「声帯ドーピング」ロッカー、都市伝説調査、火事場のニトログリセリン運搬!? “DOPE”な映画3選

2020.2.3

テーマ、演技、状況――さまざまな点で“DOPE”な作品を、映画評論家の轟夕起夫が「三題噺」的に紹介。「声帯ドーピング」で世間を欺くいかれたロックスターが出てきたり、新星デヴィッド・ロバート・ミッチェルが都市伝説の謎を追う青年を描いたり、はたまた、大火災の中にもかかわらず多額の報酬欲しさに男たちがニトログリセリンを運んだり……いろんな意味で“DOPE”な映画が登場です。

※本記事は、2018年10月24日に発売された『クイック・ジャパン』vol.140掲載の記事を転載したものです。


声が小さすぎる路上ミュージシャン×「声帯ドーピング」ロックスター

字面が目に飛び込んできた瞬間、誰もが思う。なっ、なんだあ〜、そのタイトルは!? 三木聡監督の5年ぶりの映画、『音量を上げろタコ! なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』のことである。劇中で挑発的にそう叫ぶのは阿部サダヲ――彼が扮しているカリスマロックスターのシンだ。誰に言っているのかといえば、何事にも自信が持てず、声が小さすぎる無名のストリートミュージシャン・ふうか。

ステージ上では悪魔メイクで絶叫する“堕天使”の異名を持ち、驚異的な歌声を誇るシンだが、実は「声帯ドーピング」をやっていて……って、この「声帯ドーピング」というDOPEな発想がまずすごいじゃないですか! ハイテンション・ロックコメディの看板通り、正反対なふたりが一蓮托生の“バディ”となり、エキセントリックな「三木的ワンダーランド」を駆け巡る。ふうか役の吉岡里帆が怪優・阿部サダヲとガチンコ勝負、映画自体がDOPEなヤバみをたたえている。

【作品情報】
映画『音量を上げろタコ! なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』
監督:三木聡/出演:吉岡里穂ほか

デヴィッド・リンチが『やりすぎ都市伝説』を演出したかのよう

で、ヤバい、ヤバすぎるといえば『アンダー・ザ・シルバーレイク』も外せない。セレブやアーティストたちが暮らすLAの街、シルバーレイク。だが、光あるところには必ずや影がある。都市伝説や陰謀論が大好物な青年サムは、突如失踪した美女サラを探偵気取りで探すうちに、街の裏側に潜む迷宮にハマっていく。

前作の『イット・フォローズ』では“それ”の正体が謎を呼び、論議を巻き起こして大ヒットとなったデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督、今回も観る者をしこたま翻弄する。ボンクラなサムを演じたアンドリュー・ガーフィールドは、さながらMr. 都市伝説・関暁夫のよう。つまりは、テレ東毎年恒例の『ウソかホントかわからないやりすぎ都市伝説』を、かのデヴィッド・リンチが演出したような映画なのだ。「信じるか信じないかはあなた次第」。――同じくLAを舞台にした『インヒアレント・ヴァイス』を彷彿とさせるDOPEな映画だ。

【作品情報】
映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』

監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル/出演:アンドリュー・ガーフィールドほか


“クソヤバい極限状況を描く”映画、待望の完全版

3本目は『恐怖の報酬 オリジナル完全版』を。監督に無断で約30分もカットしたという短縮版の公開以来、複雑な権利問題で日本では再公開もDVD発売もできなかった70年代屈指の超大作がついにフルスペックで登場! 南米奥地の油井で大火災が発生し、4人の犯罪者が1万ドルの“報酬”と引き換えに一触即発の消火用ニトログリセリン運搬を引き受ける。

『フレンチ・コネクション』『エクソシスト』を発表後、ウィリアム・フリードキンが輪をかけてDOPEな監督ぶりを発揮した映画で、そのエクストリームな撮影と作品世界をたとえるならばフリードキン版『地獄の黙示録』と言えるかも。2台のトラックに分乗し、道なき道を踏破してジャングルの奥へと進んでいく男たち。フリードキン自ら“最高傑作”と認定しているが、この鬼才、クソヤバい極限状況を描かせたら本当に最高なのだ!

【作品情報】
映画『恐怖の報酬 オリジナル完全版』
監督:ウィリアム・フリードキン/出演:ロイ・シャイダーほか

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轟 夕起夫

(とどろき・ゆきお)1963年東京都生まれ。映画評論家。近著(編著・執筆協力)に、『好き勝手 夏木陽介 スタアの時代』(講談社)、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワーブックス)、『寅さん語録』(ぴあ)、『冒険監督 塚本晋也』(ぱる出版)など。読む映画館 todorokiyukio...

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