年齢を重ねるVSinger「花譜」とは何者か? 高校卒業、武道館公演、成長を観測する独自のスタイル

2022.9.7


高校生活、ライブ、そして次のステップへ

その後、花譜はさまざまなバリエーションのオリジナル曲のMVを次々とアップした。高校に入ってからの彼女は、多様なジャンルの曲に挑戦をしている。最近では大森靖子や長谷川白紙などともコラボレーション楽曲を披露しており、今までにまったくなかった新しい一面を観測することができる。

ライブも次々と行われた。2020年3月には配信で1stライブ『不可解』を再構築した『不可解(再)』、10月10日には『不可解弐 Q1』、2021年3月には『不可解弐 Q2』、6月には『不可解弐 Q1:RE-形を失った世界で僕らは-』『不可解弐 Q2:RE -世界線は分岐する-』『不可解弐 Q3-魔法の無い世界-』が開催された。

コロナ禍ということもあって配信ライブも多かったが、その度に新しいバーチャルならではのネタが仕込まれていた。『不可解弐 Q1』では、今までリアル世界にバーチャルな花譜が現れたのに対し、バーチャル世界に生演奏バンドが投影されるという逆パターンで観測者たちを驚かせた。

2022年3月26日。『花譜高校卒業記念配信ライブ「僕らため息ひとつで大人になれるんだ。」』が行われた。「雛鳥」からもう3年。卒業式の日のバーチャルな学校でのライブからスタートし、彼女はライブ中に歩いて校舎の外に出ていく。

「高校生活の3年間は花譜としての活動と、花譜じゃないひとりの高校生としての私を生きました。3年間本当に楽しかったし、いろんなことが一気に変わっていったり、変わっていかなきゃいけなかったりして、目まぐるしくもありました。どこを切り取ってもずっと頭の中にはいつも花譜がいて、それがすごく心の支えになった部分もたくさんたくさんありました。もちろん高校生活は楽しくて。一番は友達ができたことです」

「花譜にならなきゃこんなことは思えるようにならなかっただろうなって感情がたくさんあって。きれいにまとめあげることはできないんですけど、本当にたくさんの方に見守られ、私は3年間の歌を皆さんの前で歌うことができました」

「僕らため息ひとつで大人になれるんだ。」より、花譜のメッセージ

「花譜」は成長していく。「花譜じゃないひとりの高校生」は卒業を迎え、大人になる。「花譜」は日常の映像をこのときは出していない。高校生活を送っていた「花譜」じゃない女性については、観測者は観測することはできない。けれどもその女性による「花譜」としての音楽はしっかり観測できる。これが「花譜」というアーティストの、表現のスタイルだ。

成長を観測することで、存在するもの

8月26日発売の『クイック・ジャパン』vol.162では、花譜、ビジュアルデザイナーPALOW.、音楽家カンザキイオリ、プロデューサーPIEDPIPERのインタビューが掲載されている。高校を卒業するまでの約4年弱、花譜と共に表現をしつづけてきた面々による、成長する花譜との歩みについてたっぷり語られている。

花譜
『クイック・ジャパン』vol.162 花譜インタビューより

花譜はこのインタビューの中で、自身のあり方を改めて明示している。

「歌手とバーチャルシンガーの違いを、私は『もうひとつの身体をもらって生まれ変われること』だと捉えているんです」

アバターを持っている歌い手は、基本そのアバターは自分自身だ。一方「花譜」は本人とイコールではない。イメージする理想の別の存在として生まれ変わった姿だ。

「バーチャルの世界なら自分のなりたいものになることができる。そういった特性があったからこそ、人前に立って話すことが苦手な私が人前でしゃべったり歌ったりできたんですよね」

自身の音楽のあり方について花譜は

「そもそも音楽って誰かに観測されてできるものですよね」

「その聴いてくれている人の数だけ、花譜という物語を解釈する人もいますから、そのぶん世界観というものが広がっていくように感じています」

とも述べている。

高校を卒業したその女性は、VSinger「花譜」となってこれからも成長しつづける。観測者たちはそれを観測して「花譜」の世界観を自由にふくらませる。彼女の声をもとにした人工歌唱ソフトウェア『音楽的同位体 可不』が発売されたことで、ユーザーが擬似的に歌わせることすらできるようになった。フィクションとしてもドキュメンタリーとしても、表現の可能性の幅を大きく広げていけるのはVSingerの特権だ。

今回の武道館ライブは「過去最大にアップデートしたXR LIVE」だとPIEDPIPERが公式サイトで述べており、技術的に新しい挑戦がふんだんに盛り込まれていた。花譜本人と、スタッフの挑戦と、観測者たちの視点によって、大きな成長を遂げた花譜の姿を、まだ観ていない人は配信アーカイブで観測し、花譜の表現の共犯者になってほしい。


『不可解参(狂)』特別再放送・10日間見放題アーカイブ視聴チケット

アーカイブ配信期間:2022年10月2日(日)23:59まで
販売期間:2022年10月2日(日)20:00まで
視聴期間:視聴開始から10日間(240時間)まで
価格:8,500円

※こちらの再放送には特別収録曲(4曲予定)が追加されます。
※ライブ当日(8月24日)の生配信チケットをご購入のお客様は同じシリアルコードにて無料でご覧いただけます。
※アーカイブ用のチケットを追加購入されるとさらに10日間(240時間)ご視聴いただけます。
※2022年9月23日(金)00:00〜2022年10月2日(日)23:59の間に視聴開始したお客様に関しましては、2022年10月2日(日)23:59までが視聴期限となります。


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