あの日々の、延長線上に。(ランジャタイ国崎)


お笑いコンビ・ランジャタイの国崎和也が、徒然なるままにコラムを執筆。本連載での名義は「ふっとう茶そそぐ子ちゃん」です。

今回は『M-1グランプリ2021』決勝前日に、あるコンビへの想いを伝えます。


『M-1』決勝前日譚

真っ黒になったノート。

作り続ける漫才。

売れない日々。

浜口浜村さんへ。

お笑い芸人は、あたくしも含めて

ほとんど「どうしようもない連中」がなる職業で

『とにかく楽して暮らしたい』

『とにかく働きたくない』

『とにかくお金だけでも貰えないか』

『とにかく寝ていたい』

『とにかく飲ましてくれ』

みたいな、そんな連中がほとんどで、

てんでダメダメで、

変な、

変なやつらです。

あたくしは、

たいていの変な人間は見たことがあります。

相方の伊藤くんでさえ、「普通の変な人」の部類に入ります。

彼は、田舎によくいる、内気な変態です。

「伊藤さん何考えてるんだろ?!モミアゲ!」と感じていた君はもう大丈夫。

彼は、田舎に暮らしている

お笑いが好きな、内気な、変態のおじさんです。

ね?、、もう大丈夫でしょう?

ただ、浜村さんは変でした。

僕がいままで会った中で、数人いる、

自分以外で「超変だなあ〜」と思う人です。

浜村さんとはじめて会ったのは十数年前、

ガロイン薗田くんという友達の家に遊びに行った時でございやした。

「みんなにさ、俺のお笑いをわからせてさ、売れてやるんだ。」

はじめて会った、

名古屋から来たという彼は

「まずM-1だね。今年は準決勝まで。そんで来年は、」

レンジで温めたスパゲティを食べながら、

「ふぉんで、決勝に行って、、ん。松ちゃんに見つかる。ただ、それだけ」

淡々とその人物は

「そんな感じか。。ふっ、そんな感じ。ふふ」

ボソボソ笑って、嬉しそうにタバコを吸った。

コンビ名を覚えた。

『浜口浜村』 といった。

それから彼は、

「ランジャタイは、もっとあれかな、これからだろうな〜」

僕らが漫才をしているビデオを見ながら、クスクスと笑っていた。

声は小さいけど、言っていることは大胆不敵。

自分が作るお笑いの、自信に満ち溢れていた。

ある日、劇場で浜口浜村の漫才を見た。

超変だった。

さらに、面白かった。

嬉しくなって、浜村さんに話しかけにいくと

「俺らのやってるライブ、、出てみない?」

これが、

お笑いライブを知るきっかけになった。

三四郎、三日月マンハッタン、ドリーマーズ、浜口浜村。

当時そんな豪華メンバーに誘われたライブは、

華やかで、超満員だった。

満席の中で漫才を経験するのもはじめてで、

「いいんじゃなーい?」と考えていると

出番前に『浜口浜村』の「浜口」さんが、僕に近づいてきた。

そして出る直前まで

「スベろぉ スベろぉ〜!スベスベろぉ〜!

スベべべべー!!」

と言ってきて、

「スベるのはね、あなたですよ!」

と返答しているうちに、出番になった。

空席がない、大勢のお客さん。

その前でやる漫才は、なんかいいもんだった。

漫才が終わり袖にはけると、

今度は浜口さんのかわりに浜村さんが待っていて

「これが、、、お笑いライブだ!!!」

と、ズバリ大声で言った。

後ろで浜口さんが、カンカラ笑っていた。

「変なコンビだなあ〜」

『浜口浜村』

なんて変な奴らなんだ。

なんて、

変で、

愉快な人たちなんだろうか。

それから『浜口浜村』のネタも中身も、

大好きになった。

浜村「俺はさあ、、」

浜村さんは散々お笑いを見てきたと言う

「お笑い」が、大好きだと言う

浜村「あれもやった、これもやった」

いろいろなお笑いを試行錯誤して、

作って、 作って、 作りまくって、

浜村「でさ、今度やるネタがさ、、」

いつも新しい「何か」を探して、

ボソボソ小さい声で、お笑いのことを考えたり話したりしているときの浜村さんは、いつでも嬉しそうだ。

いつの日か、浜口浜村のネタ帳を見て、ビックリしたことがある。

真っ黒なのだ。

浜村さんが、何度も、何度も書いては付け足し、書いては消しを繰り返して、

ページが文字で、真っ黒なのだ。

文豪のようにびっしりつまったノートは、いかに漫才に命をかけているかがわかる。

わっしょいパーティ!系の僕とは、

まるで系統が違う、漫才師だった。

そんな『浜口浜村』のM-1の戦績は、こちら。

2003年 二回戦

2004年 二回戦

2005年 二回戦

2006年 二回戦

2007年 三回戦

2008年 三回戦

2009年 二回戦

2010年 三回戦

2011〜2014年 THE MANZAI期間

2015年 二回戦

その熱量とは裏腹に、結果がなかなか出なかった。

そのころの僕らランジャタイといったら

「お話しなんないズ」で、一回戦で落ちまくりをずっと続けていたので、三回戦でも「浜浜さんすごいなあ〜!」と思って、かなり能天気でいた。

浜浜さんたちの抱えていた気持ちを、汲み取ることができなかった。

ずっとお笑いを続けてくれると思っていたのだ。

一緒にやっていくもんだと思っていた。

2015年12月14日。

浜口浜村は解散した。

魂の叫び

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