転校生の濱下くん
ある日クラスに、
「濱下くん」という男の子が転校してきた。
転校初日。
濱下くんは、
親の仕事の都合で、地方を転々としていて
よく転校を繰り返していると話していた。
「この学校もいつまでいるか、
わかんないけどね〜」
そう話した濱下くんが、
どこか遠い世界からやってきた大人に見えた。
そして、彼が転校してきて1年半が過ぎたくらいで、また転校が決まったと言う。
自分は濱下くんとはあまり話したことがなかったが、
彼が転校する前日、
なぜだか彼の家に遊びに行くことになった。
「よっちゃん」という友達と2人で、
濱下くんの家に行った。
「いらっしゃーい!」
濱下くんが出迎えてくれる。
3人で、何して遊ぼうかと話していた。
濱下くんは頭が良く優等生だったので、どんな遊びをするんだろうと考えていたら
「はい、これ!」
水鉄砲を、渡された。
意外だった。
3人で、水鉄砲で遊ぶことになった。
家のまわりを、走り回って、相手に思いっきり水鉄砲をくらわせた。
顔に、服に、足に、いたるところに!
「はっ、ひゃは!」
「つべて〜!!」
「あはははは!!!」
3人ともビチャビチャになる。
はしゃぎ回って、
思いっきり相手に水をぶっかける。
後半なんかは、バケツをもって直接ドバッと
水びたしにしたりした。
「はっ、ハっ、ははははは!」
「あはは!!」
「ひゃはははは!」
もう濡れても意味ないくらいにキャッキャして、笑って、濡れて、笑い転げた。
できるだけ、この楽しい時間を延ばそうとした。
夕方になって、
あたりが少しオレンジ色になってきて、
もう少しでこの楽しい時間が終わるのが
3人ともわかっていた。
「ちょっと、タンマ〜!」
よっちゃんがトイレに行っているあいだ、
濱下くんと2人になった。
「また、やりたいなあ〜」
濱下くんが、そんなことを言った。
確かに。
また、この3人で水鉄砲したい。
また、この3人で。
水びたしでビッチョビチョになりたい。
「そうだね、また、やろうよ〜!」
できるだけ大きく、返事した。
「でもさあ、僕転校するから。無理かな。ん〜」
濱下くんがそう言って、笑った。
「あっ、うん、、」
子供ながらに、なんて言っていいのかわからず
あたふたしていると
「もっと早く、仲良くなりたかったね〜」
彼がそう言った。
そりゃそうだ。
こんな楽しいのなら、
もっと早く遊びたかった。
今日遊んで、
明日にはいなくなる濱下くんの感じが、
残念でならなかった。
「でもさ、今日めっちゃ楽しかったから、このことは忘れんちゃ」
なんとかしようとしたら、
濱下くんは
「忘れるよ〜」
そう言って、笑っていた。
日々は過ぎていく。
それから、
濱下くんの転校先の電話番号を教えてもらい、
クラスの連絡網に書き足した。
彼とは転校後も、連絡を取る仲になった。
と言っても、電話したのは最初の5、6回くらい。
他愛もない話、学校での話。
お互いがまったく違う学校、クラスの友達も違うので、会話はズレていく。
そのうち、
お互いを忘れていってしまったのだろう。
その電話で、
「ジム・キャリー」の話をしたのを覚えている。
面白いんだよ〜!!
もうさ、最高だよ!!
ほんとにさあ、最っ高!!
絶対見てよ〜!
興奮して、話したのを覚えている。
『わかった、見とくちゃ〜!』
あれから二十数年。
君は見ただろうか?
ジム・キャリーを知っただろうか?
願わくば、あの日のように笑っていてほしい。
水鉄砲の続きはできなかった。
ただあの日を忘れてはいない。
まだできる。
こっちは今でも全然できるよ!
バケツをひっくり返したように水を浴びるぞ!
ビッショビッショに、風邪ひくまでさ!
WAO!!!!
さあ、ジム・キャリー!
Hey!ジム!!
用意はいいかい!?
実はさぁ、オラさぁ、飛行機苦手で乗れないんだよね!
ジムのほうから日本に来てもらう感じは大丈夫!!?OK?
電車代とか出すから、遠慮しないで!(WAO!)
めっちゃ美味い店(富士そば)も知ってるから!案内するよ〜!
ん〜。
ああ!!
そいえば
英語喋れないな!!
通訳いるな!
どうする!?
まあでも、
いっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
言葉はいらんよ!
なんとなくさぁ、伝わる気がする!!
そこで爆笑できたら、最っ高よな!
あっはっは!ハッハッハア!!あはははは!HAHAHAはははアハアハあはは!!
hahahaっはははは!!はははハハ!はははアハッあひはははは!はははアハハハハ!!はははははははは!は!アハハハ!!
hahahahahahahaははは!ひゃははははははは!ハハハハ!!HAHAHA〜〜!はははははアハハハハハハハハハハハハハ!!あはひゃhahaag@tt&dtpgrtwdrw”pgatpgjWpaa”p&muh5250[2awtg.jdugjmt8269ひはは〜☆!!
ジム・キャリー。
ミニ四駆。
ポケモンカードを貼ったランドセル。
まるでわかってない「×」だらけのテスト。
妹の「ちゃお」。
やってない宿題。
夕方からのテレビ。忍たま乱太郎。
天才テレビくんからのフルハウス。
晩ごはんの匂い。
日々は過ぎていく。
【関連】ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)の連載コラム一覧
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