『THE FIRST TAKE』と何が違う? NCT 127、IVE、 ENHYPENが“真の実力”を発揮する、韓国のYouTube音楽コンテンツ

2022.10.19

文=キクチカムサ 編集=菅原史稀


“一発撮りで音楽と向き合う”を標榜した日本のYouTubeチャンネル、『THE FIRST TAKE』。登録者は687万人(2022年10月18日時点)、総視聴回数は25億回にものぼろうとしている。もはや説明不要かもしれないが、ミスが発生することもある一発撮りの臨場感、音楽そのものに集中することができる構成、そしてコンサートはおろかテレビの音楽番組の収録すらできなかったコロナ禍に、爆発的な人気を集めたコンテンツである。

日本で『THE FIRST TAKE』が流行っているように、「ライブ」「臨場感」「生歌」に特化した番組は、韓国にも多い。本稿では、K-POPの曲が好きだけどあまりパフォーマンスは見たことがない、いつも見ているものとはひと味違うパフォーマンスが見たい、という人にオススメのYouTube番組3選を紹介。ぜひイヤフォンやヘッドフォンをつけて視聴してほしい。


ルックスやダンスだけじゃない。K-POPの“歌”にフォーカスしたコンテンツ

ルックスやパフォーマンスといったビジュアル面からK-POPにハマる人も多い一方で、もちろん楽曲も重要なポイントのひとつだ。世の中では「K-POPは口パクなんじゃないの?」という声も上がっているように、確かに韓国の音楽番組は被せ(=もともと収録している歌唱音声を同時に再生させ、パフォーマンスの質を安定させること)で収録される機会も多いことは否めない。しかしこれから紹介する動画を観れば、K-POPアイドルによる“真の実力”が伝わることだろう。

息継ぎの音まで楽しめる『Killing Voice』

最初に紹介するのは、dingo musicチャンネルにて配信されている『Killing Voice』シリーズ。チャンネルの登録者は400万人超、合計視聴回数は16億回ほどだ。

本稿で紹介する動画ではデビュー8年目、日本でのデビューや公演も数多くしているガールズグループ・MAMAMOO(ママム)が出演している。もともとはシンガーソングライターの出演がメインだった同シリーズだが、歌唱力で支持を集めるアイドルが次々と登場、好評を博して以降はアイドルの登場回数も増えている。

百聞は一見に如かず、動画を観てもらえればその実力のほどがわかると思う。見る者を圧倒するパワーのある歌声やメンバー同士のハーモニー、ラップの発音や息継ぎの音など、すべてが高精細。歌声のみならず曲間にメンバーがちょっとおどけてみせる声や笑い声などもクリアに収録されていて臨場感たっぷりだ。

1本の動画はおよそ15~20分ほど、人気曲や代表曲から構成されたメドレー形式(概要欄に曲名のタイムスタンプまでついている!)なので、その歌手のことを知るためにピッタリの番組といえるだろう。

実は筆者も、このシリーズを通してイメージが変わったグループがある。ボーイズグループのNCT 127だ。

ここで披露されている彼らの人気楽曲「英雄; Kick It」は、男女問わずさまざまグループによってダンスカバーされる機会が多いのだが、それゆえに一つひとつのポージングの完成度など、「ステージ上の存在感をいかに発揮するか」を試す楽曲であり、NCT 127に対しても“ビジュアルが強み”という印象を抱いていた。

それがどうだろう、ルックスやダンスパフォーマンスのみならず、ボーカルやラップのスキルまで圧巻ではないか! 「英雄; Kick It」を実際に口ずさんでみると「迫力」「勢い」を出すことがいかに難しいかがわかることと思う。ビートが強く、歌唱においてよりリズム感が必要なヒップホップをベースとした同楽曲を歌唱する彼らを観て、「こんなに聴かせてくれるグループだったんだ」と素直に感動したことを書き残しておきたい。この動画との出会いを通して、各曲の聴きどころがわかり、アルバムなどのオリジナル音源の視聴がさらに楽しくなった。


ゴージャスな生バンドが奏でるグルーヴ!『it’s Live』

つづいて紹介するのが『it’s Live』だ。チャンネル登録者数は124万人、総視聴回数は4億回ほど。この番組の最たる特徴はなんといっても生のバンドによる演奏だろう(一部オケのコンテンツもあるが、ほとんどが生バンドだ)。生演奏ならではのゴージャスな音色、アレンジなど、たとえ音源を聴き込んだ曲であってもまた違った一面を見せてくれる同番組。出演アーティストのオリジナル曲はもちろん、TWICEやBLACKPINKなどK-POPを代表するグループのカバーもあり、その上ガールズグループがボーイズグループの楽曲を披露する機会も数多くある(逆もしかり)。

生バンドだからといって、出演グループが演奏に負けているということはもちろんない。本記事で取り上げるfromis_9(プロミスナイン)が楽曲「DM」を披露した映像の見どころは、メンバー・ハヨンが最終サビで聴かせる超高音のホイッスルボイスだ。音楽番組でも披露することがなかったこのパフォーマンスが見られるのはライブ色の強い同番組ならでは。歌に集中するあまり、ほかのメンバーが中央に集まって抱き合っているところに参加できないシーンすら一発撮りであるがゆえのご愛敬。

また、決まった振り付けを披露する音楽番組と比べてパフォーマンスの自由度も高い。バンドの奏でる音に合わせて自由に動き回り、ノッてみたり、跳ねてみたり、メンバー同士でじゃれ合ったり、時々振り付けどおりに踊ってみたり。普段の音楽番組でいかに調和が取れていて、印象に残り、パーフェクトな姿を見せようとしているか知っているからこそ、単純に音楽を楽しんでいる姿は胸を打つものがある。

美しいアコースティックアレンジで魅せる『リムジンサービス』

最後に紹介するのが、『リムジンサービス』シリーズ。シンガーソングライターのLee Mujin(イ・ムジン)が番組ホストを務め、迎えたゲストによる歌の披露、コラボレーション、そして曲の合間にインタビューが行われる。

この番組で披露される曲の大部分は、キーボード伴奏によるアコースティックアレンジがなされている。楽器の数が少ないぶん、歌声の情報量が多い印象を受ける。キーボーディストに至っては演奏している手しか映らないなど、歌に集中させるための徹底っぷりだ。

ホストであるムジン自身が歌手であることから、発声や声質、歌詞に迫る内容など、インタビューの質がとても高いため、インタビューパートも見ごたえが多く、学びが多い。たとえば、ここで紹介しているIVEの日本人メンバー・レイの登場回では、彼女の歌唱を聴いて、「フレーズ終わりが頬が上がらない口の形の歌詞でも『エ』の形で息を吸うことによって、明るく爽やかな印象が加わる」と分析している。歌を聴いて感動しても、その理由を言語化することができずもどかしさを感じることがあるが、それを紐解いてくれるユニークな司会者だ。

“違い”を楽しむ。『THE FIRST TAKE』へK-POPアーティストが出演する機会も

ここまで3番組を紹介したが、どの番組も音楽に集中させるため、背景となるセットがシンプルであることが『THE FIRST TAKE』との近似点として挙げられるだろう。一方で音楽の構成要素、ライブ性や声、伴奏など、どこにフォーカスを当てるか、どこを強調しているかは番組によってそれぞれ特徴がある。どの番組がいい、どのスタイルが自分に合っているという感覚ももちろんあるだろうが、見比べてみることでさらに音楽の楽しみ方が広がるのではないだろうか。

最近ではKep1erやStray Kids、TOMORROW X TOGETHERなど、主に日本でデビューする/しているアーティストを中心に、K-POPアーティストが『THE FIRST TAKE』に出演する機会も増えている。韓国のコンテンツとは違うアーティストの魅力が見られることも、ファンにとってはうれしい点だ。

家にいながらにして極上のライブを体験できるYouTube音楽コンテンツ。本稿で紹介した3番組は、どれも心からオススメすることができるので、好きなアーティストの出演を探すもよし、目についたものから再生してみるもよし、K-POPを楽しみ尽くしてほしい。


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