「元・社長、現・地下芸人」の神宮寺しし丸。46歳。類を見ない肩書を持つ彼が、学校や職場などでさまざまな悩みを抱え、生きづらさを感じている皆さんが少しでも生きやすくなるような「生き方説明書」なるものを綴る連載コラムです。
空前の大ブームに伴い“サウナ芸人”がテレビや雑誌で活躍するなか、“非サウナ芸人”のしし丸さんも、その世界に足を踏み入れてみたようです。
サウナ童貞、初体験記
ある日、元放送作家で現在はカタギの仕事をする同い年(46歳)の友人から「なかなか予約が取れない人気のサウナの予約が取れたからいこう!」と連絡が。しかし、そのサウナは長野県にあるのだと言います。
僕はサウナ初心者です。
お風呂でも長風呂するとのぼせる僕は、銭湯にサウナがあってもその扉を開いたことがありません。そもそも「一日の疲れをとるのがお風呂。そんな癒しのひとときに、なぜあんな熱い部屋に閉じこめられないといけないのか?」です。しかも、熱い部屋に閉じこめられに長野まで、、、異常者の行動です。
そんな僕の思いをよそに友人は力説します。
そのサウナは長野県の野尻湖にある、その名も「The Sauna」。野田さんという超サウナ好きの人が、本場フィンランドで体験したアウトドアサウナを日本でもという想いで、長野県信濃町に移住しDIYで作ったサウナだと。
確かに、サウナ初心者の僕も思わず興味を惹かれる文言。
さらに友人は“整う”について力説。
サウナ→水風呂→外気浴を繰り返し“整う”と、脳から何かが出て来て“イッちゃう”とのこと。意味が分からないので調べてみたら、“整う”と脳内にβ-エンドルフィン、オキシトシン、セロトニンなどが分泌されるそうな。余計に分からなくなりました。
しかし、サウナとお風呂に入ってさっぱりすることを“整う”だと思っていた僕には、科学的な根拠があるのは驚きで、整ってみたい気持ちを抑えられなくなり、長野へ“イッちゃう”ことに。
ということで、今回は「おじさんふたりのサウナ旅」を書きたいと思います。
友人は、胸に大きく“Saunner”と書かれたTシャツを着てノリノリでこの旅へ臨まれています。まるで好きなバンドのTシャツを着てライブへ行くかのよう。サウナに対して何の思い入れもない僕は白の無地Tシャツ。まさに心境は“無”です。
サウナだけにふたりの間に温度差はありますが、やはり旅は楽しいもの。途中、長野市内にある美味しいお蕎麦屋さんへ寄り道したり、宿泊先へ到着する前にコンビニに寄ってお酒とつまみとカップ麺を買ったり。おじさんふたりのサウナ旅を満喫します。
翌日のサウナの予約は午前10時から。ということでサウナに併設されたペンションのような宿に前日から泊まることにしたのですが、素泊まり。チェックインして、サッとシャワー浴びて、お酒飲んで、カップ麺食べて、即寝。あくまでも目的は明日のサウナなのです。
翌日朝8時起床。ペンションで朝食。鶏のおかゆを食べたのですが、これが思いの外うまかった。昨晩も素泊まりではなく、夕食付ければ良かったと少し後悔。そんなことはどうでもよくて、サウナです。
まず、海パンに着替えます。ここのサウナは男女兼用ですし、サウナへINするまでに、森の中とはいえ屋外を通るので全裸はNGなのです。
僕は海パンを忘れて受付でレンタル。サウナーの友人は当然のようにマイ海パンを持参している。ここでも友人との温度差を感じつつ、海パンレンタル料300円を支払う。少し後悔。そんなことはどうでもよくて、サウナです。脱衣所で海パンへ着替えていよいよサウナへ。
なんとも味わい深い木製の小屋。これが理想を追求して出来た究極のサウナです。否が応でもテンションは上がり、もはやサウナ状態。写真OKとのことでパシャパシャ。
すると、僕らの他に大学生風のカップルふた組が現れます。このサウナには6人で入るらしく、カップル、カップル、おじさんカップルの6人とのこと。急に緊張しだすおじさんカップル。ちなみに女子は水着の上に健康ランドのムームーみたいな服を着ています。ご期待された男性陣、あくまでも目的はサウナです。
係の人から軽くサウナの説明を受け、いよいよサウナの中へ。中には暖炉があり、薪がパキパキと小気味良い音を立てながら燃えています。暖炉の上には石が積まれていて、その焼けた石にバケツの水をすくいかける。それが“ロウリュ”だそうです。聞いたことはあった“ロウリュ”ですが、まさか自分が体験することになるとは。
真ん中に暖炉。その両端がロフトのようになっていて、そこに3人ずつ座ります。座る位置によって温度が違うのでローテーションします。サウナ使用時間は2時間。スタートです。
サウナーの友人いわく「サウナ10分。水風呂2分。外気浴」このセットを繰り返す。すると“整う”のだと言います。
1セット目。時計がなかったので、10分が計れずとりあえず限界までサウナすることに。のぼせやすい僕は3分くらいの時点で限界を感じはじめます。しかし、“整う”ために我慢。
すると、大学生カップルの男が「ロウリュいいですか?」とみんなにひと声かけてからロウリュをはじめました。サウナ初心者の僕が「ダメです」と言えるはずもなく、言われるがままロウリュを受け入れます。
焼けた石にかけた水はたちまち蒸発し、熱を帯びた水蒸気となってすでに限界に達している僕に襲いかかります。ロウリュをした大学生をバレないように睨みながら限界の先へ挑みます。
大学生カップルが続々と離脱していくなか、最後まで残ったのはおじさんふたり。昭和生まれの意地なのか、代謝が悪いのか、皮膚が終わっているのか……。とっくに限界を超えていた僕は最後の大学生カップルが出た直後、後を追うようにサウナから這い出し外へ。サウナの隣には樽の水風呂が用意されていて、そこにズボンと入ります。
これがサウナよりもさらに難関でした。とにかく冷たくて入れない。しかし、“整う”ためにと気合いで樽の中へズボン。そして、2分我慢。水の冷たさを全身で感じ、皮膚が終わってなかったことに安心しつつ、ひたすら我慢。そして、2分経過。黒ひげ危機一発のように樽から飛び出し、外気浴へ。