まふまふ 歌い手デビューから紅白出場までの軌跡 活動11周年に寄せて

2021.12.29


シーンを代表する存在としての使命感

まふまふは自分の活動だけでなく、「歌ってみた」界隈そのものを盛り上げることにこだわってきた。その思いについては、ツイキャス・YouTubeでの配信やライブのMCでもよく言葉にしている。

実際、自身に影響力がつき、自力で大きな舞台に立てるようになってからも、極力他の歌い手と共にステージに立つ機会を大切にしている。その最たるものが、主宰を務めるフェス型イベント『ひきこもりでもフェスがしたい!』(通称:ひきフェス)だ。まふまふは2017年1月に自身初のワンマンライブツアーを行ったのち、5月にさいたまスーパーアリーナで最初のひきフェスを開催した。

自身初のドーム単独公演『ひきこもりでもLIVEがしたい!~すーぱーまふまふわーるど2019@メットライフドーム~』を行うと、翌日には14人の歌い手を招いて同じメットライフドームでひきフェスを開催した。

今年5月、ついに歌い手として初めて東京ドームのステージを踏むと、3カ月後には同様にひきフェスを開催し、同じ経験を11人の歌い手にももたらした。

まふまふのこうした思いと、何より個々の活動者たちの努力が実を結び、「歌ってみた」の存在は着実に世の中に浸透しつつある。2018年12月からはまふまふと友人の歌い手たちが出演するネット番組『ひきこもりでも〇〇したい!』がYahoo! JAPAN上で放送開始。2019年1月には、歌い手6人を起用したディズニー公式カバーアルバム『Connected to Disney』が発売された(まふまふはシンガーだけでなくプロデューサーも務めている)。2019年10月には、NHK総合でまふまふ特集番組が放送された。

今やYouTuberや芸能人がこぞって「歌ってみた」動画を投稿しているし、Adoやyamaなど「歌ってみた」をルーツに持つ令和シンガーの台頭も目覚ましい。「アングラ文化」「遊び」「しょせんアマチュア」などと揶揄されてきた「歌ってみた」が、物珍しさだけではない見られ方で、評価され始めているのだ。今回の紅白出場が、その何よりの証拠であるといえるだろう。

紅白で「命に嫌われている。」を歌う意味

おそらく『紅白歌合戦』出場も、まふまふとしては「歌ってみた」の素晴らしさを、世の中に知ってもらうための大切な機会として捉えているのではないか。ツイッターでは「誰もがやりたいことを自由にできることの素晴らしさや可能性を、この光栄な機会が伝えてくれたら」(11月19日)「今やオリジナル曲を作り歌う身ではありますが、歌い手として、自分の育った世界を忘れず、いつだってその看板は誇らしく背負っていきたいと思います」(12月21日)と綴った。

また『CUT』2019年10月号のインタビューでは、「まふまふの活動は歌い手として活動してきたことの上にあると思っていて」「仮に重たい看板や偏見を背負うとしても、『”歌ってみた”出身です』ってことを堂々と言える人間でありたい」とも話している。

自身のソングライティング力を示せる絶好の機会にもかかわらず、「歌ってみた」としての代表作「命に嫌われている。」を歌うということ。これは筆者の推測に過ぎないが、まふまふは自身の作家性よりも、歌い手であること、あるいは「歌ってみた」の世界にスポットライトが当たることを選んだのではないだろうか。


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ヒガキユウカ

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ヒガキユウカ

(ひがき・ゆうか)歌い手、ボカロP、YouTuber、VTuberなどを追うライター。会社員としてWEB編集者もしています。『エキサイトニュース』『ねとらぼ』『KAI-YOU』『リアルサウンド』『東方我楽多叢誌』などでインタビュー・ライブレポ・コラムを執筆。1993年に生まれ、小学生のころからインタ..

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