『藤井風テレビ with シソンヌ・ヒコロヒー』で起きた化学反応

2022.5.15
藤井風

※トップ画像=セカンドアルバム『LOVE ALL SERVE ALL』より
文=かんそう 編集=鈴木 梢


4月23日、30日に放送された藤井風初の冠番組『藤井風テレビ with シソンヌ・ヒコロヒー』(テレビ朝日)。タイトルを目にしたときリアルに「何なんw」と思った。音楽は言わずもがな、音楽以外での藤井風のおもしろさはラジオ『藤井風のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)でも遺憾なく発揮されていたが、地上波のテレビで? 芸人を交えてコントをする? いくらなんでも挑戦的過ぎる。

しかも、その相手がヒコロヒーとシソンヌ、このキャスティングのトガり具合がわかるだろうか。毒々しさと上品さを兼ね備えたコントで衝撃を与えつづけるヒコロヒーと、ブッ壊れたカオスな世界観にもかかわらずエゲツないほどの演技力で沼に引きずり込むシソンヌ、言ってしまえばそれぞれが「完成」された圧倒的個性を持っている。実際もっとポップな「やりやすいコント」をする芸人はたくさんいるのに、この2組をチョイスするアグレッシブさに震えが止まらない。その中に藤井風という今最も光っているダイヤの原石を投入する。本当にどうなるか想像もつかなかった。


藤井風テレビで起きていたこと

が、その心配はまったくの杞憂だった。4人の個性がぶつかり合った結果とんでもない化学反応が生まれていた。一見、全2回の放送を2枚組のCDに見立て、1枚5曲(5ネタ)の計10ネタを披露するというおしゃれスタイルなのだが、フタを開けてみるとCD再生よろしくコント後の余韻はほぼなく異常なハイテンポでコントが披露されていく。

滅多にテレビに出演することのない藤井風の番組だ、並みの考えであれば尺の半分をスタジオトークの時間に使い、互いのパーソナルな部分を魅せる構成にしそうなものなのだが、藤井風テレビはそこに逃げることは一切しない。純粋な「ネタのおもしろさ」だけに勝負をかけたとんでもない番組だったのだ。

そして、同時に思ったのが「いや出演者スタッフ全員藤井風のこと好き過ぎるだろ」。コントの設定上、ほとんどのシチュエーションにおいて藤井風は一応「他人」を演じているのだが、いい意味でどれも「藤井風そのもの」でしかなかった。変にキャラクターを作ることなく藤井風が藤井風としてその世界に溶け込めるネタになっていて、なんの違和感もなく「当たり前のように藤井風のコント」を受け入れられた。

たとえば、Disc1.Track2「プロポーズ」では、ドラマのワンシーンに流れるBGMを藤井風がピアノで演奏するも場の雰囲気に合わないめちゃくちゃな選曲で雰囲気をブチ壊してしまうコントなのだが、藤井風が現場監督のシソンヌ長谷川にツッコまれているときの「え……? 私ですか……?」というトボケ顔があまりにも自然過ぎて「絶対普段からその顔してるだろ」と思ってしまうほどだった。

また、ほぼすべてのコントにおいて藤井風の持つ唯一無二の武器「ピアノ」を軸にして構成されており、オリジナル曲はもちろんカバー曲もネタに組み込まれているのだが、その選曲に度肝を抜かれた。

Disc2.Track1「ピアノバー」は失恋しふとりBARに訪れた女性客(シソンヌじろう)に店のピアノ奏者(藤井風)が曲を演奏し傷を癒やすというコント。そこで藤井風が演奏したのが「歌舞伎町の女王」「北の国から」「おどるポンポコリン」「蛍の光」……藤井風ファンはもうお気づきだろう。「歌舞伎町の女王」「おどるポンポコリン」は、藤井風が自身のYouTubeチャンネルで実際にカバーしたもの。しかもこの2曲は藤井風がコスプレをしながら弾き狂う彼のカバー動画の中でも屈指の珍映像として伝説になっており、どういう流れでこの選曲がされたのかはわからないがファンであれば眉唾ものの選曲なのだ。

なんといっても藤井風の魅力をふんだんに「お笑い」に変換しながら完成度の高いコントを作り上げたヒコロヒーとシソンヌはさすがとしか言いようがない。相手が藤井風だろうが自分たちのスタイルを一切崩すことなく容赦なくボケてツッコむ、藤井風を「ゲスト」ではなく対等のコントをする「仲間」として受け入れているのがヒシヒシと伝わってきた。

さらに、この番組はネタだけでは終わらない。ラストには別人のようにキメる藤井風がDisc1では「まつり」Disc2では「青春病」の2曲をそれぞれ披露。コントと歌のマリアージュというこの構成は『SMAP×SMAP』(フジテレビ)を彷彿させ、懐かしさで爆発しそうになった。そもそも「テレビで曲披露」だけでもファンにとっては歓喜なのだが、プロデューサーであるYaffleが共に出演していたのは本当にビックリした。藤井風の全楽曲のアレンジを手がける彼が実際に演奏に参加をする、それだけで激熱極まりない大サプライズだった。「まつり」「青春病」どちらも原曲とは違うアレンジが加えられ、さらにその魅力が引き出されていた。

コントも音楽も、ガチ中のガチのストロングスタイルだった『藤井風テレビ with シソンヌ・ヒコロヒー』。放送を観終わった感想は「やば。」しかない。


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かんそう

1989年生まれ。ブログ「kansou」でお笑い、音楽、ドラマなど様々な「感想」を書いている。