「毎週貯まっていく100時間の音源」「1.8倍速までなら聴取可能」芸人ラジオリスナーが抱える“聴きたい番組が増え過ぎ問題”

2022.10.28


カギを握るのは“時間”と“効率”

現実問題として、どう対処すればいいのか。知り合いのリスナーに意見を聞きつつ、考えてみた。

初手として考えられるのは“時間”。とにかくラジオを聴く時間を増やすことだ。ラジオは“ながら聴き”ができるメディアだから、移動中、家事中はもちろん、食事中、入浴中、排泄中などありとあらゆる状況で強引に時間をこじ開けられるはず。布団に入ってから眠りにつくまでの時間すら惜しい。極端な方向に行けば、睡眠時間を削る、仕事や勉強時間を減らすなんてことも考えられる。当然、家族関係や人間関係に問題が発生する可能性があるが、そのリスクを背負うしかない。

ヘビーリスナーの中には、「ヒマさえあれば闇雲にウォーキングする」「ラジオを聴ける職場・仕事を選ぶ」「ラジオを聴く時間を捻出するために、遠くに引っ越して通勤時間を伸ばす」なんて剛の者もいるらしい。

次に考えられるのは作った時間をいかに消化するかという“効率”。パーソナリティやスタッフに失礼にあたるのは重々承知なのだが、背に腹は変えられない。生放送での聴取を控え、常に音源を録音し、再生スピードを上げて消化するのは今の時代に即したひとつの考え方だと思う。私は普段こそ通常の速度だが、取材前に大量のアーカイブをチェックするときは再生スピードを上げて一気聴きしている。経験的には1.8倍ぐらいまでなら内容もちゃんと追えるはずだ。

CMを聴かないなんてスポンサー不足にあえぐラジオ業界にとってマイナスだし、曲も番組の一部なのだから、本来ならしっかりと楽しみたい。何度も言うようだがそれは重々わかった上での選択肢なのだけれど、意外にも倍速再生で消化している人は少なからずいるようだ。実際に『ANN JAM』やGERAなどには再生スピードを変更する機能がついている。「割り切ってフリートークだけ聴く」「評判がいい回だけ聴く」なんて意見も耳にした。

自分なりの「システム」を構築するのもひとつの手段。「自分が毎週聴いている番組に優先順位をつけ、その順に消化し、週末までに聴けなかったものは無視して翌週に繰り越さない」というかたちで芸人ラジオを聴いている知り合いもいる。「移動中しか聴かない」「車の中でしか聴かない」と決めてしまうのも、今の時代は潔いかもしれない。

「もう一生で聴き切れないぐらいのラジオ音源がある」

私の個人的な対応策としては、「無理やりに取捨選択して、普段聴く番組は抑え目にする」「将来的に聴きたくなったときのために大量に録音しておく」というかたちに一応収まってきたが、果たしてこれでいいのかしっくり来ていないのが現状。毎週100時間近く音源が貯まっているので、問題事を将来に持ち越ししているようにも思え、結局悩みは解消できていない。

ことあるごとに「もう一生で聴き切れないぐらいのラジオ音源がある」なんてぼやいていたら、あるリスナーにこんなことを言われた。「趣味が見つからないと嘆いている人も多いんだから、そんなに楽しいことが山積みになっているなんていいこと尽くしじゃないか」と。そう言われて前向きな気持ちになった。すでに“老後の楽しみ”の準備が完了していると考えれば、うれしい悲鳴ともいえなくはないのだ。

この「コンテンツをどう消化すればいいか問題」は芸人ラジオに限ったことではなく、ラジオ界全体で起こっているし、もっといえば、サブスク文化全盛の今、映画、海外ドラマ、アニメ、音楽などすべてのジャンルにも当てはまることなのだろう。誰もがさまざまなエンタテインメントを横断して消費しているから、問題はさらに複雑だ。現代人はコンテンツの洪水を前にして、どう対応するか常に迫られている。大事なのは時間でも効率でもなく、そんな状況を楽しむ気持ちなのかもしれない。


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村上謙三久_新プロフィール

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村上謙三久

(むらかみ・けんさく)編集者、ライター。1978年生まれ。プロレス、ラジオ関連を中心に活動。『声優ラジオの時間』『お笑いラジオの時間』(綜合図書)の編集長を務め、著書に『深夜のラジオっ子』(筑摩書房)、『声優ラジオ“愛”史 声優とラジオの50年』(辰巳出版)、『いつものラジオ リスナーに聞いた16の..

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