなくブロックごとの勝ち抜き方式、サポーター芸人という謎の存在などに違和感を覚え、単なるネタ番組として観ればいいのかガチの賞レースとして観ればいいのかわからない、ものすごく微妙な大会だと感じてきた。

しかし、番組公式ホームページに「漫才・コント・一人芝居・モノマネ・などなど面白ければ何でもアリ!女性たちが笑いで激突!」と謳われているように、この世のすべての「お笑い」を並列で競わせるという、ある意味最も挑戦的な大会であることも確かだ。

その難しさに頭を抱えている審査員たちの苦悩の姿はもはや恒例となっているのだが、裏を返せば「この番組でしかできないネタ」をゴールデンタイムの全国放送で披露できるのは『THE W』にしかない最大の魅力だろう。

歴代優勝者のネタはすべて「コント」

たとえばピン芸人のあぁ~しらきは、“女”と書かれた貝殻のブラジャーと“男”と書かれた赤ふんどし姿で「男かな? 女かな?」と祭囃しの音に乗りながら問いつづける意味不明なコントで視聴者に衝撃を与え、9人組アイドルグループのつぼみ大革命はその大人数を活かしたコントで爪あとを残し、Aマッソはプロジェクションマッピングを使った漫才でこれまでのお笑いの概念を破壊した。冷静に考えていったいどうやって勝敗を決められるというのか、こんなものは「料理とサッカーどっちが強いですか?」と言われているようなものだろう。

出場芸人だけでなく、審査員たちが抱えるプレッシャーも計り知れないものがあり、審査は難しい。審査が難しいというのは、どの大会よりも「勝つのが難しい」ということだ。ジャンルがバラバラだからこそ、技術面で測ることは不可能、すなわち純粋な「おもしろさ」のみでしか評価することができない。そして、そのフリーダムさに比例するかのように、出場する芸人たちのネタのレベルは年々恐ろしいスピードで上がりつづけている。ほかの大会では通らないような独創的なネタや、アクの強さゆえに評価されにくい芸人も『THE W』という受け皿があることで輝ける機会を作っているのは、本当におもしろい試みだと思う。

しかし、「なんでもあり」の大会だからこそ「漫才の優勝」を期待している自分もいる。

5回までの歴代優勝者のネタを振り返ってみると、第1回はドラえもんになりきって日常的な愚痴をぶちまけるネタでゆりやんレトリィバァが、第2回はおばさんがおばさんを誘拐するネタで阿佐ヶ谷姉妹が、第3回はジュリア・マイケルズの「Uh Huh」のリズムに乗せて「アッハーン」と踊り狂うネタで3時のヒロインが、第4回は銀行強盗中に支店長に告白する銀行員のネタで吉住が、第5回はカニのストーカーになった中年男のネタでオダウエダがそれぞれ優勝しているが、そのすべてが「コント」だった。

「なんでもあり」がゆえに、初見で分かりやすいインパクトを与えることのできるコントやモノマネはこの大会において有利であることは間違いないが、その中においてマイク一本で優勝をかっさらう姿が見たい。

そして先日、ついに決勝進出芸人12組が発表された。

THE W
『女芸人No.1決定戦 THE W 2022』決勝進出者会見

Aマッソ
エルフ
河邑ミク
さとなかほがらか
スパイク
TEAM BANANA
天才ピアニスト
にぼしいわし
フタリシズカかりこる
紅しょうが
ヨネダ2000
爛々

個人的に注目したいのがよしもと漫才劇場、通称「マンゲキ」に所属している紅しょうが、天才ピアニスト、爛々だ。3組ともここ数年でメキメキと頭角を現しており、漫才の実力はお笑いファンの誰もが認めている。

また『M-1グランプリ』でも決勝進出を決め、独特過ぎる世界観で近年お笑いファンの度肝を抜きつづけているヨネダ2000、ギャルキャラでブレイクを果たしたエルフ、3年連続の決勝進出を果たしたTEAM BANANAとAマッソなど「漫才の大会」として見ても間違いなく最高のメンバーが出そろっている。

果たして勝つのはコントなのか漫才なのか、それともジャンル特定不能のまったく新しいお笑いなのか、放送がいったいどんなテンションで進んでいくのかも含め、いろんな意味で目が離せない。

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