決勝戦といっても遜色がないメンバーで行われた『M-1グランプリ2021』敗者復活戦。戦いを制したのは、2017年ぶりに『M-1』に帰ってきた今年ラストイヤーのハライチだった。
多くの決勝進出経験者や実力者ばかりのこの戦いを、なぜハライチは勝ち抜けたのか。当日、会場で感じた雰囲気から振り返る。
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15年間の戦い
晴天の下で行われた敗者復活戦だが、会場の空気は明らかに重かった。キュウ、アインシュタイン、ダイタクがそれぞれの色を活かした漫才を披露し、観客たちの緊張が徐々にほぐれるも、会場の空気を変えるまでには至らない。3年連続決勝進出をしている見取り図が4組目に登場しても、空気の変化までは感じられなかった。
そんななか、5組目にハライチが登場。「どこからともなく悪魔の声が聞こえてきて、力の契約をする」というネタを披露した。
教習所の仮免許に合格する力と引き換えに、残りの寿命の半分を失い、慌てる澤部佑。さらに、途中から岩井勇気が演じる悪魔からの応答が一切なくなり、ますます必死になる。
会場の笑いは、澤部の必死さと比例するように大きくなっていった。最終的にはタイムオーバーを知らせる爆発音に対しても「ボカンじゃねぇ! うるせぇ!」と叫び、大爆笑でネタが終了。
タイムオーバーについてはさまざまな意見があるが、このボケが会場の空気を変えたからこそ、このあとのコンビがネタをしやすくなったのもひとつの事実だと感じる。実際、そのあと登場したマユリカがネタを披露してからは、会場の空気の重さをあまり感じなかった。
ハライチは2017年の敗者復活戦でも、天から岩井が話しかけるという今回と似た設定のネタで挑んでいた。このときは、スーパーマラドーナが決勝進出を決め、ハライチは敗退。リベンジを目指す今回は、似た系統のネタで進化した姿を見せた。
敗者復活戦は視聴者投票によって結果が決まるため、「人気投票」ではないかという声も多い。確かに、最終3組まで残った金属バット、男性ブランコと比べれば、ハライチが知名度が高い。もしかすると、決め手となった数万票の中には、知名度で投票されたものもあるかもしれない。
とはいえ、今年大ブレイクを果たした見取り図が4位、『文春オンライン』が先日発表した「好きな芸人ランキング2021」でトップとなったニューヨークも8位に終わっていることから、人気や知名度だけでは勝ち上がれないことは確かだ。
実力と人気、そして当日のネタの出来。すべてがそろったからこそ、ハライチは敗者復活戦を勝ち抜いたのだろう。
『M-1』翌日に生放送された『スピードワゴンの月曜The NIGHT』(ABEMA)では、敗者復活戦をゲストとして見守っていた小沢一敬が「敗者復活の澤部、神がかってたよ。言葉もいいし、間もいいし、顔もいいし。あと、そのときに抜かれる岩井の顔もマジ悪魔の顔してた」と敗者復活戦でのハライチを称賛。
さらに「(銀シャリ橋本直とNON STYLE石田明と)点数つけながら観させてもらってたんだけど、一番いい点数をつけた3組にハライチも入れさせてもらった。やっぱハライチ、ウケてた」と振り返った。
また、番組では岩井が敗者復活戦のネタを前日夜に作ったことを告白。「合わす時間ないなーって思って、一応送っておいて、敗者復活の前に事務所で1時間だけやりました」と明かした。ほとんどのコンビが何度も劇場で披露したネタで挑むなか、こんな勝負の仕方をしたのはハライチだけだろう。
漫才に向き合いながら個々でもテレビで活躍をつづけているハライチ。今回の『M-1』は、15年間積み上げてきたものを武器にして戦い抜いた。
決勝戦では9位となったが、最後は澤部が「楽しい15年間でした。ありがとうございました」、岩井も「『M-1グランプリ』ありがとう。楽しかった」と爽やかな笑顔を見せ、『M-1』での戦いの幕を閉じた。
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