濱下くんとの水鉄砲(ランジャタイ国崎)


お笑いコンビ・ランジャタイの国崎和也が、徒然なるままにコラムを執筆。本連載での名義は「ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん」です。

今月は、小学生時代のある思い出話。


「エリーゼのために」

そろそろ、ジム・キャリーに会ってみたい。

子供のころから、

ジムに会うのを楽しみにしている。

この星の〜「最高〜!」と思う人間の1人だ。

会って、WAO!WAO!言いたい。

お互いの「面白い」をぶつけ合ってみたい。

そこに、言葉はいらないんじゃないかと思う。

答えは、そこにある。

小学校のころ、音楽の授業でベートーベンの

「エリーゼのために」を聴いた。

衝撃が、走った。

さらに!

なんと頭の中には、

見たことのない「風景」と「家」が浮かんできて

あたくしは子供ながらに、

はっはーん、、と勘付いた。

どうやら自分は、

『ベートーベンの生まれ変わり』らしい。

ふと、音楽室のベートーベンの絵と目が合う。

「・・・・・。」

おいおい、まるで自分じゃないか・・。

なるほどね、、ベートーベン、ね。

了解、、デス!

それからの日々──。

音楽室の

偉大な音楽家たちの絵(バッハ、モーツァルト、ショパン、そしてベートーベン)を見るたび、懐かしそうに目を細ませて、

親しい友達に、ベートーベンを指差して、

「あれ、、僕だから、、。内緒ね、、!」

と、耳打ちしていた。

友達も友達で、

「・・・まじか・・!」

みたいなことを言っていた。

自信があった。

「エリーゼのために」を聴いたり、想ったりすると、いつも風景が、家が見えていた。

その家の横には小さな小道があって、ススキがふわ〜と揺れている。

そのたびに、「ああ、、!」と目を細ませて、感慨深く、涙目になっていた。

そして数年後──。

ある日、たまたまテレビのベートーベン特集で

実際のベートーベンの家が紹介されていた。

全然、違った。

「・・・うっそォ・・?」

ベートーベンの家が、

全然、違った。

「・・・うっそォ・・?」

頭の中にある家と、ベートーベンの家が

ぜんっぜん 違う!

「・・・うっそォ・・?」

マジ、、、?

マジ!

マジで、、、??

マジぃ〜??

「えー!ベートーベンじゃない感じぃ?!」

よく考えたら今サッカー部に入ってるしぃ!

ピアノも弾けないしぃ!

音符だって読めないしぃ!

てことは絶対ベートーベンじゃないしぃ!

マジぃ〜い〜!?

もう!サゲぽよ!!

あたくし3年くらい!!?

頭の中にある風景を思い浮かべては!!

『ああ・・』

とか言ってたんだけど!!

ねぇねぇ!

近所のオバちゃん聞いて!!

頭ん中のあの家!!

ベートーベンん家じゃないっぽい!!!

ヤバくない?!

ずっと前世ベートーベンだと思ってた!!!

しかも、友達に

「やっぱベートーベンじゃなかった・・!」

て話したら、

「は?」

て言われた。

覚えてなかったみたい!!

キャーーーーーーーーーーーー!!!!

キャーーーーーーーーーー!!!!

そんなある日。

ジム・キャリー主演の映画を見た。

衝撃が、走った。

「・・・」

みんな・・・

「・・・」

聞いてくれ・・。

「・・・」

コイツは・・

「・・・」

俺だ・・・。

・・俺はベートーベンじゃない。

ジム・キャリーだ・・・。

そうさ、、、

俺はジム・キャリー。

何を隠そう、

ジムだ・・・!

間違いない。

俺は・・

ジム・キャリーだ・・!

「も〜なんだよう!」

なんだよなんなんだよォ〜!

それならそうと、早く言ってくれよな!!

なるほどね〜、、!

了解、、デス!

あたくしは子供ながらに、

はっはーん、、と勘付いた。

どうやら自分は、

『ジム・キャリー本人』らしい。

小学生。

ジム・キャリー。

ミニ四駆。

ポケモンカードを貼ったランドセル。

まるでわかってない「×」だらけのテスト。

妹の「ちゃお」。

やってない宿題。

夕方からのテレビ。忍たま乱太郎。

天才テレビくんからのフルハウス。

晩ごはんの匂い。

日々は過ぎていく。

転校生の濱下くん


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